第六十八話『嘆きのミリアにゃん』
第六十八話『嘆きのミリアにゃん』
たったったったったっ!
がばっ。
「ミストさん! ミストさん!」
ゆさゆさっ。ゆさゆさっ。
「ミストさん! 私です! しっかりしてください!
ゆさゆさゆさっ。ゆさゆさゆさっ。
「私が来たからにはもう大丈夫です。安心してください。
聞こえますかぁ! 私の声が! 私の思いがぁ!
ミストさん! ミストさぁん!」
ゆさゆさゆさゆさっ。ゆさゆさゆさゆさっ。
「……返事がありません」
わなわなわな。。
「ダメです! 私ひとりを残して逝ってはぁ!
ミストさぁん! ミストさあぁん!」
ゆさゆさゆさゆさゆさっ。ゆさゆさゆさゆさゆさっ。
「ああっ! 目が開いた……って、
白目をひんむいてどうするんですかぁ! ミストさあぁん!」
ゆさゆさゆさゆさゆさゆさっ。ゆさゆさゆさゆさゆさゆさっ。
「あああっ! 今度は口から泡まで吹いて。
ぶくぶくぶくぶく、とまらないじゃないですかぁ!
ミストさん。お願いです。
私のためにもどうか目を覚ましてくださぁい!
笑顔かどうか判然としないあの笑顔を、
今一度、もう一度だけでも、見せてくださぁい!」
ゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさっ。ゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさっ。
「ぐすん。 ごめんなさい、ミストさん。
私がもっとしっかりしていれば、
私が一緒に闘ってさえいれば、こんな目に遭わせずに済んだのです。
私がしっかりしてさえすれば……ううっ……うわあぁっ!
ミストさぁん! ミストさあぁん! うわあああぁぁっ!」
ゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさ………………………………。
ゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさ………………………………。
「ぐすん。全然ダメなんて。ぐすん。
ミストさぁん! ミストさあぁん!」
ぶんぶんぶん。びしばしびしばし。
「あのぉ、もしもし。
ねぇ、ミリアん。
気を失っている友だちをそんなに揺さぶっちゃいけないのわん」
「でもってついには、無抵抗の相手を力任せに、ぶんぶんびしばし。
それって一種の暴力にゃん。
しかもにゃ。
こっちに来てからは、ずぅっ、とミストにゃんの上に乗っかったまま。
ほら。
見た目にも容態が悪くにゃっていくのが、はっきりと判るくらいにゃん」
「おだまりなさい。極悪にんども。
これのどこが暴力だというのですか?」
ぶんぶんぶん。びしばしびしばし
「ほら。目覚めさせようとしているだけですよ。
肩をつかんで上半身に上下運動を与え、
左右のほおを交互にひっぱたく。
それしかやっていないじゃありませんかぁ?」
「ミーにゃん。それしかやっていにゃいそうにゃ」
「そんだけやっていれば、十分なのわん」
「はぁう。大っきなため息を漏らすくらい、困ったもんにゃ」
「本当本当。これが困ったもんわん」
じぃっ。じぃっ。
「この極悪にんどもめ、
なに薄焼きせんべいのような薄い目でこちらを見つめているのですか?」
「ミリアにゃん。それをネコは『暴力』と呼ぶのにゃん」
「ねぇ、ミリアん。どうしてアタシとミアンが極悪なのわん?
ちぃっとも理解不能なのわん」
「しらじらしいことを。
論より証拠。
ここに私の友だったものの亡骸がちゃんとあるじゃないですかぁ」
「気を失っているにゃけにゃん。
勝手にお亡くにゃりにするにゃあ!」
「うっ。
こ、これは、言葉のあや、という奴でして。
そんなつもりは毛頭…………はっ!
ワナですね。今のは。
相手のアラを見つけて、ことをうやむやにしようという。
そんな卑劣極まりない手に乗る私とでも思っているのですか?
もうガマンなりません。
ひどい目に遭わされたパートナーのためにも、
これからそうされるかもしれない命のためにも、
あなた方を断じて、
そう、断じて許すわけにいかないのです!」
《にゃあんか怒り気味のミリアにゃん、を気にしつつ、つづくのにゃん》




