第2話 勇者、ラチりました
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「なあ、俺なんで拉致られたわけ」
勇者は心底理解できないといった顔をしている。
無理もない。勇者の仲間が近づいてきて焦ったとはいえ、半ば無理やり連れてきてしまったのだから。
だが案ずるな勇者、洗脳はかけておいたぞ。
「それはな、勇者、お前にどちらが上なのかを今一度はっきりと理解させたいからだ」
そう。勇者には、我が主としての自覚を持ってもらわなければ。
「だからな、勇者よ」
「私を踏んでくれ!」
「わかった」
四肢を地につける私の背中に、勇者の腰が迷いなく下ろされた。
容赦のない重みが私を地面に這いつくばらせようとしている――
ああっ、なんという屈辱……!
だがこの程度で屈したりはしない。この外道、きっとこれを耐えたところで次々に辱めるつもりだろう……。
私は耐え抜いてみせりゅじょゆうしゃぁ……!
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なんだ――私の身に一体何が起こっているというのだ。
勇者の硬く大きな手が、時に強く、時に優しく、時に弄ぶように私の髪を撫でている。
「ゆっ、勇者? なにをしている?」
「なにって、頭を撫でているだけだが」
勇者が私の頭を撫でていると言った!
この少しの間になにがあったというのだ勇者よ――。
こんなものは私の求める支配ではないというのに、なぜこうも心地良いのだろう……。
「……勇者、私のことはどう思っているんだ……?」
「変態」
くっ、相変わらず容赦がない……!
だがそれでこそだ。優しい勇者など私の知る勇者ではない。
「だが、嫌いではないな」
――何を言っているのだ、勇者は。
嫌いではないと、そう言ったのか……?
可笑しいな、顔から火を噴きそうだ。炎術を唱えた覚えなどないのだが。
あの鬼畜外道な勇者が、私を嫌いではないと……。
鼓動が五月蠅い。頭がぼうっとして、思考がまとまらない――
気が付くと、額から血を流しながら見慣れた自分の部屋に戻ってきていた。
この感情は、一体なんなんだ――
魔王は純情すぎて変態なだけです。きっと。
次話もよろしくお願いいたします。




