第六話『またもやトラブルにゃのにゃん』
第六話『またもやトラブルにゃのにゃん』
「というわけでにゃ。マグマを探険してみようと思い立ったのにゃん」
「というわけ、って、どういうわけでありますかぁ?」
「…………ついて来れば判るのにゃん」
「ここにゃん!」
「あっ! 助けてぇ、ミアァァン! んぐっ」
あっぷあっぷ。
「おおっ!
ミアン、あれを見て下さいませです。
ほら、あの大きな紅蓮の炎が猛り狂う真下。溶岩流の中にミーナの姿が!」
「いけにゃいっ! 溺れにゃがら流されていくのにゃん!」
どっぼぉん!
「ああっ! 溶岩流に中に飛び込んだのでありまぁす!
……さっすがはミアン。親友のためなら火の中、水の中、ってわけでありますねぇ」
ずっぼぉん!
「……とか思っていたら、
ああっ! 溶岩流の中から飛び出してきたのでありまぁす!
おおっ! なんと、右の前足にはしっかとミーナを抱えているじゃありませんですかぁ。
まさに感動の、でもって決死の救助シーンなのでありまぁす!」
すたっ。
「ふぅ。ただいまにゃん」
「やったぁ! 無事にお帰りしましたですねぇ」
「決死のって……。ミムカにゃん。ウチは化けネコにゃんよ」
「うん。それはもうじゅうじゅう承知の助なのでありまぁす」
「ごめんくださいませですぅ……。
うぉっ。懐かしい。精霊の間、ミーナたちの棲み家でありますねぇ。
ここに来るのは本当、久しぶりなのでありまぁす」
「ええとぉ……。ねぇ、ミムカん。寝泊りに来なかったっけ?
ほんの三日前に」
「……ごっほん。三日前でも過去は過去。
ミムカは未来に生きる、未来志向の女の子でありますよぉ」
「まっ。この際、過去も未来もどうでもいいわん。
そんなことよりさ。ほら、これ、これなのよ」
「ミムカにゃんも見たことがあるにゃろう?」
「はいはい。『真実を映し出す鏡』でありますねぇ。
でもぉ。これとミーナがマグマに溺れていたことと、一体どんな関係が?」
「実はね。ついこの前も、
『アタシの姿をどんどん変えていく』なんてトラブルを起こしたばっかりなのにぃ……」
「はいはい。でもあれはミムカが治しましたでありますよぉ」
「うん。ところがよ。またまたやらかしたのわん」
「ちょぉっとお待ち下さいませです。
『あと一週間ぐらいは休ませてあげて下さいませ』
確か、そうお願いしたはずでありますが?」
「えっ」
くるっ。
「そうなの? ミアン」
「うんにゃ。でもにゃ。ミーにゃんもそのことは知っているじゃにゃいの」
「知っている? アタシが?
ええと、ええとぉ……。あっ、そういえば、
『しばらくは動かさにゃいほうがいいみたいにゃよ』とは聴いたような……」
「にゃろう?
にゃのに、ミーにゃんったら、
『正常に動くかどうかは使ってみないと判らないのわん』とかダダをこねてにゃ。
折角、大事に保管していたのに、無理矢理引っ張り出してきてしまったのにゃん」
「そうそう。思えば、懐かしい想い出なのわん」
「さっきのミムカにゃんみたいにゃことを。
あのにゃあ、ミーにゃん。今朝のことにゃん」
「いっつでもいいわん。でもさぁ。ダダじゃないのわん。あれはあれで正論だと思うわん。
正常なのかどうかは実際に使ってみなくちゃ判らないのわん。
ねぇ、ミムカん」
「あのですねぇ。前回も申しました通り、この鏡は心の病に冒されているのでありますよ。
つまりですね。今は情緒不安定なわけでして。
今は出来るだけ、そぉっとしてやって欲しい。とまぁそういうことなのでありまぁす」
「にゃって。ミーにゃん」
「そうかぁ。まぁ治したミムカん自身がそういうのなら……。
うん。判ったわん。『真実を映し出す鏡』を休ませてあげるのわん」
「はい。それがいいと思うのでありまぁす。
ところで、と。
ねぇ。最初の話に戻りますけどぉ。なにがどうなってミーナはマグマなんかに?」
「それはにゃあ……。
おっ。ちょうどおかしくにゃったから、都合がいいにゃん。
これにゃよ、ミムカにゃん」
「これって……うっそぉ!
ミムカの姿が映っているのはいいとして、この背景はなんなのでありますかぁ?
どうみても、氷の世界……うわぁっ!」
ぴゅん!
「あぁあ。ミアン、今の見た? またやっちゃったのわん」
「ふぅ。やっぱ消えたのにゃん」
「でもどうしてこうなっちゃうのかなぁ」
「にゃんでにゃろうにゃあ」
「それはね」
「おっ、イオラにゃん。お帰りにゃさい」
「イオラ、お帰りわん」
にっこり。
「はい、ただ今。……にしても困ったものねぇ。
ミーナちゃん。やっぱり、これは仕舞ったほうがいいんじゃないかしら?」
「うん。しばらく保管することにするわん。
ミムカんもそうしたほうがいいっていってたしね」
「そう。ミムカちゃんが。
なんにしても良かったわ。ミーナちゃんがその気になってくれて。
これで一件落着。めでたし、めでたし、ね」
「でもにゃ。イオラにゃん」
「なぁに? ミアンちゃん」
「そもそもにゃ。どうしてこうにゃってしまうのにゃん?」
「アタシも是非、知りたいのわん」
「ううん。そうね。一言でいうなら、『真実を映し出す鏡』だから、かしら。
心の病が癒えていないこの鏡はね。
時折、実際の、ではなく、記憶の中の映像を映し出してしまうことがあるの」
「にゃからマグマとか」
「氷の世界が現われていたのわん」
「そんな状態の鏡の前に、命ある者が立ったとしたら……、
記憶の映像と自分の姿とが重なって映し出されてしまう。
これは『真実を映し出す鏡』。映し出されたモノは全て本当でなければならないの」
「にゃあるほど。にゃもんでミーにゃんは」
「飛ばされてしまったのわん」
「でもまぁ。そんなトラブルもこれでおしまいね」
「うんにゃ。イオラにゃんのいう通り」
「一件落着なのわん」
「ふふふっ」
「にゃははは」
「きゃははは…………あれっ?」
「どうしたのにゃ? ミーにゃん」
「なんか大事なことを一つ忘れているような……」
「ふぅぅむ。あの鏡に飛ばされると、霊力を全然発揮出来ないのでありますねぇ。
……なぁんて冷静に考え込んでいる場合じゃございませんです!
うわぁん! 寒ぅい! じゃなくて 冷たぁい!
凍え死にそうなのでありまぁす!
誰か、誰か一刻も早くお助け下さいませですぅっ!」