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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
10章 ササキとシェリー

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??? side

 初代王后が病に倒れて1ヶ月が経ってしまった。光の巫女たちが総力を持って治療にあたっているが全く改善が見られない。

 皆が必死で初代王后の為にあちらこちらに飛び回っているため、執務が滞り全て自分のところに回ってくるしまつだ。父親である5代目炎王がもう少し役にたってくれればいいのだが、あれに期待をするのは無駄だというものだ。


 本当に皆が必死である。その理由は簡単だ。初代王后を失ってしまえば、番である初代炎王も失ってしまうことになるからだ。当の本人はというと、いつも通りふらふらしてどこかに行っていない。

 先程も弟である第四王子が初代を探して走り回っていたが、見つからなかったようだ。


 ここ最近の忙しさにイライラしているというのにドアの外が騒がしくなってきた。


「煩い。トーリ。廊下で騒いでいるやつを絞めてこい。」


「嫌です。これ以上、手を止めると今日も家に帰れ無くなります。前から言っていましたが、今日は娘の誕生日なので絶対に帰りますから。帰りますから。」


 二度言わなくても分かっている。仕方がなく立ち上がり部屋の外に出る。

 どうやら、先程から初代を探していた第四王子と外務大臣である青鳥人のキクロスが揉めているようだ。


「人の執務室の前で騒ぐな。煩い。」


「兄上。聞いてください。あの南方の商人が王后の病に効く薬が手に入ったと言ったのです。ですから「だめです。」」


 キクロスが第四王子である弟の言葉を遮った。普通ならそれは許されることではないが、キクロスの立場上それが許されている。


「先程、初代様から連絡があり、今すぐに南方の商人を追い出すようにと言われました。どうしても、出ていかないようなら彼女に頼んで追い出せとも。」


 その言葉に初代の本気度が伺える。


「でも薬が」


「初代様の言葉が何をおいても第一です。あなたの意見は通りません。それに初代様はすでに王后様の病を治す為に動いていらっしゃいます。その商人の持つ薬など必要ありません。」


「でも」


「こんなところで集まってどうした?」


 どうやら初代が戻って来たようだ。王后が倒れられてからピリピリしていたが、いいことでもあったのか、ご機嫌である。


「初代様。聞いてください!」


 弟が初代に駆け寄り先程話していた薬の件を話始めたとき、初代の雰囲気が一変した。


「お前はそれでどうしようとした?」


 初代からの殺気をもろに受けた弟は顔を青ざめガクガク震え出している。


「あ、う。」


「答えろ。」


「光の巫女様に・・ガッ・・クッ。」


 弟は初代に蹴飛ばされ廊下の壁にめり込んだ。何が初代をそこまで怒らせたのだ。光の巫女がどうしたのだ?


「お前はその商人の言葉を信じて、光の巫女を他国に売り渡すつもりだったのか!俺が出向いて話を聞いていて正解だったな。キクロス。商人共は追い出したのだろうな。」


「いいえ。まだ。」


「指示を出してから実行する時間はあったはずだ。何をしていた。」


「申し訳ございません。」


「ああ、お前が邪魔をしていたのか。」


 初代が弟に目を付けた。これ以上は流石に弟がもたない。


「初代様。先に商人たちを追い出すのが先決かと。」


 初代は俺に視線を向け、目を閉じた。


「はぁ。キクロスさっさと商人を追い出せ。」


「畏まりました。」


 キクロスは弟を連れてこの場を離れて行った。流石に弟をこれ以上初代の前に置いておけない。

 問題は解決したようだから仕事に戻るか。


「それでは私も御前を失礼します。」


「ああ、お前に用があったのだ。」


 そう言って初代は俺の執務室に入っていく。初代が俺に用があるなんて嫌な予感がする。

 執務室に戻ると初代はすでに長椅子に座っており、ローテーブルを挟んだ向かい側に座るように指示をされる。


「実はさっき会ってきてな。」


 初代はニヤニヤしながら話始めた。


「それで、これを貰ったんだよ。もちろん俺宛の手紙。」


 その封筒には見覚えがあった。それは


「あー!初代様!このクソ忙しい時に何してくれるんですか。俺は今日は帰るって娘と約束しているのですよ。」


 トーリが何か叫んでいるが今は関係ない。また、初代だけに手紙を!なぜだ!


「羨ましいだろ?くくく。」


「わざわざ、見せびらかす為にここに来たのですか?」


 イライラする。


「ははは。」


 バキッと音がして手元を見るとローテーブルが2つに割れていた。丁度いい。ローテーブルの片側を持ち、初代に投げつけるが、避けられドアにローテーブルが突き刺さっただけに終わった。もう片割れの方も投げつけるが片手で往なされてしまった。全くもって全然相手にされていない。


「そういえば最近、レベル上げをやめてしまっているよな。必要だからやれと言っていたはずだが?」


「レベル100もあれば十分でしょう。この国の魔物で私より強いモノはいませんよ。」


「十分?それは誰が決めたんだ?シェリーちゃんの横にはレベル200超えの彼がいたけど?」


「は?」


 レベル200超えの彼?彼!どういうことだ。あ、いや。娘も彼氏が欲しいと言っていたから彼氏がいるのはおかしくない。おかしくないが何か釈然としない。


「くくく。」


「初代様。そんな事を言ってしまったらダメじゃないですか。ああ、もう帰っていいですか。」


「仕事にならないから今日は帰るといい。」


「それじゃ、私は怪我をしないうちに帰らせていただきます。」


 ドアが開かないため、窓から飛び降りて帰っていくトーリの背中を見ながら


「彼ってどういうことですか。」


「あ、言い換えると彼たちだ。あと、3人居たけど、きっと今頃レベル上げに出かけているだろうな。一人以外使い物にならないなって言っておいたから。」


「余計なことを言うな。」


 初代の顔を殴り付けるが避けられてしまう。


「ははは。まだまだだな。」



 と言われ続け、地に伏しているのは俺だ。

 周りには物が散乱し、飄々した顔で初代は立っており、床で仰向けになって倒れている。また、負けてしまった。


「お前もダメダメだな。そこの机の上にある守りまじないを使えば一発ぐらい俺に入れられたかもしれんぞ。」


「絶対に使わない。」


「それじゃ、これもいらないか?」


 目の前に銀色の守りまじないと同じ、青色の鳥の形をした紙が現れた。


「メリナが彼女に頼んで作ってもらったようだ。」


 青い鳥を初代から受け取る。昔、一度だけ会った彼女の優しい魔力に包まれていた。


「それを受け取ったからこれは俺が貰っていいよな。」


 初代はどこからか黒い箱を取り出してきた。


「それはなんです?」


「彼女の手作りお弁当。俺が作ってもらうように頼んだのだが、くくく。」


 俺は起き上がり、初代から黒い箱を奪い取る。蓋を開けると・・・・。


「彼女のキャラ弁、すごくかわいいよな。くくく。」


 黄色い可愛らしい生物が中央に鎮座しているが、これは食べられるのか?


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