第百八十三話『黒ネコにゃんとウチにゃん』
第百八十三話『黒ネコにゃんとウチにゃん』
「どうやら、みんにゃ無事にめでたくウチのところに入ったみたいにゃ」
「これからどうするつもりでぢゅ?
やっぱアタヂの命を」
「あんた次第、ってとこにゃん」
「あんた次第とは?」
「今、尻尾の全てが、ハニヤにゃん、あんたの核に突き刺さった。
二度と悪さをしにゃいように、これから邪念を浄化するのにゃ。
もしあんたの核が、あんたのいっていた『妖魔の念』とやらの力で、
既に邪念の塊とにゃってしまっていたのにゃら、
とぉっても残念にゃのにゃけれども、滅びはまにゅがれにゃい。
でもにゃ。それとは別の心、
ナマネコにゃった頃の心が、
『自分は自分でぢゅ! 他の誰でもないでぢゅよぉ!』と、
まにゃ歯を食いしばって死に物狂いで残っていたのにゃら」
「そんなものなんて」
「残っている、とウチはみている。
会話や闘いにゃど、ほんのわずかにゃ間とはいえ、
あんたとの交わりの中で、それを身をもって知らされたのにゃ」
「でもぉ」
「今の自分を信じられにゃいにゃら、
代わりにウチを信じる、っていうのはどうにゃ?
ミーにゃんやミクリにゃんのように。
にゃってハニヤにゃん。あんたともお友にゃちににゃれそうにゃもん」
「ミアンぢゅわん」
「どんにゃにちぃっぽけにゃ欠片でも構わにゃい。
ハニヤにゃんの心が残っていて欲しいのにゃ。
ウチは、ウチはそう切に願っているのにゃん」
「お前ちゃんって……」
「にゃら、始めるにゃよぉ」
「ま、待つのでぢゅ!」
「待てにゃい!
消え失せようとするハニヤにゃんの心。
それを復活させるためにも、
『妖魔の念』の支配を一刻も早く打破するしかにゃいのにゃん!」
『「滅羅」ぁっ!』
「なら、滅びなかったのわん?」
「うんにゃ。でもって元の小っちゃい身体に戻ったのにゃん。
ウチらとのことを覚えていにゃいみたいでにゃ。
こっちを、ちらっ、と一瞥したにゃけで、
どっかに行ってしまったのにゃん」
「ふぅぅん。そうなの」
「にゃあ、ミロネにゃん。
ハニヤにゃんはふるさとに帰ったのにゃろうか?」
「いや。
『妖魔の念』が失せた、というのは、妖魔力が失せた、というのと同義。
自力で天外魔境まで行けるはずもないから、
森のどこかに留まるしかあるまい。
まっ。美味しい木の実が生る樹木はあちらこちらに立っているし、
湖も川もある。寝るのに快適な洞穴も探せば直ぐに見つかるから、
ひとりでも生きてはいけるだろうが……」
「にゃあんか心配にゃのにゃ。やっぱ引き留めておけば良かったにゃあ」
「もしお望みなら保守空間のほうで調べてもいいが?」
「探せるのにゃん?」
「ああ。オレ自身、実際にハニヤ殿と会っているからな。
当然、その情報はマザーにも記憶されている。
偽りの姿だったみたいだが、
オレの目をごまかせてもマザーの目はごまかせん。
手に入れた情報を元に、
本当の顔、容姿、性格など、
ありとあらゆる『個』のデータがもう既に判明している。
それらをにゃん丸の観測点『スバル』に伝えさえすれば、
必ず居場所を突きとめてくれる」
「にゃら頼むにゃん」
「でもさぁミアン君。
逢えたとして、それからどうするつもりなんだい?」
「どうするつもりって?」
「イオラの森で生きていけるように計らうのか?
それとも、
天外魔境に連れて行って、ふるさとに戻してやるのか?
それとも、
なにか他の案でも考えているのか?
とまぁこんなところかなぁ」
「それはウチが決めることじゃにゃい。
ハニヤにゃん自身にゃよ。
幼子とはいえ、
はっきりとした考えを持ち合わせている、
とウチは睨んでいるのにゃん」
「ふふっ。
そうやって気にかけていられるのも、
ハニヤんが生きていればこそ。
終わり良ければ全て良し。
滅びなくて良かったのたわぁん。
ミアンだって、ほっ、としているんでしょ?」
「うんにゃ。ミーにゃんのいう通りにゃ」
「ねぇミアン。ちょっと尋ねてもいいでありますかぁ?」
「にゃに? ミムカにゃん」
「ハニヤを滅ぼさなかったのは、
やっぱり、可愛いから、なのでありますかぁ?」
「それもあるのにゃけれどもぉ、
――ええと……ううん、どういえば……おっ、そうにゃん――
折角この世に生まれたのにゃもん。
にゃらば自分を主人公とした、
ハニヤにゃんらしい生き方をして欲しかったのにゃん」
「おぅっ!
ミムカもその意見に大大大賛成でありまぁす!」
「わたしもね」
「オレもだ」
「アタシもなのわん」
「私は……うん。そういうことにしておきますかね」
「そうだね。ボクもミアン君の意見に賛成」
……あっ、そうそう。いい忘れるところだった」
「にゃにをにゃ?」
「ミアン君。助けてくれてありがとう」
「そうだな。オレもいわないと。
ミアン殿。かたじけない。これこの通り」
ぺこり。
「ミアン、ありがとう」
「ミアン、ありがとうでありまぁす」
「ありがとう、ミアンさん」
「ミアン、ありがとうわん」
「にゃあにぃ」
ぽっ。
「――と顔が赤くにゃって――
困った時はお互いさまにゃん」
きらきらあぁぁん!
「あんたは…………預言の珠にゃん!」
「はい。『レン』です。
このたびは誠にありがとうございました。
ミアンさま。あなたこそ本物のアホです。
誰がなんといおうとわたしが認めます。
どうかその誇りを胸にこれからもご精進なさいますように。
ではこれにて」
「ちょいと待つのにゃん」
「はて? なにかご用で?」
「というほどのことでもにゃいのにゃけれども。
あんたと黒ネコのハニヤにゃんとは、
どんにゃ関わり合いがあるのにゃん?
そこんところを詳しく聴かせて欲しいのにゃけれども」
《一番悪いのはこいつかもにゃ、と疑った眼でもって、つづくのにゃん》