第三十五話『ウチは「わら」をもつかむのにゃん』
第三十五話『ウチは「わら」をもつかむのにゃん』
べたぁっ!
「どうしたの? ミアン君。地面にうつ伏せに張りついちゃって。
ひょっとして最近の流行」
「にゃわけにゃいのにゃん!」
むっくり。
「こいつがウチの歩みを邪魔したのにゃん!」
びしっ。
「こいつって、この黒っぽい石のことだよね?
そうかぁ。
いわれてみれば、土からの突き出し具合が芸術的なくらいおしとやかに決まっているね。 これならつまずいても無理はないかも」
「芸術もおしとやかもどうでもいいのにゃん。
土まみれとにゃってしまったウチの美貌と美体をどうしてくれるのにゃん?」
「ミアン君。小石に怒りをぶつけたって始まらないよ」
「にゃら誰に怒りをぶつけたらいいのにゃん?
この振り上げた拳を誰に下ろしたらいいのにゃん?」
「少なくともボクにはやめてね。
そんな土だらけの拳でなんかまっぴら……あれっ。
ねぇ、ミアン君。その右手につかんでいるのって?」
「右手にゃて?
ええと……本当にゃん。薄茶色の細長いモノをつかんでいるのにゃ」
「良ぉく見ると……、うん。わらだね。それって。
『おぼれる者、わらをもつかむ』のわらさ。
ふふっ。器用だな、ミアン君って。
水じゃなくて土に、あっぷあっぷ、したんだから」
「ふぅぅむ。わらとはにゃあ」
ぺたん。
「どうしたの? 急にうずくまって考え込んだりして」
「想い出そうとしているのにゃん」
「なにをさ?」
「天空の村に引っ越してきた移民が遺した資料ににゃ。
わらを用いたおとぎ話があったのにゃん」
「ちょっと待ってよ。
今、『引っ越してきた』なんて、さらぁっ、といってのけたけどさ。
ボクの思い違いでなければ、ずいぶんと大昔の話だよね?
だったら、そのおとぎ話とやらが造られたのだって、
それよりも、もっともぉっと前、ってことになるんじゃないの?」
「うんにゃ。ウチもそのつもりで喋っているのにゃん」
「判んないなぁ。どうしてミアン君がそんなお古い物語を知っているのさ?」
「にゃってウチは飼いネコにゃったのにゃもん」
「なるほどねぇ。生前の記憶かぁ。人と暮らしていた頃に知ったんだね。
それでそれで? どういった筋書きなのか教えてよ」
「しかとは覚えていにゃのにゃけれどもぉ。
わらを使って金持ちとにゃったような話にゃのにゃん」
「金持ちかぁ。
ねぇ、ミアン君。『移民』っていうのは人間だよね?
ということは……、『わら』って人間にとっては価値のある品なのかなぁ」
「ふぅぅむ。にゃんとにゃく気ににゃってきたにゃあ。
どれ、確かめてみるのにゃん」
「どうやってさ?」
「人間の棲む住居区に行ってみるのにゃん。
ミクリにゃんが思った通りにゃら、にゃにかしらの相応の反応があるはずにゃ」
「ふふっ。なんか面白くなりそうな予感。
そうだ。ねぇ、どうせ行くなら、もっとわらを持っていこうよ」
「おや? にゃんかウチ以上に張り切っているじゃにゃいの」
「張り切りたくもなるさ。
人間の棲む『住居区』に足を踏み入れるなんて、めったにないことだからね。
好奇心わくわくなんだ」
「ということは一緒に行ってくれるのにゃん?」
「当然だよ。
指を咥えてなにもしない、っていうのはボクの性分じゃないからね。
さてと。それじゃあ早速刈ろうかなぁ」
「一体どれくらい用意するつもりにゃん?」
「そうだなぁ。背中にしょって歩けるぐらいでいいかなぁ」
「にゃんと!」
「さてと。これでいいにゃん。
ミクリにゃん。そろそろ出発しようにゃん」
「ふふっ。なんのかんのといいながら、結局ボクとおんなじぐらいの束になったね」
「しょうがにゃいのにゃ。
ミクリにゃんが大束にゃのに、ウチが一本じゃ格好がつかにゃいもん」
「そうこなくっちゃ。
思ったよりも、がさばるし、重さもあるけど、
向こうへ行ったら、それなりの面白さを味わえると思うんだ。
欲しい人だって、わんさかと居るはずだからね。
帰りは、らくらく身軽で帰ってこられるんじゃないかな」
「んにゃ。楽しみにゃことにゃん」
《つづくのにゃん。お次が後編にゃもんで、ここは一つ辛抱して欲しいのにゃん》




