第九十二話『史上最悪にゃん』
第九十二話『史上最悪にゃん』
「前方から来るはミムカにゃん」
ききぃっ!
「ミアン!
これは神霊さまのお引き合わせかも。
ちょうど良いところにいてくれましたですねぇ」
ぎゅぅっ。
「と無理矢理、左右の前足を握られて、
ネコ人型モードの格好にさせられても困るのにゃけれども」
ききぃっ!
「ミアンさん!」
ぐるりっ。
「ふにゃん!
こらぁっ! 急にウチの身体を後ろへと回すにゃあ!
コマじゃにゃいのにゃよぉ、ネコは。
目にゃって回るし、足元にゃってふらつくし、
とにもかくにも危にゃいのにゃん」
「しょうがないじゃありませんか。
ミムカさんに前を取られた以上、
こっちに回さなくてどうするというのです?」
「んもう、にゃにいってのにゃん」
くるっ。
「はぁい。ミムカでありますよぉ」
「ふぅ。こっちはこっちでこれにゃし」
くるっ。
「ミリアですよ、ミリア。私だけがあなたの本当のお友だちなのです」
「はぁう。こっちは、もぉっと大変にゃし。
『天空の村』始まって以来の、といっても決して過言じゃにゃい、
史上最悪の迷コンビ『ミムカにゃんとミリアにゃん』らに、
ウチは不幸にも挟まれてしまったのにゃん。
とほほ、にゃのにゃん」
ぺたん。
「どうしたのです? 急にしゃがみ込んで」
「ひょっとして、『持病の再発』とかでありますかぁ?」
「――前と後ろからのステレオ音声にゃん、ってそれどころじゃにゃいっ!
にゃ、にゃんと!
――ええとぉ。方向転換が厄介にゃから、このまま話すとするのにゃん。
にゃあ、ミムカにゃん。ウチに持病にゃんてあるのにゃん?」
「さぁ。そうかなぁと思っただけでありまぁす」
「でも顔色は悪そうですよ、ミアンさん」
「にゃんでもにゃいのにゃん。
我が身の危険を感じる事態に直面してにゃ。
立つ気力が失せてしまった、たにゃそれにゃけのことにゃん」
「なぁんだ、それだけのことでありましたかぁ」
「んもう、そんなことぐらいで友だちに心配させてはいけませんよ」
「はぁう。まるでネコごとにゃん」
「あのにゃあ、ミリアにゃん。
にゃったら、ふたり並んでウチと話をすればいいじゃにゃいの」
「それはダメです。同じ話をするのにしたって、
ミムカさんはミムカさんのお立場からモノをいうのですし、
私は私自身の立場からモノをいうのです。
となれば、両者の話に食い違いや隔たりがあるのは当然。
聴けば聴くほど、ちんぷんかんぷん、となるのは、
『自明の理』と思いますよ」
「かもしれにゃいにゃあ」
「かも、ではなく、そうならざるを得ないのです。
ミムカさんと私がどれほど強く自分の思いを並べ立てたとしても、
悲しいかな、耳には届くかもしれませんが、心には届きません。
喋っている内容そのものが一貫していないのですからね。
無理もないのですよ。
……とまぁそんなこんなで、
心を揺さぶらない話を一生懸命主張したって、
それがなんの役に立つというのです?
『自己満足』ですか?
『これだけ話をしたんだからもう十分』なのですか?
違いますよね。絶対に。
自分の思いを伝えて、それに共感して頂く、賛同して頂くことこそが、
話をする本来の目的、望みなのです。
そうですよね? ミアンさん、ミムカさん。
だからこそミアンさんには是非とも私だけと、
一対一で話をして欲しかったのです。
私がミアンさんの背後に回ったのは、それが理由です。
背後に回るしかなかったのですよ」
ぱちぱちぱち。ぱちぱちぱち。
「いやあ、にゃかにゃかにゃものにゃん。
話の内容はイマイチにゃのにゃけれども、
かにゃりの力説にゃったとお見受けする次第にゃん」
「ミムカもでありまぁす。
話の内容は、さっぱりのぱり、なのですけども、
なぁんとなぁく感動を覚えたのでありまぁす」
「ありがとうございます。
おふたりの『多大なる』拍手に、ただただ感謝するのみです。
……まっ。それはさておいて。
ミアンさん。本当に助かります」
「ふにゃ? にゃんのことにゃん?」
《にゃんのことかは、つづくのにゃん》




