表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

異世界転移と精霊と(4)

すごい・・・アニメの世界みたいだ。


大きな木には人が立って歩けるくらいの高さと幅のあるウロがあいている。宮様はすたすたとウロに向かって躊躇無く入っていったので、ついて中に入ってみると、おれの部屋くらいの広さの空間が広がっていた。


「こちらに祀られているのが、話をしていた精霊だ。」


部屋の奥に、白いドレスを身に纏った女性が立っている。彼女の周りには祭壇の様なものがあってその中央にいる祀られているようだった。俺は女性のいる方から 微かに風も吹いてきているように感じた。


何か言ってる?それに俺たちが入ったら目が開いたよな・・・


目は俺たちを見つめているのはわかったが、2メールくらい離れているから声は聞こえない。おそるおそる彼女に近寄ってみる。


「うわっっ」


急に目が赤くなったのに驚いて、2、3歩あとずさる。


『花粉を検知しました。』


フォン


言葉と共に、吸い込むような風が俺のそばを通って彼女へと至る。


「なぁ、スイこれってあれかな。」


「あれとはどれでしょう」


「ん?何か話せたのかな?」


そうこう話をしている間に、目が青色に戻っていく。


『現在の湿度50%、現在室内の空気はきれいな状態に保たれています。』


「やっぱり、空気清浄機だろ・・・スマホといいこれといい擬人化かよ・・・」


「この精霊の名前は空気清浄機なのか?君に名前を伝えてきたのか!」


宮様が目を輝かせて腕を掴んで揺すってきた。


この人最初のイメージと違うな、意外と子供っぽいのか?


「落ちるやめて」


「あぁ、スイ殿すまない。」


スイに注意されて素直に謝っているし。キラキラ容姿で高慢かと思えば子供っぽく素直とか、乙女ゲーの攻略キャラとかにいそうだな。


「ヒロキ殿、どうかしたのか?」


「宮様は人当たりが良いなぁと。」


「そ、そうか?長く生きてるからかな。」


そう言ってはにかんで笑う姿を見ると、イケメンって破壊力すごいんだなとしか言いようがなかった。


「宮様、遅くなりまして申し訳ありませんでした。」


かっかわいい・・・


入り口から聞こえてきた可憐な声に振り向いたら、アイドルも顔負けの可愛い女の子がいる。黒髪に青い目って最強だな。それに・・・白い肌に紅を流し込んだような唇がうごく様をつい見入ってしまう。


「桜染の衣ですか、そちらが異界からの客人ですのね。斎宮のサクヤと申します。」


春野弘樹はるのひろきです。宮様にお世話になってます。あの・・・

桜染ってこの色ですか?」


「えぇ、お祖母様が気に入ってお召しになっていたのですよ。ですので、もし異界から客人がいらしたらこちらの衣を身につけていただこうと用意しておりましたの。」


「お祖母さんがですか?」


自分が不思議な顔をしていたのが気になったのか、サクヤは困惑顔をしている。


「宮様、お祖母様の事をお伝えしてないのですか? 」


「すまない・・・精霊と話せるかもしれないと思ったらすっかり忘れてしまっていた。」


「ハルノ様、私の祖母はチキュウのニホンから来たアイカワサクラなのです。」


「あぁ、宮様と初めて会ったときに話してた!サイタマの人!」


「サイタマ?ですか。私はニホン出身だとしか聞いたことがなくて・・・宮様はお祖母様がこちらにいらした時からの友人なんですの。お祖母様が生きてらしたらヒロキ様に会われたらきっと喜ばれたことですわ。」


そう言って、綺麗な目に涙をためるので俺はなんと言って慰めていいかわからなくなってしまう。だから、話題をそらすことにした。


「えっと・・・精霊の事だけど、とりあえずそばにいって話しかけてもいいかな。話してる事は分かってはいるんだけど。」


「ええ、私も気になっておりました。時に目が赤くなられることがあるので、何か伝えたいことがあるのではないかと思っておりましたの。」


目が赤くなる理由を知っている俺としてはなんとなく笑ってやり過ごす。


「あのっ、空気清浄機、さん?ですか?どうしてこちらに。」


俺が話しかけると、目だけ動かしていた空気清浄機が顔をこちらに向けてきた。ちょっとびびって半歩下がってしまったけどバレてるかな。


『久しぶりに私の本性を当てたものを見たねぇ。前に話しかけた子がここへ運んで来たけど・・・あの子は最近見かけないわねぇ・・・』


「えっ、俺の前に話しかけた人がいたのか。」


「あぁ、それはサクラだね。皆で担いでここへ連れてきたんだ。」


「えぇっ、ここに居るのは宮様達のせいなんですか?それを聞きたいのかと思ってましたよ・・・。」


「すまない、しかし精霊の声はやはり聞こえているんだね。サクラも精霊が空気を綺麗にする精霊だとは言っていたんだ。」


『もし・・・』


「試したんですか?」


『もし・・・』


「そういう訳では無い。サクラは話が聞こえてた訳ではないんだ。」

「えっ、どういう事ですか?」


フォン


「うわっ」


少し湿った冷たい風が俺めがけて吹いてきた。俺は吹いてきた方向に向き直って、


「なんですか?」


『話しかけてるのに・・・私の言葉が聞こえるみたいだからぁ。』


「聞こえてますよ。でも、俺以外でもわかった人がいるって。」


『そうねぇ、でもあの子とは話がかみあわなかったのよぉ。』


話が噛み合わないってどういう事だ?そういやさっき宮様が何かいいかけてたな。そう思って宮様の方をみると、


「何か精霊が話しかけてきたのかな?そうそう、サクラは鑑定持ちだったんだよ。だからあの精霊が何者かはわかってたのさ。」


「鑑定ですか。」


鑑定というと転移ものの小説で主人公がよく持ってるチートスキルか。たしかにそれだと分かるよな・・・俺には無いのかな。とりあえず精霊を見つめながら「鑑定〜」「鑑定〜」と頭の中で思い浮かべてみたが何も起きない。


『そんなに熱く見つめられると恥ずかしいわぁ。気に入ったのなら契約する?』


ポンッ


「契約が申し込まれました。承諾しますか?」


「あっ、スイ。契約ってどういう事だ?」


「指を」


またあれか・・・指をスイの口元に持っていくとスイがキスをする。


『精霊:空キセイ浄キと契約します。』


「いやまだ許可してない気がするんだけど。もしかして指か?ちょっ離れなっ掴むなっ」

これ以上勝手はさせないと指を離そうとするが、スイは抱え込んで離れない。そうこうするうちに精霊が光り、その姿を薄くし始めた。


『ダウンロード30%・・・50%・・・完了。インストールも完了』


インストールの完了と共に、精霊はその場から姿を消した。そして俺が見ている画面のアイコンには先程みた精霊の顔がある・・・でも名前は文字化けしていた。


「まさか・・・俺やっちゃった?」


「せっ精霊が・・・」


「あっサクヤさん。うっ・・・また目眩が・・・」


『アップデート開始10%・・・50%・・・』


精霊が消えた事に驚いて失神したサクヤさんを空いた手で抱え込もうとしたけど、俺もまた目眩でいつの間にか意識をなくしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ