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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
13章 死の国

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 翌朝、シェリー達は辺境都市を立ち、モルテ国に向かった。あのあと、シェリーの番である4人が何か話し合ったようで、シェリーにペンダントを外すように言わなくなった。そのことに対してはシェリーはホッとしている。

 人を殺せるのではないのかという視線にさらされるのも、人から自分ではない誰かを重ね尊敬の視線にさらされることも嫌なことなのだ。


 モルテ国の国境を超えた辺りから、朝の時間のはずなのに辺り一帯は薄暗く、太陽は暗闇に覆われているかのように、ぼんやりと薄く光っている。草木は枯れその先は荒野が広がっていた。


「モルテ国に初めて来たけど、叔父上に聞いていた以上に酷いな。」


 グレイが上空から見える景色を見ながら言っている。叔父上というのは冒険者をしながら大陸を放浪していたオーウィルディア・ラースのことだろう。


「そうだね。一度ギラン共和国に抜ける為に通ったけど、二度と来たいとは思わなかったね。」


 カイルは番探しをしている途中で、一度はモルテを訪れていたようだ。


「隣国だけど来たことはなかったな。」


 とオルクス。スーウェンもうなずいていることから、隣国でも行くことはなかったようだ。



 そして、今日の休む為の街には夕刻の時間にたどりついた。しかし、ずっと薄暗いため朝なのか昼なのか夕方なのか全く分からなかった。魔時計で確認することによって、わかったほどだ。


 街の様相は廃墟だった。普通なら魔物から街の人を守る為に外壁を作るのだが、痕跡はあるものの、その外壁がなかった。人が住んでいるであろう建物は崩壊しているもの、跡形だけあるもの、まともに残っているものも斜めに歪んでいた。


「いつ来ても嫌なものですね。」


 そう言っているのは外交で幾度もモルテを訪ねているイリアである。国交は無いのだが、隣国なので、それなりに国の代表が様子伺いとしてモルテ国を訪れているようだ。


「こんなところで泊まれるところなんてあるのですか?」


 ビクビク怯えながらイリアの横を歩いているのはノートルである。

 見た()(てき)に廃墟であり、人の姿も見受けられず、はっきり言って見捨てられた街である。


「ありますよ。他国の者が安心して泊まれる所がこの国に5つだけ。」


 国土的にはシーラン王国と変わらない国土を保有しているにもかかわらず。泊まることのできる宿が5つとは少なすぎではないだろうか。

 そして、イリアの行く先にはまるでそこだけが切り取られた風景のように、緑に覆われた石造りの建物が見受けられた。


 建物の中にイリアは躊躇なく入っていき、ノートルとブライも続いて建物の中に入っていった。シェリーも建物に足を踏み入れたのだが、結界を通るような違和感を感じた。建物自体に結界が施してあることに、納得することができた。この結界がここの住人たちから、泊まる人達を守るものになるのだろう。


 建物の中は帝国風の内装になっていた。多分、帝国のある貴族が作った建物になるのだろう。客を迎える従業員も人族ばかりだが、その額には奴隷の印である青い石がはめ込まれていた。

 シェリー以外が獣人である客に対して態度は冷たく休めるところは提供するが、それ以外はそちら側で好きにするといいというスタンスだった。

 しかし、人族であるシェリーに対しては、(うやうや)しく頭を下げ、最上級の部屋を提供するという変わりようだった。

 流石、帝国仕様の宿だ。そして、人族であるシェリーが容姿がいい獣人を(はべ)らせているため、獣人の奴隷を侍らせている上客と宿側は勘違いしたのだ。


 上級の部屋に通されたシェリーは食事は自分たちで用意するからいいと断り、何処の貴族の料理人が料理をするのだと言わんばかりの部屋に備え付けてある広いキッチンで夕食の準備をしていた。


 そして、そのキッチンにはシェリーの番である4人が揃っていた。キッチンは広いから邪魔にはならないが、別にここにいなくていいと思う。


「なぁ。後でこの街を見て回らないか?」


 とオルクスが言っている横でグレイが首を振りながら


「ヤバいって、外は絶対にヤバいって!」


 とオルクスを(たしな)めているが、スーウェンも


「ここまでの廃墟で何があるか気になりますよね。」


 と外に出る気でいるようだ。カイルはシェリーの横で夕食の準備を手伝っているため話には混じらないつもりのようだ。一度この国に来たことのあるカイルは知っているはずなのだが教えるつもりはないらしい。


 シェリーも謎の生命体の啓示によってモルテ国に来たことはあった為、薄暗い太陽が沈めばどうなるか知っているが、言うつもりはない。この国がどういう国かを知ってもらうには、夜に外に出て体験するのが一番いいのだ。


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