第百九十一話『ある迷子の話にゃん』
第百九十一話『ある迷子の話にゃん』
「迷子のミーにゃんはどこにゃあ!
どこに行ったのにゃあん!
居たら大声で返事するのにゃあん!」
「でね。迷子のミアンを捜しているんだけどぉ」
「割と大き目のネコですね。でしたら……」
「どうしたのわん? なにを指差して」
くるっ。
「迷子のミーにゃんはどこにゃあ!
どこに行ったのにゃあん!
居たら大声で返事するのにゃあん!」
「あっ。居た居た。
迷子が捜していたのわん。
じゃあ、ありがとうなのわん」
ぱたぱたぱた。
「ミアアァン!」
「あっ! ミーにゃああぁん!」
ひしっ。
「んもう、どこに行っていたのにゃん。
心配したのにゃよぉ」
「アタシだってぇ。
どこを捜してもダメ。しょうがないから、
迷子ルームへ行って相談していたのわぁん」
「あのぉ、済みません」
「にゃんにゃの? あんたは」
「そこにある迷子ルームの担当をしています」
「にゃらミーにゃんを助けてくれたのは」
「というわけでもないんですよ。
彼女自身がお見えになられまして」
「そういえばそんにゃことをいってたにゃあ」
「迷子を捜してくれ、との相談でした」
「そうにゃの? ミーにゃん」
「うん。迷子のミアンを捜してもらおうとしたのわん」
「すると……迷子にゃったのはウチのほうにゃん?」
「当然なのわん」
「イマイチ自覚がにゃいのにゃけれどもぉ……。
まぁミーにゃんがそういうのにゃら。
迷子ルームの担当さん。ウチを捜してくれてありがとうにゃん」
「いえいえ。これも仕事ですから。
っていうか、本当にそれで構いませんの?」
「にゃにが?」
「ご自分が迷子だって」
「ミーにゃんがそういうのにゃもん。
ウチとしても異存はにゃい」
「そうですか。判りました。
ミーナさん。ミアンさんが無事で良かったですねぇ」
「うん!
担当さん、ありがとうなのわん」
「ミーにゃん、これからどうするのにゃん?」
「年に一度のお祭りだもん。もちょっと遊んでいたいわん」
「ウチもにゃん」
「ふふっ」
「にゃはっ」
のっしのっし。
ぱたぱたぱた。
「お気をつけて…………あれっ?」
すたすたすた。
「担当にゃん」
「ええとぉ、なにか忘れ物でも?」
「うんにゃ。大事にゃ忘れもんにゃ」
「はて? 一体なにを」
「ありがとうにゃ、ミリアにゃん」
「…………はぁ。知っていたんですか」
「もちろんにゃよ。
ミーにゃんったら、あわてふためいたもんで、
ちぃっとも気がつかにゃかったみたいにゃのにゃけれども」
「でしたねぇ。
いっくら三角巾とかっぽう着をしていたはいえ、
友だちが判らないなんてぇ。とほほですよ」
「まっ、そこがミーにゃんのミーにゃんらしいとこかもにゃ。
にゃら、ミリアにゃん」
「はい。引き続きお祭りをお楽しみくださいませ」
「おや? 誰か来ていたのでありますかぁ?」
「ミーナさんが。『迷子のミアンさんを捜して』って」
「へぇ。それでどうなりましたですかぁ?」
「ミアンさんが直ぐに引き取ってくださいました」
「あれっ? 迷子はミアンのほうなのでありますよね?」
「はい。でもそれは見つかるまでの話。
見つかってしまえば」
「なるほど。
どちらが迷子か、一目瞭然、というわけでありますかぁ」
「はい」
「ふふっ。ミーナとミアンって、本当にいいコンビでありますねぇ」
「そうですねぇ。
私とミムカさんほどじゃないですけどね」
「…………」
《お祭りに顔を引きつらせるのはやめてにゃん》