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家族の声

作者: 南波英人

私は家庭なんて持てないと漠然と思っていた。


守るものもない自分一人の人生だから明日死んでもいいような生活をしてきた。


給料のいいだけの夜間の仕事だって平気だった。


日が落ちた頃出社し日がのぼる前に家に帰る。


日中は泥のように寝るだけ。


休日もただ寝て過ごす。


最初は趣味と呼べるようなものがあったが年齢を重ねるごとに興味は薄れてしまった。


今はただ、仕事を中心に生きているだけだった。


テレビもパソコンもない、ただベットしか置かれていない部屋で人生を浪費していく。


遮光カーテンから漏れる綺麗な光を見ながらふと考えるのは結婚していたら何か変わったのだろうかということだ。


現実問題として、もう中年と呼ばれる年齢だ。財も男としての魅力もない今の私はもう結婚は無理だろう。


でも、拒絶しようとしても考えてしまうのだ。


結婚していたら毎日を幸せだと噛みしめることができたのだろうか。


仕事だってやりがいみたいなものを見つけられたのではないだろうか。


子供が生まれれば家族を守るために頑張る父親になれたのではないのだろうか。


若い頃とは違い、今は疲れても眠りに入るのが遅い。


目を瞑ればそればかり考えるようになってしまった。


考えれば考える程、今の自分の人生が惨めに感じる。


でも、だからといって人生を終わらせる勇気もない。


遮光カーテンを開けたら新しい人生があったとしても、ただ暗い部屋で想像し続けるだけだ。




「あなた、おかえりなさい」


「パパ、おかえり」


暗い部屋で、存在しない家族の声が私をむかえる。


「ただいま」


暗い部屋の声のした方へ答える。


「どうしたの?辛いことでもあった?」


「パパ泣いちゃダメだよ」


涙が溢れる。


「大丈夫。なんでもないよ。さあ夕ご飯にしよう」


コンビニで買った弁当を温める。


「今日はパパの好きなハンバーグよ」


「僕もハンバーグ好きー」


遮光カーテンから漏れる光はもう届かない。


「いただきます」


狂ってしまったらどんなに楽だろうか。


それとも私はもう・・・・・・

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