表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウチとミーにゃんのお喋り話  作者: にゃん丸
3/1000

第三話『ほっ、としたのわん』

 第三話『ほっ、としたのわん』


「いよいよ。明日は『パンの日』かぁ。

 ずぅぅっ、と前に、アタシがこの日を決めてさぁ。

『いぃい? ミアン。ぜぇったいに美味しいパンを完成させるのわん』とか厳命して、『そんにゃあ!』って悲鳴をあげさせたのを今でもはっきりと覚えているのわん。

 そしてついに、その明日がくるのわん。

 ミアンったら、日に日に焦ってくるかと思いきや、どうしてどうして。プレッシャーをはねのけたばかりか、『にゃんにゃんと楽しみににゃってきたのにゃん』なんてウキウキし出す始末。さすがはアタシの親友だけのことはあるわん、って感じね。もうタフというか、なんというか。

 おかげでアタシも楽しくなってきちゃったわぁん。

 明日、早く来ないかなぁ。

 きゃはっ。嬉しすぎて、もう今夜はおネムしたくても出来ないかもしれないのわん。

 でもまぁ取り敢えずは、瞳を閉じて、と」

 …………。

 …………。

 すうぅっ。すうぅっ。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「らんららんらんらぁん。

 それでは頂きますのわぁん!」

「どうぞにゃん。

 ウチの手造りのバターロール。心ゆくまでご堪能あれにゃ」

「うん!」

 もぐもぐもぐっ。もぐもぐもぐっ。

「ミーにゃんミーにゃん。どうにゃ? ご賞味のほどは」

「ミアン、やるじゃない。初めてにしてはなかなかの出来栄えなのわん」

「これはこれは。そんにゃに喜んでもらえるにゃんて。

 ウチとしても苦労して造った甲斐があったというものにゃん」

「とぉくにこの茶色と黒。なにを練り込んだのかは知らないけどぉ。

 味に奥行きを醸し出しているのわん」

「ウチも嬉しいのにゃん」

「うん? なにがわん?」」

「ほら、こんにゃにもお手手が綺麗綺麗に、すべすべににゃったのにゃ。

 いやあ、パンをこねる前とは雲泥の差にゃ。にゃあはっはっはっ」

 ぽとり。

「ミアン……。ねぇ、ちょっとミアン」

「どうしたのにゃ? パンを落とすにゃんて。

 顔色も悪くにゃっているし、にゃんかあったのにゃん?」

「まさか、とは思うけどぉ。

 ミアン、料理を始める前に両手をちゃんと洗ったの?」

「ミーにゃんったら、にゃにいっているのにゃん。

 当たり前に考えたら、直ぐに判るじゃにゃい」

「そ、そうよね。アタシもアホなのわん。

 ごめんごめん。聴くまでもなかったわん」

「常識にゃよ。

 どこの世界に、料理を始める前に手を洗うネコがおるのにゃん?」

「っていうか、そもそも料理をするネコが居ること自体……はっ!

 ミアン。ということは」

「洗うはずがにゃいじゃにゃいの」

「そ、それじゃあ、こ、この茶色と黒いのは」

「どれどれぇっ。……ぷふっ。にゃにかと思えば。

 茶色のは土で、黒いのは地中虫にゃ。一目瞭然にゃよ」

「それをアタシは……」


『きゃあああぁぁぁっ!』


 がばっ。

 きょろきょろ。

「ここはどこ? アタシは誰?

 ……おやっ? ここはゆりかごの中なのわん。

 でもって下のほうを見れば、ミアンがおネムの真っ最中。

 そうか。あれは夢だったのわん。

 やれやれ。ほっ、としたのわん。

 ふわああぁぁい。なんか安心したら、急にまたおネムしたく……」

 すうぅっ。すうぅっ。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ほほぉ。ここが厨房ちゅうぼうねぇ。

 調理道具だけじゃなくて、食器も置いてあるのか……。

 ミアンったら、たいしものわん。

 洞穴の中に、たったひとりでここまで部屋を造っちゃうなんて。

 アタシもなにか造ってみたく……おや?」

 ぐわぁん!

「なんかひとりでに開いたけどぉ……。

 ははぁん。そうか。これねぇ。

『なんでも造り隊』が地中から掘り起こした、異星人の遺産っていうのは。

 確かぁ、『オーブン』とかいう名前でぇ。

 そうそう。機械仕掛けの焼き窯、なんていってたっけ。

 ミムカんも協力して、森でも使えるようにした、とは聴いてはいたけどぉ。

 まさか、ミアンが手にしていたとはねぇ。想像もつかなかったわぁん。

 どうして、親友のアタシになにもいわないのかなぁ。

 あっ。ひょっとしたら、サプライズだったのかも。

『ほぉら。すっごいにゃろう』なんて自慢げな顔で発表して、こっちをびっくり。

 ふふっ。ミアンならありそうな話わん。

 まっ。そういうことなら、見つけたのは黙っていてあげましょうか。

 親友の楽しみを台無しにたくないしね。

 ところでぇ、とぉ。中はどうなっているのわん?」

 ぱたぱたぱた。

「ええとぉ。ううん。ちょっと入ると、もう真っ暗なのわん」

 ぎいぃぃっ…………ばたん!

「な、なにわん! 急にドアが閉まったのわん!」

 ぼっ!

「なに? 今の?

 ぼっ、って、一体なにが……あ、熱い! 熱いわん!

 は、早く実体波を解除して、ここから逃げ出さなきゃ」

 ぼぼぼおぉぉっ!

「はっ! ダ、ダメなのわん。

 焦っちゃって、どうしても気を集中させることが……あ、熱い! 

 更にヒートアップしているわん! 熱いわん! 熱いわん!

 熱すぎて、もうどうにもならないのわあぁぁん!」


 がばっ。

 きょろきょろ。

「ここはどこ? アタシは誰?

 ……おやっ? ここはゆりかごの中なのわん。

 でもって下のほうを見れば、ミアンがおネムの真っ最中。

 そうか。あれは夢だったのわん。

 やれやれ。ほっ、としたのわん。

 ……あれっ? このセリフ。なんか前にも呟いたようなぁ……まぁいいわん。

 ふわああぁぁい。なんか安心したら、急にまたおネムしたく」

 がたっ。

 すうぅっ。すうぅっ。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「おや、ここはどこなのわん?

 なんかずいぶんと白くてふわふわな、気持ちのいいモノの上に寝ているわん」

 きょろきょろ。

「あっ、そうか。ここは発酵中のパン生地の上なのわん。

 道理で……うわん! 大変なのわん。どんどん沈んでいくわん。

 大変なのわん。このままじゃあ息すら……ちょ、ちょっとタンマ。

 冷静に。とにかく冷静に。

 落ち着いて、ミーナ。心を鎮めるの。

 実体波を解除して霊体の姿に戻ればいいだけの話じゃない。

 そしたらこんな場所なんか一瞬で…………うわん!

 冷静に、なんかとても無理わん!

 もはや手遅れ。なにをどうやっても……ううっ……どうあがいても……ううっ。

 間に合わないのわあぁん!」

  ずぶずぶずぶずぶずぶっ。


 がばっ。

 きょろきょろ。

「ここはどこ? アタシは誰?

 ……おやっ? ここはゆりかごの中なのわん。

 でもって下のほうを見れば、ミアンがおネムの真っ最中。

 そうか。あれは夢だったのわん。

 やれやれ。ほっ、としたのわん。

 ……あれっ? このセリフ。なんか前にもどこかで喋ったようなぁ。

 これってデジャブ-? それとも……ふわああぁぁい。

 ダメ。おネムしたくて、全然考えがまとまら」

 がたっ。

 すうぅっ。すうぅっ。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「からんからんからん!

 ミーにゃん! 今日は待ちに待ったパンの日にゃん!」

「うふっ。ミアンったら、鐘の音まで自分の口で。

 相当リキ(=力)が入っているみたいね?」

「当然にゃのにゃ。この日がくるのをどれにゃけ心待ちにしていたことか。

 もうドキドキワクワクで胸がはち切れそうにゃん」

「だったら、すぐさま始めようよ。

 さぁミアン。今こそ、思いの丈をぶちまけるのわん」

「うんにゃ。行っくにゃよぉっ。

 ごっほん。ええぇ、ご来場のみにゃさまぁ。

 本日はお日柄も良く、にゃけじゃにゃいのにゃん。

 怖れ多くも、ここにおられるイオラの森のお姫様に依って新たに制定された、

『パンの日』にゃのにゃ」

「えっへん! そうなのわん!」

「でにゃ。栄えある第一回目にゃもんで、ウチのパン造りを披露するのにゃん。

 あとでみにゃさまにも試食してもらうもんでにゃ。

 今のうちに、しっかと覚悟しておくのにゃよぉ」

「覚悟って…………まぁいいわん。どうせ、

 興奮しすぎて自分でもなにをいってんのかさっぱり。

 なぁんて状態なんだろうから。ツッコミはやめておこう、っと。

 ここは素知らぬフリ、素知らぬフリ。

 えっへん!

 それでミアン。なにから始めるのわん?」

「そうにゃにゃあ。まずは肝心要のレシピにゃ。

 ええとぉ。粉と、それからぁ……」

「はぁい、ミアンちゃん」

「おや? イオラにゃんじゃにゃい。

 どうしたのにゃん? パン造りに取りかかる寸前にゃっていうのに」

「それがねぇ。ごめんなさい。

 あらかじめ予定していた字数を超えそうなの。

 だから、大変申しわけないのだけれど、今回のお話はこれまでにして頂戴」

「にゃ、にゃんと。もうそんにゃに?」

 じろりっ。

「ミーにゃん。あんた、にゃんてことを」

「へっ? アタシのせい?

 アタシが夢を見たから、それで字数が足りなくなったっていうの?

 そんなアホなぁ!」

「ミーにゃん。

『アホなぁ!』で済ませられると思ったら、大間違いにゃん!

 貴重な字数を浪費するにゃんて。

 親友とはいえ、ぜえぇったいに許せにゃいのにゃ。

 罰として、これでも食らうがいいのにゃん!」

「これでも、って……うわん!

 どぉこに隠していたか、こね済みの生地なのわん!

 ちょ、ちょっと待つのわん。

 それをアタシにぶつけたってなんにも解決なんか……」

「天誅にゃん!」


『きゃあああぁぁぁっ!』



 がばっ。

 きょろきょろ。

「ここはどこ? アタシは誰?

 ……おやっ? ここはゆりかごの中なのわん。

 でもって下のほうを見れば、ミアンがおネムの真っ最中。

 そうか。あれは夢だったのわん。

 やれやれ。ほっ、としたのわん。

 ……あれっ? このセリフ。なんか前にも……ふわああぁぁい。

 ダメダメ。おネムをしたくてしたくてしたく」

 がたっ。

 すうぅっ。すうぅっ。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ねぇねぇ」

「にゃに? ミーにゃん」

「本当にパン造りをやらないのわん?」

「期待していたのにゃん?」

「えっ。……ま、まぁね」

「そうかぁ。それは済まにゃいのにゃあ。

 いや、実はにゃ。

 粉も手に入れたし、手に入りにくい素材も代替え品を使うってことで落ち着いたのにゃ。

 ところがにゃん」

「なにかあったのわん?」

「良ぉく考えてみれば、手ごねパンって、手でこねるパンのことじゃにゃいの」

「そうね。良ぉく考えなくても、そうだと思うわん」

「ふと自分の前足、いや、手を見てにゃ。でもって気がついたのにゃん。

 肉球にも、この毛の一本一本にも、肉球と毛の間にもにゃ。

 べぇっとり、と生地がついてしまうことをにゃ」

「まぁだからこそ、手ごねパンって造り手の味が込められるんじゃないの?」

「んにゃのにゃけれども、べとべとににゃるのはどうもにゃあ。

 洗っても本当に、綺麗にに落ちるかどうか……。

 大体にゃあ。こねられるほうもイヤにゃと思うのにゃん」

「こねられるほうって、パン生地のことよね?

 なんでパン生地がイヤがるのわん?」

「ほらほら。これをご覧あれにゃ」

「うぉっ。両手とも土だらけ。おまけに虫まで引っついているのわん」

「これでこねられたらイヤにゃろう?」

「と尋ねられても返事に困るわん。

 第一、生地にイヤとかそういう感情があるかどうか……」

「にゃら、ミーにゃんで試してみるのにゃん」

「へっ? アタシで? それってどういう……うぉっ!

 ミアンの両手がアタシの顔に向かってくるのわん!

 早速逃げな」

 がしっ。

「イ、イオラ。なんでアタシを羽交い締めにするのわん?」

「うふっ。何事も経験よ。ミーナちゃん」

「そんなぁ!」

 

『きゃあああぁぁっ!』


 むぎゅうぅっ!


「ふっ」

 ばたん!


 がばっ。

「ここはどこ? アタシは誰?

 ……おやっ? ここはゆりかごの中なのわん。

 でもって下のほうを見れば、ミアンがおネムの真っ最中。

 そうか。あれは夢だったのわん。

 やれやれ。ほっ、としたのわん。

 それにしても……、どうしてあんな夢を見るのわん?

 純真無垢で、おしとやかで、

 常に他者を敬い、大事にしようとするアタシなのに。

 一体どんな悪いことをしたっていうのわん?

 本当、誰か知っていたら教えて欲しい……うん?」

 ぴろっ。

「なぁんか黒くて小っこいのが顔にくっついていたのわん。

 これって、ふとんについていた『ごみ』かなぁ?

 まぁいいわん」

 ぽいっ。

「ふわあぁぁい。今度こそ、朝までゆっくりとおネムしなきゃあ」

 じゃあ、お休みなさいのわぁん」

 すうぅっ。すうぅっ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ