第六十ニ話『スリルを味わうには説教にゃん』
第六十ニ話『スリルを味わうには説教にゃん』
ぱたぱたぱた。
「なぁんでありますかぁ?」
「今にゃ。昨夜の準備についてみんにゃから聴いているところにゃん。
でにゃ、ミムカにゃんが最後にゃのにゃけれども。
どんにゃ感じにゃったの?」
「ミムカはですねぇ。たいしたことはしませんでしたよぉ。
温泉の外れに生えている水草を何束か集めましてですねぇ。
それを食材としただけなのでありまぁす」
「にゃあんか仲間うちで一番、やる気にゃさげにゃ感じにゃ。
そもそもこのオーブンって、
ミムカにゃんの提案で復活したようにゃもんにゃろう?
にゃったら、もぉっと積極的に動いたってよさそうにゃもんじゃにゃいの」
「心配なのでありますよぉ。
この赤さびた、見てくれの悪さといい、
今にも壊れそうながたつき具合といい、
どこをどうとっても、
『ごみ箱行きが相応しい』と太鼓判を押されていたしかたがない代物が、
テストされるというのでありますから。
ねぇ、ミアン。いっそのこと、使うのをやめては?
どこかに展示品として飾るというのも一つの手だと思いますですよぉ」
「にゃあ、ミムカにゃん。
『傷つけたくにゃい』
『このままそぉっと保存しておいてあげたい』
その気持ち。やさしさ。判らにゃいでもにゃい。
最初から、飾り物にするのが目的で造り変えた、というのにゃら、
ウチもにゃんにもいわにゃい。
ミムカにゃんの思う通りにしたらいいにゃん。
でもにゃ。違うのにゃろう?
ミムカにゃん自身もいったじゃにゃいの。これは試作品にゃと。
折角、使えるように仕上げたというのに。
新たに命を吹き込んにゃというのに。
日の目を見させることにゃく、
飾り物として終わらせようとするにゃんて。
あんまりにもむごい仕打ちとは思わにゃい?
無念の至極とは思わにゃい?
提案したミムカにゃんにとっても。
知恵を絞って労を尽くした『何でも造り隊』のみにゃさんにとっても。
それよりもにゃによりも復活したオーブンにゃん自身にとってもにゃ。
ミムカにゃん。
テストしてみようにゃん。たとえどんにゃ結果ににゃろうとも。
みんにゃの労に報いるため、にゃけじゃにゃい。
にゃって、もうそこに命があるのにゃもん」
「ミアン」
「メカもんであろうと、にゃかろうと、そんにゃことはどうでもいいのにゃん。
命がそこにあるというにゃら、それを最大限に生かそうと努力することこそ、
再生にかかわった者全ての義務にゃと、ウチには思えてにゃらにゃいのにゃん。
ミムカにゃん。今ウチが喋ったこと、間違っているのにゃん?」
「…………いえ。
ミムカはとぉんでもない思い違いをしていたように思いますです。
自分が芽生えさせようと腐心した命なのに、
自分の手で葬ろうとしていたのかもしれませんですねぇ。
断じてあってはならないことでありまぁす」
「にゃら」
「判りましたです。やりましょう、ミアン」
「ミムカにゃん」
ぱちぱちぱち。ぱちぱちぱち。
「さすがだな。ミアン殿」
「たいしたものね」
「ボクもちょっと感動しちゃったよ」
「それでこそ、アタシのミアンなのわん」
「ミアンさん、ありがとうございます。
なるほど。そうやっていいくるめれば、相手は落ちてくださるのですね。
大変、参考になりました。感謝感激雨あられ、です。
今後の同好会の勧誘に、きっと役立ててご覧に入れます。
ご期待ください」
「あんたらにゃあ」
「でもさ、ミアン君。どうして夜に食材を運ばせたんだい?
しかも、ボクたちひとりひとり時間をおいてさ」
「ミクリにゃん。連絡の時もいったとは思うのにゃけれども。
要するににゃ。出来るにゃけ、『やみなべ』に近づけたかったのにゃよ」
「それなんだけどぉ。『やみなべ』ってあれだよね。
暗いところにみんな集まってさ。
『なべ』の中にいろんなモノをぶっ込むって奴」
「そうにゃ。誰がにゃにを入れたのかも判らずに食べるのにゃん」
「でも今回は『食材』のみ、って限定しているんだよね?」
「ゲテモノ食いは趣味じゃにゃいのにゃん。
それでも、ちょっとしたスリルを味わえるんじゃにゃいかと思ってにゃ」
「あのぉ、ちょっといいでありますかぁ?」
「にゃんにゃ? ミムカにゃん」
「今回はテストなのですよ。ここは危なげのないモノを一品か二品、
試すだけでよろしいのではありませんかぁ?」
「至極もっともにゃご意見にゃ。
でもにゃ。間髪容れずに却下にゃん」
「なぜに?」
「誠にこちらの都合で申しわけにゃいのにゃけれども……。
ごめんにゃ、ミムカにゃん。
これくらいの興を添えにゃいとにゃ。
ネコはやる気を起こせにゃいのにゃん」
《説教じみた今回のお話は、すっ飛ばしてもいいにゃん。つづくのにゃん》




