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ウチとミーにゃんのお喋り話  作者: にゃん丸
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第二話『インスタント呪術師。その名はミアンにゃ』

 第二話『インスタント呪術師。その名はミアンにゃ』


「ミーにゃんミーにゃん」

「なぁにぃ?」

 くるっ。

「ミアン……うぉっ!なにその白装束? 

 ひょっとしてこの世を儚んで、あの世とやらへ旅立つ気にでもなったのわん?」

「にゃんと! そうかぁ。その手もあるのにゃあ」

「ちょ、ちょっと待ってよ。全然皆無の全くもっての冗談なのわん。

 そんなことをしたら、アタシが悲しむのわん」

「ミーにゃんを悲しませてはいけにゃいのにゃん。

 しょうがにゃい。ここは一つ延期としようにゃん」

「延期じゃダメなのわん。いぃい? ミアン。

 アタシはずうぅっ、とミアンと一緒に暮らしていきたいのわん。

 だから、アタシを看取るまでは死なないって約束するのわん」

「ミーにゃん……ぐすん。

 有難うにゃ、ミーにゃん」


「話を戻すわん。

 ねぇ、ミアン。

 あの世じゃないなら、その格好にはどういう意味があるのわん?」

「実はにゃ。ウチはインスタント呪術師とにゃったのにゃん」

「なんかまたややっこしいことを始めたみたいだけど……、

 それってなんなのわん?」

「ほら、インスタントラーメンとかいうじゃにゃい」

「それって確か、短い時間で頂ける、っていう奴じゃなかったっけ?]

[そうにゃよ。でもにゃ。とぉっても美味しいのにゃん。

 これぞ広大にゃる宇宙の一つの神秘。

 いやいや、奇跡といってもいいぐらいの代物にゃのにゃん」

「ふふっ。ミアンったらぁ。

 そこまでいってもらえたら、インスタントラーメンも本望なのわん」

「でにゃ。それにあやかってのインスタント呪術師。

 イオラにゃんがインスタントで仕立てた、出来立てほやほやにゃのにゃん」

「やっぱりね。イオラが一枚かんでいるんじゃないかと思ったのわん。

 それにしても、出来立てほやほや、とはねぇ。

 一体どうやって修行したのわん?」

「いんにゃ。修行にゃんかしてにゃい。ことの起こりはこうにゃん」


「にゃあ、イオラにゃあん。にゃあんか面白いネタはにゃいのにゃん?」

「ふふっ。ネタ切れで困っているの?

 そうねぇ……。

 だったら、ネタそのものを造ってみたらどうかしら?」

「にゃんと!

 ネタを掘り起こすのじゃにゃくて、自ら造ってしまおうにゃんて。

 まさに逆転の発想にゃあ」

「そしてミアンちゃんがネタの発信源、創造者となるの。

 自分自身なら、いうことないでしょ? どんどんネタの造り放題よ」

「にゃんと!

 逆転の発想を更に逆転した発想じゃにゃいの。

 これはもう……ふにゃ、良ぉく考えてみたらダメにゃん」

「どうして?」

「逆転の逆転は元に戻るのにゃ。

 普通の発想に成り下がってしまったのにゃん」

「あら。ワタシとしたことが、なんてうかつなのかしら。

 こんな初歩的ミスをやらかすなんて。

 もう恥ずかしくて恥ずかしくて誰にも顔を見せられないわ」

 しょぼぉん。

「イオラにゃん……。

 にゃからといって、のっぺらぼうの顔とにゃってしょげにゃくても」


「とまぁそんにゃこんにゃがあってにゃ。

 にゃんとか笑顔に戻ってもらいたくて、普通の発想を採用したのにゃん」

「それがインスタント呪術師誕生のきっかけかぁ。

 で、どうやって、なれたのわん?」

「イオラにゃんがウチの頭をなでなでしてにゃ。

『いい子。いい子。

 いい子だからね。立派な呪術師になるのよぉ。いいわねぇ』

 との呪文を口にしたのにゃん。そしたらにゃんと。

 ウチに後光が射してにゃ。

 みるみる間に、この姿へと変貌していったってわけにゃん。

『ミアンちゃん。あなたはもう無敵の存在となっているわ。

 さぁどこへなりともお行きなさい。

 みんなを圧倒させるだけの力のあることが直ぐに判るはずよ』

 にゃあんて送り出してくれたのにゃ。

 にゃ? にゃんとも感動的にゃ物語にゃろう?」

「なんか巧妙な詐欺師にでも引っかかったような……」


「ごっほん。インスタント呪術師誕生秘話はこれくらいにしてにゃ。

 先ずは手始めとして、ミーにゃんの悩みを解決して進ぜるのにゃん」

「へっ? アタシの悩み? そんなもん、あったかなぁ」

「ウチはにゃんでもお見通しにゃん。

 ミーにゃん。あんたはにゃあ……」


『自分がアホではにゃいかと恐れているのにゃん!』


「えっ、そうだったのわん?」

「うんにゃ。自爆弾とにゃってにゃ。

 ウチを含め、ミーにゃん同盟の友にゃちを全滅させるのが日課にゃのも、

 実は、そんにゃ自分の不安を紛らわそうとした結果にゃのにゃん」

「ぜぇんぜぇん気がつかなかったわん。てっきり、

『楽しいし、みんなも喜んでくれる』

 からだと思っていたのわん」

「ほら、そんにゃ風に誤解するのも、全ては自分の不安が原因にゃのにゃ。

 ミーにゃんの深層心理に巣食っている悪魔の仕業にゃのにゃん」

「アタシの深層心理に悪魔が?」

「さよう。悪魔とは『負の念』のことでにゃ。

 誰かの深層心理に隠れている負の念が、

 ミーにゃんの心にも感染してしまったのにゃん」

「怖いことわん。もはやどうにもならないのわん?」

「まぁまぁ。うろたえるには及ばにゃいのにゃ。

 それを看破した今、もはや案ずることはにゃい。

 ウチの呪術にて悪魔を一掃してしまうのにゃん」

「すっごいわん。でもどうやってやるのわん?]

「生き物にはにゃ。『忘れる』という能力が備わっているのにゃ。

 悲しみから立ち直れるのも、これのおかげ。

 ウチがこれから使おうとしているのも、これの力にゃん。

『忘れる』ことで、ミーにゃんの心から不安の根源を取り除くのにゃ」

「それはすっごいわん」

「まにゃまにゃ。でもってついでににゃ。

 悪魔をうつした、当の相手のことすらも忘れてしまうのにゃん」

「おおっ。ますますもってすっごいわん。なんかミアンが頼もしく思えてきたのわん。

 だったら早速やってもらうわん。いつでもこい! なのわん」

「うんにゃ。にゃらばっ」


『ネコネコにゃったら、ネコネコにゃ。

 ネコネコにゃったら、ネコネコにゃん。

 ネコぉっ!』


「うわぁん! ミアンのネコ差し指から強烈な光が!

 目の前が……真っ白にぃ……」


「どうにゃ? ミーにゃん。気分のほどは」

「すすすすすっごいわん!

 心が透明っていうか、なぁんかとぉってもすがすがしいのわん」

「良かったにゃあ。

 ミーにゃんの心から『不安』という名の霧が消えた証拠にゃん。

 晴れ晴れとした気持ちににゃるのも当然にゃのにゃ」

「ところで、と。一つ聴いてもいいわん?」

「にゃんにゃりと」

「今、アタシに話しかけているあなたは誰なのわん?」

「にゃんと! ま、まずいのにゃん! 

 ミーにゃん、ごめんにゃあ」


『ネコネコにゃったら、ネコネコにゃ。

 ネコネコにゃったら、ネコネコにゃん。

 ネコぉっ!』


「うわん! また光なのわん!」


「どうにゃ? ミーにゃん。気分のほどは」

「気分? ええとぉ……特に悪くはなっていないわん。

 っていうか、いつも通りなのわん」

「にゃったらウチのことを覚えているのにゃん?」

「ミアンのこと? 当ったり前なのわん。

 アタシたちは親友同士じゃない。忘れるはずが……。

 うん? どうしたの? ひょっとして涙ぐんでいたりとか?」

「ううん。にゃんでもにゃいにゃんでもにゃい。目にごみが入ったにゃけにゃよ」

「ふぅぅん。まぁそれならいいんだけどぉ。

 で、どうなったのわん? 悪魔とやらは一掃されたのわん?」

「それがそのぉ。……ダメみたいにゃん。

 やっぱウチは呪術師にゃんかむかにゃいのにゃん。

 ってことでにゃ。こんにゃものは」

 びりびりびり。びりびりびり。

「あぁあ。白装束の服をやぶっちゃったのわん」

「でもってにゃ」

 もぐもぐもぐ…………ごっくん。

「食べちゃったわん。

 ねぇ、ミアン。本当にどうしたの?」

「ミーにゃん。やっぱウチはウチにゃん。

 それ以外の何物でもにゃいってことが良ぉく判ったのにゃん」

「なんか良く判らないけど……、要するに呪術師ごっこはやめたってこと?」

「んにゃ」

「そう。なんだか面白くなりそうな感じだったけどなぁ。

 まぁいいわん。ミアンがやめたっていうなら。

 ……おや? 誰か来たわん」


 ぱたぱたぱた。

「誰かじゃありませんですよぉ」

「あっ、ミムカん」

「今日、温泉に来るっていうから、今の今まで楽しみに待っていましたですのにぃ。

 ぜぇんぜぇん姿を見せてくれないじゃないですかぁ。

 これ以上待ちぼうけを食わされるのはイヤ、ってことで、『待ち』から『攻め』の姿勢へと転じることにしましたですよ。

 まっ。早い話が、こっちからお迎えにあがった次第でありまぁす」

「ごめんごめん。そうだったそうだった。

 こっちも今の今までミアンの呪術師ごっこにつき合っていたから、

 そっちのことを想い出す暇がなかったのわん」

「ほぉ。なかなか興味深いことをやっていたのでありますねぇ」

「でもそれも終わりなのわん。

 ミムカん。お迎えにきたのならちょうどいいわん。

 一緒に行こう」

「はい。待ってました、でありまぁす」

 ぱたぱたぱた。ぱたぱたぱた。


「ミーにゃん…………。

 ミーにゃん、ごめんにゃ。

 ミーにゃんの不安をかき立てたのはどうやらウチみたいにゃ。

 にゃもんで、本来であればにゃ。

 負の念もウチのことも忘れてもらったままにするのが一番にゃのにゃろうけれども……。

 ダメにゃん。どうしても出来にゃかった。

 ウチとミーにゃんの『親友同士』という絆は、

 小さい頃からずぅっと続けてきた会話やふれあい、

 要するに心のやり取りに依って育まれたものにゃん。

 忘れるということは、これら全てを失ってしまうことにゃ。

 ミーにゃんとの絆を失ってしまうことにゃ。

 それがどうしてもウチには耐えられにゃかったのにゃ。

 にゃもんで、……忘れたことを忘れてもらったのにゃ。

 ウチのわがままを許してにゃ。ミーにゃん」


 ぱたぱたぱた。

「どうしたの? ミアンは行かないのわん?」

「ふにゃ? ……う、うんにゃ。もちろん、ウチも行くのにゃん」

「そうこなくっちゃ、でありまぁす!」

「ささっ。ふたりとも。ウチの背中にお乗んにゃさい」

「うん!」

「では失礼をば致しますです」

 ぺたん。ぺたん。


「……とまぁ頭をぶつけてしまいましてですねぇ」

「きゃはっ」「にゃはっ」「ふはっ」

 のっしのっしのっし。


「イオラお姉様。今の、ご覧になられましたか?」

「見ました。しかとこの目で」

「忘れてもらった、というだけならまだしも、

 忘れたことをを忘れてもらったのですよ。

 早い話が、元に戻した。チャラにしたのです。

 しかも呪術師としてはドシロウト同然のなのに。

 ただごとじゃありません」

「才能があるとは薄々感づいてはいたのだけれど……、

 まさかこれほどあっけなくやってのけてしまうなんてね。

 ふぅ。ワタシの想像をはるかに超えているわ」

「お姉様。あの子を然るべき精霊に預け、ちゃんと育ててもらえば、

 稀代の呪術師、と謳われる存在となる可能性も十二分にあります。

 精霊並みの霊術を扱えるようになることだって決してあり得ないとは」

「そう……いえ、やめておきましょう」

「どうしてですか? これからの天空の村には是非とも必要な」

「ミアンちゃんは一度死んだのよ。

 こうやって新たな命を得たからには、自由に、のびのびと生きて欲しいの。

 変に弄りたくないの。

 見たり聴いたり、そして経験する中、開花する才能があるなら、

 ミアンちゃん自身も望んでいるというのであれば……、

 そうなって欲しい。それがワタシの願い」

「しかしぃ……」

「ミアンちゃんはミーナちゃんの不安を取り除こうとして忘れてもらった。

 でも、そのおかげでミーナちゃんとの絆を失った。

 ミアンちゃんはどうしてもミーナちゃんとの絆を取り戻したかった。守りたかった。

 だから……、忘れたことを忘れてもらった。

 どの思いも、決してミアンちゃんのエゴなんかじゃない。わがままなんかじゃない。

 ミアンちゃんのミーナちゃんに対する……愛から生まれた。

 ねぇ、フィーネちゃん。愛は奇跡を生む、とかいうでしょ?

 ミアンちゃんの呪が上手くいったのは……、

 ミーナちゃんが元に戻れたのは……、、

 ミアンちゃんの、親友に対する思い、が、『愛』だったからに他ならないわ。

 ワタシたちが今、目にしたのは、愛がもたらした奇跡。

 そういうことでいいんじゃないかしら」

「奇跡、ですか。

 確かに……、無理矢理あれやこれやと圧しつけても、

 期待通りにことが進む可能性は極めて低いといわざるを得ません」

「だったら」

「判りました。お姉様のお望み通りにしましょう。

 手を出さず、口も出さず、見守り続けることに致します」

「有難う、フィーネちゃん。さすがは天外魔境の管理者。

 ワタシとと同様、六大精霊のひとり、となるだけのことはあるわね」

「お褒めに預かって光栄です」

「うふっ。まだまだ。大事なのはここからだからちゃんと聴いてね。

 ワタシの妹分で、こうやってお茶を飲みながら覗き見するのが大好きな……んぐっ」

「それ以上のくだらぬお喋り。ご無用に願いあげます。イオラお姉様」


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