第九十九話『水たまりの中にゃもんで、ぶくぶくぶく、にゃん』
第九十九話『水たまりの中にゃもんで、ぶくぶくぶく、にゃん』
ぶくぶくぶく。ぶくぶくぶく。
「――一体この下にはなにがあるというのわん?」
「ミーにゃんミーにゃん」
「――別世界か、それとも世界を驚かす秘宝か」
「ミーにゃんミーにゃん」
「――それともアタシが女王となるための儀式か」
「ミーにゃんミーにゃん」
「――ふふっ。興味」
「ミーにゃんミーにゃん」
「――津々なの……ええいっ!」
くるっ。
「ミアン! ちょっとうるさいのわん!
折角アタシがあれこれ妄想たくましくしているっていうのにぃ」
「にゃんでもいいから、早くウチの尻尾を放して欲しいのにゃけれども」
「へっ? 尻尾?」
ちらっ。
「うわっ。すぅっかり忘れていたのわん」
ぱっ。
「これでいいわん?」
「はぁう。
霊体化しても、あのままじゃにゃあ。
やっとまともに泳ぐことが出来るようににゃったのにゃん」
「ふふっ。ミアンったら、ほっ、とした……うわぁん!」
ぐるぐるぐるぅっ!
「激しい水流の渦なのわぁん!
な、なにか捕まらないとぉ。
そうだ! アレアレ、やっぱアレがいいわん!」
むぎゅっ。
「ふにゃあん! また尻尾をつかまれてしまったのにゃあぁぁん!」
ぶくぶくぶく。ぶくぶくぶく。
ぶくぶくぶく。ぶくぶくぶく。
「ふぅ。渦の流れが静まったのわん。やれやれなのわん」
「ほっ、とするのはあとでいいから、
先にウチの尻尾を放して欲しいのにゃん」
「はっ! またしても。
ミアン、悪かったのわん」
ぱっ。
「んもう、ミーにゃんったらぁ。何度も何度も」
「ごめんごめん。つい。なぁんか『転ばぬ先の紐』に思えちゃったのわん」
「にゃんにゃの? 『転ばぬ先の紐』って」
「まぁ『転ばぬ先の杖』のアレンジバージョンだと思ってくれれば。
御守りみたいなものわん」
「そうにゃん?
紐にゃにゃけに、逆に、すっごく転びそうにゃ気がするのにゃけれども」
ぶくぶくぶく。ぶくぶくぶく。
ぶくぶくぶく。ぶくぶくぶく。
「し、しまったのわぁん!」
「どうしたのにゃ? ミーにゃん。
いつもらしく、うろたえているのにゃけれども」
「あのね。
『いつもらしく』じゃなくって、
『いつになく』って訂正して欲しいものわん」
「ミーにゃん。くれぐれも真実を語ってにゃん」
「ミアン、それってどういう意味わん?」
ぶくぶくぶく。ぶくぶくぶく。
ぶくぶくぶく。ぶくぶくぶく。
「うわん!
あぁあぁあぁあぁ」
「ミーにゃんも変にゃ妖精にゃ。
選りにも選って水の中で発声練習にゃんて」
「発声練習なんかじゃないわん!
……とはいうものの…………ふぅ。
まぁ花の妖精が水の中に居るって時点で変なんだけどさぁ」
「うんうん。自分を振り返ることはいいことにゃん。
おのれのおろかさを恥じると同時に、
失ったものの尊さを噛み締めるきっかけとにゃるのにゃもん」
「なぁんかしんみりとした評価なのわん。
まっ。それはそれとして。
ミアンだって今の現状を正しく把握したら、
きっとアタシと同じになるのわん」
「今の現状? はて? どういうことにゃん?」
「自分の真上と真下を眺めればいいわん。
それだけで十分なのわん」
「真上と真下とはにゃあ。
どれどれ、まずは真上からにゃん」
ぐぃっ。
「まぁこれはこうにゃろうにゃあ。
にゃらば真下は」
ぐぃっ。
「ふにゃん!
あぁあぁあぁあぁ」
「ほぉら。アタシと同じになったのわん」
ぶくぶくぶく。ぶくぶくぶく。
《あぁあぁあぁあぁ、と大口を開けにゃがら、つづくのにゃん》




