表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
13章 死の国

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

143/861

138

 翌朝?シェリーが目が覚めるとまだ薄暗かった。魔時計で時間を確認しようとすれば、手が動かない。いや、体が動かない。


「起きたいのですが?」


「ん?暗いからまだ早いんじゃないのか?」


 後ろからグレイの声が聞こえて来たということは、この息苦しさから前にいるのはオルクスかと判断したシェリーはスキルを使って無理やり前から抱きついている人物を引き剥がし、ベッドから蹴り落とす。


 自由になった手で魔時計を確認すると、3刻(6時)を少し過ぎたばかりの時間だった。秋に入ろうかという時期にこの時間にしては暗すぎる。やはり、太陽の陽は地上に届きにくいようだ。


「おはよう、シェリー。起きたのかな?」


 オルクスを蹴り落とした音で、シェリーが起きた事がわかったのかカイルが入っていた。


「おはようございます。今日も4刻(8時)にここを立つようです。」


 ブライかノートルの伝言を持ってスーウェンが入っていた。どうやら、今日はこの二人が見張りをしていたらしい。


「今日には王との謁見はできるかな?あまりこの国には長いしたくないからね。」


 そう言ってカイルはベッドの上のシェリーを抱き寄せ、口付けをする。


「そうだよな。あんなのに追いかけられるのは懲り懲りだ。」


 グレイは起き上がり、シェリーに近寄って口付けをする。


「対処のしようがないモノは困りますね。」


 スーウェンは少し屈み、シェリーの唇をついばむ。


「おはよう。シェリー。」


 と言いながら、蹴り落とされたオルクスはベッドに這い上がり、シェリーの膝の上でゴロゴロ言い出した。


 シェリーは毎朝の事だが、これは必要な行動なのかと疑問に思いながら、オルクスの首根っこを掴み床に投げ捨てた。


 4刻(8時)に宿の外に出れば、何故か疲れた様子のノートルと困り顔をしたブライ、少し緊張した様子のイリアが黒い馬車の前で待っていた。


「今日の予定が決まった。」


 ブライが唐突に話し始めた。


「先程、この国の外交官がここに来て、本日10刻(20時)にモルテ王との謁見が決まったと言ってきた。確かに、2日前に先触れの者を出していたが、直接向こうから出向いて謁見の時間を指定して来たなんて異例だ。いつもなら、王都に着いてから指定の宿場で2日は待たされるというのに、一体何があるんだろうな。」


「私に聞かれても知りませんよ。」


「いつもと違うのは、シェリー・カークスがいることだ。」


「そこの馬車の中の人物を忘れていますよ。」


「忘れていない。はぁ。取り敢えず王都に向かうか。」


 そう言って、ブライは廃墟の街からでるため王都の方向に向かって歩き出した。


「あの外交官が自ら動いたなんて恐ろしい。」


 そうポソリと呟いてノートルもブライの後に続いた。


「シェリーちゃん。あの外交官とモルテ王は怒らせないでね。絶対ね。」


 イリアはシェリーに念押しをして行った。あの外交官?その情報はシェリーの中にはなかった。



 相変わらずの荒野が続く大地を見ながら騎獣で飛ぶこと4刻間(8時間)本日の目的地、モルテの王都にたどり着いた。

 王都と言っても、王都を守るための外壁もなければ、出入りを制限する門もない。建物の残骸があちらこちらに散らばり、王都で建物が存在するのは、木々に覆われた宿と真っ黒な王城のみ。まるでそれ以外を破壊したかのような有様だった。


 瓦礫しかない王都の中を通り、宿の前にたどり着いた。そこには金色の髪に青い目をした長身の男が、一行を待っているかのように立っていた。


「お待ちしておりました。黒の聖女様。」


 男は黒い聖女を待っていたと言った。その言葉を指すのはシェリーのことなのだろうが、今のシェリーは黒髪ではない。しかし、男はシェリーを見て言ったのだ。


「待っていたとはどういう事だ。」


 グレイが男に尋ねる。今回のことは同行人数は言っているはずだが、シェリーが同行するとは言っていないはずだ。


「我が君がおっしゃったのです。黒の聖女が面白いモノを持ってくるそうだと。あの様にはっきりと物事をおっしゃられたのは本当に久しぶりのことでしたので、余程重要な事と捉えました。」


 男は目を細めシェリーを観察するように見る。


「それはモルテ様の言葉でしょうか?」


 シェリーが男に王の言葉の意を尋ねた。傍から聞くと王の言葉かと念押しの言葉に捉えられるが、男はおかしそうに笑いながら答える。


「くくく。ええ。モルテ様からの御言葉です。我が君は楽しみだとおっしゃられておました。」


 その男の言葉からシェリーは死の神モルテが王にシェリーが訪ねて来ることを神託したらしいことがわかった。


「では王におっしゃった通り贈り者があります。と伝えてください。」


 男はシェリーに(こうべ)を下げ敬意を示す。


「モルテ様の神言は絶対。我々は黒の聖女様を歓迎いたします。」


 そう言って男は影に溶けるように消えた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ