第百八十九話『ネコ(寝子)を起こすことにゃかれにゃん』
第百八十九話『ネコ(寝子)を起こすことにゃかれにゃん』
「ふにゃっ。ミーにゃんが頭を下にして飛んでいるのにゃん」
ぱたぱたぱた。
「んもう、ミアンったらぁ。やっと起きたのわん?」
「面目にゃい。
と、それよりもにゃ。
ミーにゃん、その格好は?」
「格好?
ううんとぉ。別にどこも変わったとこなんてないけどぉ?」
「頭が下にゃのにゃけれども」
「ああこれ。
なぁんか知らないけど、最近の流行みたいなのわん。
時代の最先端を常にいくアタシとしては当ったり前の姿なのわん」
「流行? にゃったら、あれは?」
「あれは、って」
くるっ。
「うわん」
「にゃ。他の翅人型はみんにゃ、今まで通り頭が上にゃん。
いつもとおんにゃじにゃよぉ」
「おっかしいなぁ。そんなはずは」
「そもそも、どこで逆さまににゃっていたのにゃん?」
「あっちわん。なんであんなに集まっているのかは知らないんだけどね。
みんながみんな、頭が下なのわん」
「どれ、ウチも行ってみるのにゃん」
「ミアンが? だったらアタシも行くわん」
のっしのっし。のっしのっし。
ぱたぱたぱた。ぱたぱたぱた。
「ほら、あれなのわん」
「すっごく集まっているじゃにゃいの。
とにゃると、あの向こうに逆さま現象を解くカギがあるのに違いにゃい」
「でもさっきよりも集っている数が多いのわん。
果たして辿り着けるかどうか」
「しょうがにゃい。にゃらば」
「あきらめるのわん?」
「強行突破にゃん!」
「うん。それでこそミアンなのわん」
「ミーにゃんも見たいのにゃろ?
にゃったら、ウチの背中にしがみついたらどうにゃん?」
「うん。それがいいわん」
ぱたぱたぱた…………ひしっ。
「ミアン、用意はいいわん」
「にゃら、駆ける抜けるのにゃよぉ!」
のっしのっし……すたすた……たったったったった!
「うわん! ちょっちょっとぉ!」
「妖の群れを抜けるとそこには……ふにゃっ!
にゃんともまぁでっかい絵画にゃん!」
「誰が持ち込んだのかなぁ?」
「それよりもにゃ。これって一体にゃにを描いているのにゃん?
さぁっぱりのぱり、にゃのにゃけれども」
「そうなのよねぇ。
アタシもさっきからそれが気になってしょうが……あっ!」
「どうしたのにゃん?」
「逆さよ、逆さ。これって逆さに見ればいいのわん」
「逆さに? ふぅぅん。にゃら」
くるりんこ。
「にゃあるほろぉ。
温泉の手前にある尖がった岩石群が描かれているのにゃん」
「でもすっごいわん。逆さまに描けるなんて。
誰にでも出来ることじゃないのわん」
「いや、そうとはかぎらにゃいにゃよ」
「へっ? だって他にどんな……あっ。
見て見て。誰かが絵を動かそうとしているのわん」
「ひょっとすると、作者かも知れにゃいにゃあ」
「全くぅ。おれとしたことが、とんだしくじりをやらかしたものだ」
くるっ。
「これでよし、と。
絵を逆さまに展示したことに気がつかないなんて。
いやはや。おれも焼きが回ったな」
ぱたぱたぱた。
「念動霊波で絵を引っくり返しちゃったのわん」
「引っくり返した? ぶふふっ」
「うん?
ミアン、どうして笑っているのわん?」
「あのにゃあ。
さっき作者がいってたじゃにゃい。
『逆さまに展示した』って。
これが正しい置き方にゃのにゃよ」
「あっ、そうか。そういうことね。
失敗失敗。
一つの視点だけで物事をとらえようとしたのが仇となったのわん。
迷探偵にあるまじき行為だった、と反省するしかないのわん」
「ぶふふっ。んもう、ミーにゃんったらぁ。
迷探偵どころの騒ぎじゃにゃいのにゃん。
誰が見ても一目瞭然。ウチにゃって直ぐに判ったもん。
本当、ミーにゃんって面白いのにゃん。
さっきはさっきで、
これが『最近の流行』とかにゃんとか、のたまっていたしにゃ」
「うっ、うっさいわん!」
ぽぽっ。
「おまけに、ほおまで、真っ赤っ赤、ときたもんにゃ。
笑う門には福来たる。
こうにゃったら、もう大笑いにゃん。
ぶふふっ。ふはははっ。ぶはははははっ!」
「んもう、ミアンもミアンなのわん。そんなに笑わなくたって」
「これが笑わずには……ぶっにゃははっ。
にゃははははっ。にゃはははははははは」
「はっ!」
ぱちくり。
「やれやれ。ミアンったら、やっと起きたのわん?」
「起きた?
にゃあ、ミーにゃん。
ひょっとしてウチは今の今までおネムっていたのにゃん?」
「ひょっとしなくてもそうなのわん」
「あれが夢とはにゃあ。
ミーにゃん、ダメじゃにゃいのぉ」
「なにがわん?」
「前から口を酸っぱくしていっているにゃろ?
ネコ(寝子)を起こしちゃいけにゃいって」
「アタシ、ミアンを起こしたりなんてしないわん」
「夢の中でにゃよ。
夢の中でのミーにゃんのアホぶりに大笑いしてにゃ。
でもってそのウチ自身の声の大きさに、
思わず目覚めてしまったのにゃん。
にゃっ。起こしたのはミーにゃんにゃろ?」
「あのね……。
ミアンの夢が造り出したアタシでしょ?
そんなもんの責任なんて……、
とらされてたまるかぁ! なのわん!」
「でもにゃ。
ミリアにゃんにいわせると、『愛』に国境はにゃいんにゃと。
ミーにゃんにゃって一つの『愛』の結晶にゃ。
にゃらば、国境、ううん、現実と夢の境目にゃんてにゃいのにゃん」
「そうですよ、ミーナさん」
「ミリアん!」
「『愛』は全てを超越した存在なのです」
「こらぁっ!
最後の最後で、ややっこしくするんじゃないわん!
――それよりもなによりも――
最後の最後でしゃしゃり出てくるんじゃないわん!」