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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
9章 ラースの魔眼

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 突如、シェリーの脳内に声が響いた。


『ねぇ。夢の残像使ってくれないかな?』


 今、話に上がっているエルフが崇める神であり、シェリー曰く謎の生命体の声である。


「今ですか。」


『アレだとそっちに直接干渉できるし』


「必要ですか?」


『だってさ、面白そうだよね。』


「ふざけてます?」


『使ってくれないと、僕自身が行っちゃうよー。』


「来たら殴りますよ。」


 どうしても、あの謎の生命体は来たいようだ。


「シェリーちゃんどうしたの?何かあったの?」


 オーウィルディアがシェリーの独り言に不信に思い声をかける。


「はぁ。エルフが崇める神と言う物体が来たいと言うので、いいですか?」


 カイルは嫌な予感を覚えシェリーを自分の側に引き寄せる。その言葉を聞いたグレイはオルクスに


「ヤバイ、オルクス。そのクソエルフを離してシェリーの側に行くぞ。」


 そう言いながら、テーブルを乗り越えてシェリーとカイルの元に向うグレイ。わけがわからない状況から更に神が降臨するという言葉に思考が停止するイーリスクロム。自分たちが崇める神が化現されることに興奮を覚えるエルフ。


「え?何?それ大丈夫なの?」


 不安を覚えるオーウィルディア。


「本体が来るよりマシなだけで、それに耐えきれるかはわかりません。」


『ねぇ。早くしてくれないかな。』


 催促をされてしまった。シェリーはため息を吐き、魔力を練り上げる。


『夢の残像』


 ただ単にスキルを使用しただけである。そう、何も考えずにただスキルを使用しただけ、しかし部屋の景色が歪み、草原が足元をサワサワとかすめ、蒼空が頭上を占める世界が広がった。


 そして、シェリーの目の前には白く長い髪に白い素肌、目も金属を流した様に白く、裾の長い白い衣服を纏っている人物が立っていた。


「いきなりすまなかったが、どうしても言っておきたい事があってな。」


 シェリーは思った。お前は誰だと。その思いが顔に出ていたのか、謎の生命体はヘラリと笑った。しかし、その顔を見ることができたのは、シェリーと聖人でありシェリーに従属されたオリバーのみである。他の者たちは地に膝を付き(こうべ)を垂れるしかなかった。


「我を信仰しているエルフ族にはそれなりの加護を与えていたが、それはこれから生まれてくる者には与えない。我が言葉を与えてもそれを歪めて解釈されるのは憤りすら感じる。前回役目を与えた聖女をエルフの国には連れて来てはいけないと言葉を与えたが、結局は聖女をエルフの国に入れた。

 今回は流石に焦った。我の力が及ぶところで、ナディアの神眼を使用するなど、役目を与えた聖女を無くすところだった。聖女は役目を果たすために存在する。その聖女の役目を邪魔をする者は存在価値などない。」


 ただでさえ目の前の存在の力に圧倒されているのに更に圧力が増す。


「ただ人には神力は強すぎるので、それ以上は持ちませんよ。」


 シェリーが謎の生命体をたしなめる。


「ああ、人は脆い物だったね。」


 白き神はシェリーに近付き頭を一撫でし、シェリーにしか聞こえない声で


『あと一人でコンプリートだね。』


 そう言って、スキルを強制解除され、草原と空は無くなり、もとの部屋に戻っていた。

 シェリーはフルフルと震えている。ツガイというモノから逃げていたのにこうも簡単に4人が集まって来るなんてやはり、あの謎の生命体の仕業じゃないか!


「な、何。今の力の塊と言っていい存在は。あれが神?」


 オーウィルディアは膝を付いたままシェリーを見上げるが、額からの汗が酷い。


「ははは。もう、何がどうなっているのか。神がおっしゃっていた言葉の中におかしな事があったよね。シェリー君が聖女のように捉えられるおかしな言葉が・・・役目って何?」


 イーリスクロムの脳内の許容範囲を超えてしまったようだ。シェリーが聖女であることに疑問を呈する。


「世界の浄化です。あと数年で魔王が復活しますので。」


「「は?」」


 イーリスクロムとオーウィルディアの声が重なった。


「魔王の復活ですって!どういう事!魔王はナオフミが倒したのでしょ?」


「原因の一端を担っているのが勇者の番狂いです。聖女ビアンカにはラース公国の浄化を3年以内に終わらすように頼んでいるので、率先してやってもらってください。」


「そんなこと、ナオフミからもビアンカからも聞いていないわよ!あたし帰るわ。」


 オーウィルディアは来たときと同じように空間を切り裂く。


「あ、クソ勇者に伝言をシーラン王国側のイアール山脈にラースにいた黒い魔物が巨大化して繁殖していたので、自分で撒いた種の後始末ぐらいして欲しいものですと。」


「何それ!」


 と叫び声を残しながらオーウィルディアは消えていった。



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