第2話 勇者、ラチられました
お読みいただきありがとうございます。
世界とはいずれも理不尽だ。特に人間関係というジャンルにおける理不尽さは、我ら人間に心を創りたもうた神に文句を言いたい。
例えばそれは、曲がり角でぶつかったJKを咄嗟に受け止めたらチョロインが如く秒で惚れられ、それが偶然同じ学校の生徒であたかも彼女のように振る舞い付きまとってきて、仕方なく付き合ってはみたがそこはかとなくメンヘラ臭がしてやっぱり別れようと切り出そうとしたら「わ」と発した刹那某エロゲのバッドエンドよろしく心臓をグサリ。などといったことである。
そんな理不尽が世の中には溢れているのだろう。
こと女絡みのソレにおいてはおよそ2回程度、俺にも心当たりがあるのだ。
そんなわけで勇者俺、魔王に拉致られました。
「なあ、俺なんで拉致られたわけ」
なぜか知らんが、魔王が変態と化したあの後、突如ボディーブローをモロに食らいおゲロしながら誘拐されたのだ。
「それはな、勇者、お前にどちらが上なのかを今一度はっきりと理解させたいからだ」
うんうんそれで?
「だからな、勇者よ」
「私を踏んでくれ!」
迷わず踏んだ。
ヴッて声がした。
「――ああっ、なんという屈辱……!」
どうしような、この変態。
しかし座っているだけというのも退屈なものだ。
魔王はさっきからハアハアブツブツ言っている。なにか手頃な退屈しのぎはないものか……。
……手元にあるのはコイツの頭か。
どれ、撫でてみるとしよう。
言っておくが、これは暇つぶしであって他意はない。わかったか俺。
――これはあれだ。よくわからん。
そもそも人の頭を撫でたことなどないのだが、思った以上に癖になる感じだ。
意外と髪がさらさらしている。
ところで、魔王の様子がどことなくおかしい。
「ゆっ、勇者? なにをしている?」
「なにって、頭を撫でているだけだが」
暇だからな。
「……勇者は、私のことはどう思っているんだ……?」
何を藪から棒に。頭を撫でられるとおかしくなるのかコイツは。
「変態」
「んっ……!」
うわぁ、変態とか言われて喜んでるぞコイツ。
だが、嫌いではない。
こういう変態女は割と俺の性癖に刺さるところがないでもないのだ。
……急にうんともすんとも言わなくなったが、どうしたのだろう。
「おい、魔王?」
「……しゃの…か」
「なんて?」
「勇者のバカああああああああああああ!!!」
いってぇ。
アイツ、自分から踏んでくれとか言っておきながら急に振り落としやがった。おかげで尻が2つに割れるかと思ったぞおい。
いったい何がしたいのやら、あちこちの柱と自分の額にヒビ入れながらどこかへ走り去っていったが……。
まあ、帰るか。
ちなみにですが、勇者の聖剣はチート級です。魔王はどうなるのでしょう。
次話もよろしくお願いいたします。




