表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/860

10


  メインジョブー異郷の聖女(一部解除)

  スキル発動ー聖人の正拳

        マップ作成


 『異郷の聖女』。カイルが昨日シェリーから話を聞いて探している人物のことだ。

 今まで、お互いが番とは認識をしていなかったのにはわけがある。カイルがシェリーを番と認識しなかったのは聖女のメインジョブの封印と魔力の外核を別人の魔力でコーティングすることで別人のように認識させているのだ。

 これは魔術師オリバーが聖女を勇者から隠すために用いた結界を応用にとりいれ、認識阻害を起こしたのだ。


 そして、シェリーがカイルのことを番と認識していなかったのは、シェリーが世界からの干渉を受けるのを避けているからである。全ての干渉を避けることは流石にできないが、干渉されないということは世界からの恩恵を受けることができないことをさす。

 

 シェリーは能力はチート並に恩恵を受け取っているが、番の認識能力は皆無であった。


 それにより互いが番と認識をしていなかった。しかし、シェリーの認識阻害は完璧ではなかったようでカイルの番感知に微妙に引っ掛かって、カイルの度々起こる、異常行動に繋がっていた。


 次に『聖人の正拳』は聖女のジョブに付随するスキルである。詳細に示されているようにシェリーの敵となるモノの基礎能力(STR・VIT・AGI・DEX・INT)を自分の物とし倍化するという能力である。物理攻撃が通じるものであれば、ほぼ勝つことができる。

 竜人族であるカイルに人族のシェリーの攻撃が通ったのは、このスキルのおかげである。

 シェリーが初めてこのスキルを使用したのは、5歳のルークが奴隷商人に拐われたときに、まだ、10歳であったシェリーが怒りに任せて組織を壊滅させたのであった。世間では大規模組織の謎の消滅とされ、真相は闇のままである。


 そんな反則技のようなスキルを使って、サクサクとダンジョン内のマップ作成をしていた。ダンジョン入り口付近から氷属性の魔物のがひしめいているとの報告であったが、一階層は50~100メル(メートル)間隔で出現している氷狼や雪猿など足止めをにもならない魔物達だけだった。


 五階層まであまり変らず魔物の種類が多少変化するぐらいだったが、六階層にたどり着いたら景色が一変し、洞窟内部の構造から空間が広がり森林の様相に変化し、出現魔物も緑狼やトレントなど森に生息する魔物に変化した。

 しかし、シェリーにしてみれば何も問題にするとはなく、ただ五階層よりも広い範囲をマップ機能でスキャンしなければならなかったぐらいだ。


 八階層まで来たとき魔物ではない生命反応をマップ機能が検知した。多分シェリーよりも前に入った足跡の人物であろう。無視をしてもよかったのだが、一向に移動しているようになかったので様子を見に行ってみたのであった。



 少し木々が開けた場所に池があり、離れたところから見るに回りが赤く染まり倒れているようだった。ダンジョンに飲み込まれていないことから、まだ死んでいないことがわかる。

 シェリーは近くまで行ってみると、蜥蜴族の男性と思われる人物がうつ伏せで血の中に倒れていた。背中には傷は無いように見えるため 、腹側にあるのだろう。シェリーは足で男性をひっくり返してみる。腹に獣の爪で引き裂かれたような傷があるが、胸は動いている。まだ生きてはいるようだ。


「ねえ。生きたい?死にたい?」


 シェリーは倒れた男に聞く。

 シェリーはあえて聞く。歴代の聖女ならわざわざこんなことを確認しない。彼女達は純粋で慈悲深い。だから、瞬時に傷を癒し、感謝されることが当たり前だとし、治した者を送り出す。


「死…なせ…くれ」


「そう、残すモノはある?」


「い…。ない」


「わかった。あなたに安寧の眠りを送ります。『天使の息吹き』」


「あ…。あたたかい…。アイ…ラ。」



 男性は穏やかな顔で眠っているかのようだ。ただ、先ほどまで動いていた胸は動くのを止めていた。

 男性は死に場所を探していたのだろう。

 番が自分とは違うと種族の場合、寿命という壁が立ちはだかる。人族は短命だが獣人族は大半が長命だ。その場合、大抵が獣人族側が番に置いていかれる。番の死を受け入れられなければ、番狂いとなり討伐対象にされ、討伐は一族のものが責任をもって行うことになっている。

 番の死を受け入れてしまった者の末路は悲劇だ。今まで満たされていたものが無くなり、心が次第に蝕まれていく。そして、生きる気力が無くなり死に場所を求めるようになる。

 如何せん人族以外の族種は丈夫な体のため、なかなか死を賜ることが出来ず、死と生の狭間で徐々に狂っていき魔人化するものも出てくる。しかし、全ての者が狂気化するわけではなく、穏やかな余生を送るものがいるのも事実だ。

 この狂気化を防ぐために番の寿命を同じにする方法はあるが、それを行うことのできる術師の数が圧倒的に少なく、国が管理しているため実質、王族や貴族のみが術を施してもらえるのだ。


 この蜥蜴族の男性も番を失い、このダンジョンの噂を聞いて、ここまでやって来たのかもしれない。しかし、噂と違いあまりにも低級な魔物で八階層まで来てしまったのだろう。恐らく、この男性の致命傷となった傷をつけたのは少し前にシェリーが3発殴って倒したマンティコアだと思われる。なぜか、それまで蜥蜴族の鱗を引き裂く爪を持った魔物と遭遇しなかったからだ。


 シェリーはツガイという生き物は自分には必要がないと改めて思うのであった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ