第九話『説得で勝負にゃん』
「ウチは声を大にしていいたいのにゃん!
ウチらミーにゃんファミリーはヨモギ団子であると!」
「ちょ、ちょっと待つのわん。
ミーにゃんファミリーって、アタシとミアンとイオラじゃない。
ミアンならいざ知らず、アタシがいつヨモギ団子になったというのわん」
「ミーナちゃん。それはないでしょ」
「イオラ……」
「そもそもミーにゃんファミリーじゃなくて、イオラファミリーじゃなきゃいけない気がするのだけれど……まぁそこは不問に処すわ。
問題は順番よ。アタシとミアンとイオラじゃなくて、ワタシとミアンちゃんとミーナちゃんでしょ?」
「ちょっと待つのわん。イオラが一番なのはいいとして、造り子のアタシを差し置いて、なんでミアンが二番目なのわん」
「ミアンちゃんが化けネコとして生まれ変わったあとに、ミーナちゃんが生まれたの。
いわばミアンちゃんはミーナちゃんのお姉ちゃんのような存在じゃない。
二番目にしてあげなきゃ」
「うっ。それは……そうかも」
「どうやら判ってくれたみたいね」
「ウチらがヨモギ団子であると!」
「どさくさ紛れにしゃしゃり出てくんじゃないわん!
アタシが納得したのは順番。ヨモギ団子を認めたわけじゃないから。
大体どうしてアタシたちがヨモギ団子なの?
そこら辺をしっかと教えて欲しいわん」
「ミーにゃん。良ぉく考えてごらんにゃさい。
そもそもヨモギ団子っていうのはにゃ。
三つの真ん丸ヨモギおモチが『一本の串』という絆で重にゃったモノにゃ。
ウチらミーにゃんファミリーとおんにゃじにゃいの」
「同じ? どこがどう同じなのわん?」
「イオラの木に宿る精霊はイオラにゃん。にゃからイオラにゃんは土台にゃん。
土台にゃらば一番下に位置するのは当然。
一方、ミーにゃんはイオラの森のお姫様、ミーにゃんファミリーを代表する顔にゃ。
顔にゃらば、一番上に位置するのが、これまた当然のことにゃ。
にゃら、ウチは?
ウチにも大切にゃ役割があるのにゃ。
ミーにゃんとイオラにゃんの絆を深める、補完するという役割が。
でもって、三にんの絆とする役割が。
そう考えたら、自ずと見えてきたのにゃ。
ふたりの真ん中に位置するのがウチの定めにゃってことが」
「ミアン……」
「ミーナちゃん……」
「三つの真ん丸ヨモギおモチが、一本の串という『絆』で重にゃったモノがヨモギ団子。
ミーにゃん、ウチ、イオラにゃんの三にんが、
『イオラにゃんの命の欠片』という絆で重にゃったモノがミーにゃんファミリーにゃ。
どちらも三つの存在が一つの絆で結ばれている。
個々を単に合わせたにゃけに留まらず、
はるかに超越した、一つの存在へと高められているのにゃん。
それを看破したからこそ、ウチは叫ぶのにゃん。訴えるのにゃん」
『ウチらミーにゃんファミリーはヨモギ団子であると!』
ぱちぱちぱち。ぱちぱちぱち。
うるうるうる。うるうるうる。
「なんか……ものすっごく感動したのわん」
「ワタシも。あら、いつの間にか、ほおに雫が」
「話は判ったわ。でもね、だからといって……ふぅ。
ねぇ、ミアンちゃんさん。
どうして湖の広場で、ヨモギ団子専門の屋台を始めなきゃならないのよ」
「でもにゃ。イサベラにゃん。この盛況をごらんにゃさい。みんにゃ大喜びにゃ」
「本当にね。イオラの森中の生き物が集まっているんじゃないかしら。
我が妹たちも呆れているわ」
「イオラの花にゃんらも?
そういえば、ぼーぜん、としているのにゃん」
「お喋りが信条、というくらい、いっつも朝から晩までべちゃくちゃ喋っているのにね。
本当、信じられないわ。
めったに、どころか、今まで一度だってこんな光景を目にしたことはないもの」
「にゃら、あれも?」
「あれって……。
イオラとミーナが不器用な手つきでヨモギ団子を造ったり、配ったりしているとこ?
見たことがあるわけないじゃない。というより、あんなことやってていいのかしらね」
「ふにゃ! た、大変にゃあ!」
たったったったったっ!
「いわんこっちゃないわ。
いくら、もっちりもこもこタイプのヨモギ団子だって、
あんな風に乱暴に積み重ねれば、崩れて当然……うわっ。喋っている場合じゃないわ。
ほら、イオラ、ミーナ、そっちばかりじゃなくって向こうも……ええい、じれったい。
しょうがないわね。こうなったら、アタシも加勢するわ。
早速、妖精になって……ああでも、それじゃあ、ヨモギ団子が四つになっちゃうかしら。
……なぁんて考え込んでいる場合じゃないわ。
こらぁっ! ヨモギ団子どもぉ。わたしが行くまでは根性で耐えるのよぉ!」