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スーサイドアップガール  作者: 釧路太郎
鈴木美波編

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悩める鈴木さんと金髪少女と先生 第1話(全14話)

ソフィアさん達の担任になって何事もなく終えた夏休みだったのだが


三組ではある事件が起きていた


僕のクラスでは大きな事件は起きていないようだったけど、鈴木美波さんは何か悩みがあるようだった


僕とソフィアさんは鈴木さんの力になろうと奮闘するのであった

「夏休みも昨日で終わって、君たちは全員何事も無く元気に登校してくれたわけだが、三組の田村さんが一週間前から家に帰っていないそうだ。何か知っている生徒がいたら三組の芳野先生まで連絡するように。あと、休み中に何か困ったことがあったら先生になんでもどんな事でも相談していいからな」


ある程度の予想はしていたことではあるのだが、生徒の反応はほとんどなかった。


一学期の時から割と相手にされていないとは思っていたがここまで反応が返ってこないと逆に何かしてみようかとも思ってしまう。


部活動の時にも最近は生徒から軽く扱われているような気がしているのもきっと気のせいではなかったのかもしれない。


今日は新学期初日で部活も無いので定時を少し過ぎたころには帰れそうな予感がしてきた。


僕の予感は割とあてにならない事は自分自身が一番知っていたはずなのだが、生徒から信頼される教師になれるとしたらそんなことはどうでもいい事になるだろう。


「先生、あとでちょっとだけ時間良いですか?相談ってほどではないのだけれど、聞いてもらいたい事があるので」


鈴木さんが僕に話しかけてきたことで多少驚いてしまったが、教師になって数年経つが初めて生徒に相談を持ち掛けられた気がする。


鈴木さんは相談ではないと言っているような気がしたけど、ここは大人の意見を言って鈴木さんの力にならなくては。


「鈴木さんは今日の部活あるのかな?先生はいつでも大丈夫だよ」


鈴木さんはちょっと考えているようで、少しだけ間を開けて真っすぐにこちらを向いた。


「ありがとうございます。今日は生徒会の会議があるのでそれが終わってからでも大丈夫ですか?多分そこまで遅くならないとは思うのですが」


今日の予定は何かあったかなと思い出してみても、これといった用事も思い浮かばなかった。


あえて言うとすると、撮りためていたアニメを消化する事くらいしか思い浮かばなかった。


ちょっと悲しくなってきたけど、アニメを消化する事ならいつでもできることだし、ここは鈴木さんの力になって先生が頼れる大人だとわかってもらう方が有意義だろう。


「うん、生徒会の会議が終わってからで大丈夫だよ。今日は演劇部の活動も休みにしてあるし職員室で仕事をしているので、生徒会の会議が終わったら職員室に来てくれると助かるかな。他の先生方に聞かれたくない話だったら生徒指導室か視聴覚準備室を借りておくけど」


鈴木さんは先ほどよりも少しだけ嬉しそうな顔になっていた。


「職員室に行くのは少し緊張しちゃうので視聴覚準備室で待っていてもらえますか?他の先生方にはちょっと聞かれたくない感じなので」


「わかったよ、今日は部活が休みなので視聴覚準備室には誰も来ないと思うけども、いつものくせでソフィアさんが来るかもしれないな」


「ソフィーだったら大丈夫ですよ。ソフィーも知ってる話なので聞かれても大丈夫です!それに、先生と二人っきりより話しやすいかもしれないです」


たぶん、何の他意も無いんだろうけど少しだけショックを受けていると教室の奥でたくさんの女子に囲まれていた金髪の少女が目の前まで飛んできた。


「ねえ、私の名前を呼んだのはどなた?美波ちゃん?マサ君先生?それとも二人で呼んだの?」


「ソフィーを呼んだのは先生だよ。今日は部活が休みだけど一緒にマンガとかアニメの話をしたいって言ってたよ」


「あら、マサ君先生はソフィーと日本の文化について語り合いたいのね。あんまり詳しくないんだけれど、最近見たマンガの話をちょうどしたかったところだからグッドなタイミングね。それで、いつどこに行けばいいの?」


「私は生徒会の会議があるのですぐには行けないんだけれど、会議が終わったらすぐに視聴覚準備室に行くね」


「ん?視聴覚準備室って部活の教室?部活は休みだけど部活の教室に行ってもいいの?」


「普段はあんまりよくない事なんだけど、今日は特別に許可を貰ったので使用することが出来るのよ」


ソフィアさんは綺麗に澄んでいる青い瞳を輝かせたまま、飼い主が帰ってきてこれからたくさん遊んでもらえる事を知っている犬のように喜んだ。


よくわからない表現ではあるが、日本人にはない感情表現なので多分あっているとは思う。


「じゃあ、もう少しみんなと話してから部活の教室に行くね。もちろん、他の友達には内緒にしておくよ。ソフィーと美波ちゃんとマサ君先生だけが選ばれた者たちだものね」


「先生は選ぶ側だから」


ソフィアさんが驚くのは何となく予想していたけれど、鈴木さんまで驚いていたのは少しだけショックを受けた。


ショックなのかはわからないけれど、ちょっと悲しくなった気がする。


「先生も冗談とか言うんですね。ちょっと意外です。でも、そんな感じの方が相談とかしやすいかもです。では、これから生徒会に行って視聴覚準備室に行きますね。そんなに遅くはならないと思いますが、よろしくお願いします。失礼します」


鈴木さんはそう言って頭を下げるとそのまま教室を出て生徒会室に向かった。


教室から出て見ていたわけではないので生徒会室に真っすぐ向かったのかはわからないけれど、授業態度も生活態度も至って真面目な鈴木さんは寄り道とかせずに真っすぐ向かうタイプだと思う。


さて、ホームルームで使用した資料などを纏めて一旦職員室に戻ってから視聴覚準備室に向かうとするかな。


今年の夏は例年通り極端に暑くなることは無かったけれど、今日は今年一番といっていいほど暑い気がする。


教室内は冷房が効いているのでそれほど大変ではないのだが、体育会系の部活の顧問をやっている先生たちは大変だろうなとは思ってしまう。


この辺りは夏でも比較的過ごしやすい地域ではあるのだけれど、さすがに真夏は暑い。


暑い夏は嫌いではないのだけれど、それも限られた短い期間だからであって、冬が短い期間だったとしたら、寒い冬は幻想的な世界に感じて好きになっていたのかもしれない。


寒い冬は好きになれそうもないのだけれど。

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