第百六十九話『黒ネコにゃんとミロネにゃん』
第百六十九話『黒ネコにゃんとミロネにゃん』
「黒ネコ殿。オレにしがみつかれても困るのだが」
「にゃあん」
すりすりぃ。
「まぁまぁ。
黒ネコんも甘えているみたいだし、
ここは一つ、つき合ってあげたらどうなのわん?」
「ウチもそれがいいと思うにゃ。
ミーにゃん同盟の八番目の仲間とにゃるかもしれにゃいしにゃ」
「そうかぁ。
では黒ネコ殿。ほんのわずかでいいなら」
「にゃん!」
「ミーにゃんミーにゃん。
ウチ、にゃあんか心配にゃのにゃけれども」
「アタシもなの。
しょうがない。
ここは一つ、気づかれないように、そぉっ、とあとをつけるのわん」
「うんにゃ」
「にゃん?」
「これか? これは瞑想といってな。
神経を研ぎ澄ませるには格好の代物さ。
そういえば、この前ミリア殿が」
「奇遇ですねぇ。実は私も瞑想が得意なのですよ。
支配者になった自分の姿に、
つい、うっとり、なぁんてこともあったりして」
「ミリア殿。それは妄想だ」
「なぁんてな」
「にゅにゅにゅ」
「前足を口に当てて笑っている……か。
なにはともあれ、楽しんでもらえてなによりだ」
「ミーにゃん。今の見たにゃん?」
「聴いてもいるわん。
あのミロネんが子ネコに気を遣っているのわん」
「でもにゃ。にゃんというか意外感がにゃいのにゃん。
良ぉく思い返してみれば、
ミロネにゃんって意外に、やさしいんじゃにゃいの?」
「あっ。そうかもしれないのわん」
「とにゃると、かにゃり魅力的にゃ存在かもにゃ」
「うん。それは頷けるのわん。
まだら模様の身体に、まだら模様の翅と、
一見、近寄り難い感じのする翅人型だけど、
しげしげと見つめてみれば、
顔立ちも容姿も女の子と見紛うくらい綺麗だもんね」
「眼もにゃ。
瞳は光沢輝く黒でも、右目が『薄青の地』、左目が『薄黄緑の地』という、
『オッドアイ』……にゃったっけ? ……にゃのも神秘的でいいにゃん」
「いいか。これから川の中に潜ってくるから。
……ってちょっと待て」
「にゃん?」
「水面に突き出ている岩の上をやたら、ぽんぽん、と飛んではいけない。
滑って落ちたらどう」
「にゃあにゃあにゃあ」
ふらふらふらふら。
「ほら、いわんこっちゃない。
すぐにそこへ行くからじっとして」
ちゃっぽん!
「ま、まずい!」
ずぼっ!
「――はぁはぁはぁ。
思いのほか流れが急だったが、
はぁはぁはぁ、なんとか助けてやれた――
どうだ? 黒ネコ殿。
ちゃんと呼吸出来るか? ケガはないか?」
「にゃん!」
「ふぅ。元気そうだな。やれやれだ」
「ミロネにゃん、お手柄にゃよぉ」
のっしのっしのっし。
「良くぞ救い出したのわぁん」
ぱたぱたぱた。
「ふたりとも見てたのか?」
「もろばっちしにゃん」
「アタシたちも飛び込もうとしたんだけどね。
邪魔しちゃ悪いかなぁ、なぁんて、あれこれ迷った挙句が、
ミロネんを信じて待ったのわん」
「うんにゃ。信じて良かったのにゃん」
「遠慮せずに助けても良かったと思うぞ」
「情けない話だが、
子供と一緒ではどうしても集中力が途切れがちとなる。
瞑想もしづらいし、なんといっても気が疲れる。
オレとしてはやはり、貴殿たちと遊ぶ以外はひとりがいい。
じゃあ、この子は返すよ。あとはよろしく。
黒ネコ殿。じゃあな」
ぱたぱたぱた。
「にゃあんかふらついた足取りにゃん」
「まるでさっきのミストんみたい」
「張り切りすぎたのかもしれにゃいにゃあ。
ところでミーにゃん。
黒ネコにゃんは?」
「ほら、あそこ。
また新しい生贄を捕まえたみたいなのわん」
「生贄ってにゃあ」
《お次は誰にゃん? と興味深々で、つづくのにゃん》