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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
13章 死の国

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 シェリーはオルクスの膝の上に座らされ、夕食を食べさせられていた。本当に毎回この行動の意味が分からない。


「シェリー。この後、街を回ってみないか?」


 先程、3人が話していた事をオルクスから誘われたのだが、口をモゴモゴさせながらシェリーはオルクスを見上げる。本当にそんな事を言っているのかと言う非難する視線なのだが、オルクスは『可愛い。』と言ってごきげんだ。


「私は行きません。外に行きたいのならどうぞ行って来てください。」


 とシェリーは行くことを否定する。


「そうだよな。行かなくていいよな。」


 グレイはシェリーの言葉に安心している。女神の慈愛の効力か、外に行くことに危機感を抱いているようだ。しかし、そんなグレイにシェリーは


「オルクスさんが行くならグレイさんも行って来てください。引き止め役は必要です。」


「え゛?」


 シェリーの言葉にグレイは固まってしまった。


「うん。そうだよね。街を一周してくるといいと思うよ。ダメだと思ったら、ここに戻ってくればいいしね。」


 さり気なくカイルが外に行くことを勧めている。カイルもきっとこの国で色々あったのだろう。



 嫌がるグレイをオルクスは無理やり連れて部屋を出ていき、スーウェンもその二人の後について行った。

 シェリーはというとカイルの膝の上に座らされ、冊子を読んでいた。これはイリア経由でサリーと同じ広報部のお姉様方の一人からの送られてきた物だ。新年にある騎士養成学園で行われる剣術大会の全生徒のプロフィールが記載されており、この冊子は騎士団や軍部の幹部クラスの者に新人確保をする参考資料として配られる物なのだが、『試し刷りのチェックをお願いします。』と言う手紙とともに送られて来たものだ。

 一度、サリーがチェックをしている内容を見て、コレの一体何が役に立つのが分からない。せめて写真を付けた方がいいと口出しをしてしまってから、シェリーが資料の最終チェックをすることになってしまったのだ。

 自分たちでするように何度言っても、幹部の方からわかりやすくていいと評判でゴリ押しをされてしまっているのだ。しかし、シェリーもイーリスクロムに用があると言って、広報部から直接取り付いてもらっているので、文句はいえない。

 そんな、冊子を赤ペンで訂正しているシェリーの髪を弄りながらカイルが尋ねる。


「どれぐらいで戻って来ると思う?」


 出ていったオルクス達のことだろう。


「さぁ。」


 シェリーは答える気がないようだ。


「シェリーはこの国に来たことがあったのだね。」


「ええ。」


「この国だけ不思議だよね。太陽の陽は地上まで届かないし、黒い雲に空は覆われているし、ここの住人は生きているのか死んでいるのかもわからないし。」


「はぁ。カイルさん、邪魔。」


 シェリーは冊子の内容が頭の中に入って来ないとカイルに抗議する。


「二人でいるときぐらい俺を見て欲しいな。それからイルでしょ。」


 そう言って、シェリーから冊子を取り上げてしまった。


「ここが元は何処の国は知っていますよね。」


「カウサ神教国。」


 そう、二番目に魔人化したマリートゥヴァ王太子妃がきっかけで滅んだといわれているカウサ神教国だ。しかし、その詳細の記録は残っていない。なぜ、滅んだのか。なぜ、(モルテ)の国がここに存在するのか詳細は歴史の闇の中に消えてしまったのだ。


「この国はマリートゥヴァ王太子妃とラフテリア様によってこうなってしまった。それだけです。そして、神々の気まぐれ・・・思ったより早かったですね。」


 部屋の外の廊下を走ってくる複数の足音が響いている。部屋のドアの前で止まり、勢いよく開けられた。


「おい!この国はなんだ!何で骸骨が街を徘徊しているんだ!」


「レイスもあちらこちらにいるし、あれか?ここは墓場か?」


「地面から出てくる人がいたのですが、死体が動いているのですか?」


 オルクスがシェリーとカイルに詰め寄ってきた。グレイは腕をさすりながら入ってきた。スーウェンは青い顔をして、ドアにもたれかかっている。

 その言葉を聞いたカイルは首を傾げながら


「まだ、住人には会ってないの?戻ってくるのが早すぎたみたいだね。もう一回外に行ってくるといいよ。」


 と、もう一度外に行くように促す。その言葉にグレイとスーウェンは首を横に振り、拒否を示した。


「住人?こんなところに住人がいるのか?」


 オルクスは疑問を呈した。


「いるよ。夜にしか出てこないけど。てっきり、追いかけ回されて戻ってくると思っていたんだけどな。早かったね。」


 住人に追いかけ回されるなんて一体どういう状態なのだろう。


「おい。一体この国はなんだ。皆がこの国には行くなとしか言わない。この国に行ったものの戻ってきた者は口を閉ざして話さない。何があるんだ?」


「ここは吸血鬼の国だよ。生きている人は彼らの餌だ。」


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