第五十七話『闘いの行き着く果ては、にゃん』
第五十七話『闘いの行き着く果ては、にゃん』
「ええとぉ。ミーナ、どうしましたですかぁ?」
「ええいっ! のんびりと話していたら充填がムダになってしまうわん。
しょうがない。望みどおり、こっちから行っくわん!」
びゅうぅぅん!
「おっ。やっとやる気になったでありますかぁ。ならばこちらも」
びゅうぅぅん!
「我が流与の力、とくとみるがいいでありまぁす。
『妖力爆流渦』ぁっ!」
ぐるぐるぐるぐるぅっ!
「きたきた。巨大な風の渦が。これを待っていたのわん。
『妖力爆風波 光の槍バージョン』!」
ずっぴゅうぅぅん!
「にゃあるほど。
ミーにゃんはまたしてもあれを渦の中心に突っ込ませたわけにゃん。
しかしにゃがら、『狭界』で使ってから大分経つしにゃ。
ミムカにゃんが無策のままミーにゃんの挑戦に応じたとはとても……」
ぶわああぁぁっ!
「やったわぁん!
光の槍は渦本体を粉砕して、ミムカんのほうに……あれっ?」
ぐるぐるぐるぐるぅっ!
「そ、そんなぁ!
あり得ないわん。渦が再び収束するなんてぇ」
「ミーナ。
流与の力とは全てのモノに一つの流れを与える呪なのでありまぁす。
ほら、マナコを大きく見開いて良ぉく見なさいませです。
あの金色に輝く光の渦を。
粉砕されたかに見えたミムカの渦は、
ミーナの光の槍を取り込みましてですねぇ。
一つの新たなる力へと生まれ変わったのでありまぁす」
「ということは……」
「はい。光の渦はミムカの思うがまま。
さぁ遠慮は無用。ミーナへと向かいなさいませですぅっ!」
ぐるぐるぐるぐるぅっ!
「うわん! 来ないでぇ! 来ちゃダメなのわああぁぁん!」
ずぼっ!
ぐるぐるぐるぐるぅっ!
すたっ。
「ほら、ミアン。
ミーナが渦の流れのままに回転していますですよぉ。
ひょっとすると、気を失ったかもしれませんです。
これで少しは反省して頂けるとありがたいのですが」
「気を失っているのにゃら、反省もくそもにゃいのにゃん。
にゃあ、ミムカにゃん。ここらあたりが潮時じゃにゃい?」
「かもしれませんですねぇ。ならば、そろそろやめるとしますですか」
「どうやってとめるのにゃん?」
「こうやって」
ぱちん。
「おや? 指ぱっちんで消えてしまうはずでありますが?
どれ、もう一回」
ぱちん。
「おかしいですねぇ。全然ダメ……うぉっ!
どうしたことでありますかぁ。
光の渦がこちらへと向かってくるでありまぁす」
「さっき、一つの力とにゃった、とかいってたにゃ」
「はい。それがどうしたでありますかぁ?」
「その力を逆にミーにゃんが自分のモノにしたんじゃにゃいの?」
「そ、そんなぁ!」
『ミアンのいう通りわん』
「ほら。ミーにゃんの霊覚交信が聞こえてきたのにゃん」
『ミムカん。アタシを誰だと思っているのわん。
イオラの森のお姫様をあなどるなかれぇ! なのわん!』
「す、吸い込まれるでありまぁす! うおおぉぉっ!」
ずぼっ。
『やった……やったわのん。ミアン、あとは頼むわん』
「どうやら、終わったみたいにゃん。
渦が消えたあとに残ったのは、
ふたりの、気を失った翅人型姿の妖体のみ……にゃんてにゃあ。
仲良く地べたに転がっているさまが、にゃんともまぁ諸行無常にゃん」
ぎゅううぅぅん。くるくるくるくるぅっ。まきまきぃっ。
「しっぽをふたりに巻きつけて、と。
背中に、ぽとん、と落とせば……、うんにゃ。これでいいにゃん。
どれ、やわらかにゃ落ち葉の敷き詰める寝床にでも、
運んであげようにゃん」
のっしのっし。
がばっ。
「ここはどこ? アタシは誰なのわん?」
がばっ。
「ここはどこ? ミムカは誰なのでありますかぁ?」
「ウチはミアンにゃ」
「あのね……。
『アタシは誰なのわん?』って聴いているのに、
どうして自分の名前をいうのわん?」
「そうでありますよぉ。
なんか拍子抜けしてしまうじゃありませんですかぁ」
「ミムカは誰にゃの? のほうがよっぽど拍子抜けにゃん」
「それをいったら、おしまい、でありまぁす」
「おしまいでもにゃんでも、ほっ、としたのにゃん。
ウチの名前が判るってことはにゃ。
今の自分らにも気がついているってことにゃもん」
「そういえば……、アタシはミムカんと闘って」
「ミムカはミーナと闘って」
「うんにゃ。
ふたりとも、ずたぼろのぼろぼろにゃ目に遭ったのにゃん。
おいたわしや。合掌にゃん」
「ミアンったら、拝まなくてもいいわん。
ふぅ。このアタシが枯れ花となって散るとはねぇ。
まさに、『花の命は短くて、苦しきことのみ多かりき』なのわん」
「ミーナ」
「いいわん、ミムカん。
今回はアタシの負け、ってことにしておいてあげるのわん」
「とぉんでもありませんです。
流与の力を奪われてしまった時点で、ミムカの完敗でありますよぉ」
「ううん。ムキになりすぎた挙句、気を失っちゃうなんて。
最後のつめが甘かったからなのわん。やっぱアタシの負けわん」
「そんなぁ。気を失ったのはミムカも同じでありまぁす」
「ふぅ。なら、どっちもどっちかぁ。
でもそうすると、今回の勝者は誰なのわん?」
「誰もいないのじゃありませんですかぁ?
気を失わずに、ぴんぴん、している者なんて誰も……おや?」
「そういえば……」
くるっ。くるっ。
「どうしたのにゃ?
にゃんでふたりしてウチを見つめるのにゃん?」
《ウチが勝者かどうかはさておき。ごめんにゃ。またまたつづくのにゃん》




