第百六十一話『入れ換わってしまったのにゃん』
第百六十一話『入れ換わってしまったのにゃん』
「穴の中にあったのはね。
『緑色をしたぐるぐる模様の大っきな円錐』二つだったのわん。
ミムカんったら一目見るなり、
『これは面白いモノに違いありませんです』って、
ぴぃぃん、ときたそうなの」
「森の精霊の中でも一番、改造好きだった、
シャナ様の造り子だけのことはあるわね」
「でもそれがなんなのかまでは、さっぱりのぱり。
なもんで、『なんでも造り隊』に持ち込んでみたんだって」
「やっぱそれが出てくるのにゃん」
「うん。まぁ掘り出しモノにかぎらず、
『これなに?』っていうものは、
ぜぇんぶ、あそこに持ち込まれるのわん」
「当然といえば当然ね。
だってあの方たちも、元はシャナ様のお手伝いをしていたから」
「とまぁそんなこんなで一緒に調べてはみたのですがぁ……、
外側を見ても、これまた、さっぱりのぱり、
なのでありましてですねぇ。
それじゃあ、ってことで、内部に入ろうとしましたですよ。はい。
まずは出入り口と思しき外壁を見ましたらですねぇ。
直ぐ横に赤いボタンが備えつけられていましてぇ。、
ひょっとして、と思って、ぷちっ、と押したところが、
これがまぁなんと、どんぴしゃ。正解だったのでありますよぉ。
扉がこう左右に分かれましてですねぇ。
なんの苦もなく、中に入れたのでありまぁす。
いやあ。誰かさんと違って、
『普段の行ないがいいとこういうことも起こるのですねぇ』なぁんて、
しみじみと感じ入った次第でありまぁす。
おぉっ、と。これはあくまでもこちらの話。
深く考え込まないでくださいませませぇ。
……とまぁ誤解を払拭したところでぇ。
話が脱線しそうなもんで、また元に戻しますですよぉ。はい。
これはしめた、とばかりに、マシン内をぐるりと見回したらですねぇ。
なんと、
まるでいたずら書きでもしたかように、内壁がに文字らしきもので、
びっしりと埋め尽くされているじゃありませんですかぁ。
『ここにマシンの秘密が記されているのに違いありませんです』
なぁんて、ぴぃぃん、ときちゃいましてですねぇ。
これら一字一句を『造り隊』ともに、
少しずつ解読していきましたですよぉ。
そんな苦労の甲斐あって、となるのか。
それとも、ムダな努力、で終わるのか。
見えぬ未来を前に、コツコツと作業に励んだ結果は……、
『うぉっ! やったぁ!』でありまぁす!
予想はものの見事に的中となりましたですよぉ。
『カカ』だってことも、
どうやって操作すればいいのかも、
次第に明らかになっていったのでありまぁす」
「なぁんてね。後半のほうは半ば興奮気味に喋りまくっていたのわん」
「ミーナちゃんったら、目をきらきらさせながら精霊の間に運んでね。
『これこれこういうものなのわぁん!』って、
肩をそびやかして自慢していたのよ」
「誰も知らにゃいのに自分は知っている。
このことに優越感を持つ者は多いのにゃん。
ミーにゃんもそのひとりってわけにゃん。
にゃあんかその無様にゃ様子が目に見えるようにゃん」
「それでね。『すっごいじゃない』って賞賛してあげたら、
自慢だけじゃなくって、
『実際に動かしてみせるわん』とまで豪語しちゃったの」
「うんにゃ。アホにゃん。それでこそミーにゃんにゃ」
「こらこら。どさくさ紛れに、なんてことをいうのわん?」
「にゃって褒められるたんびに、
どんどん鼻を高くしていったのにゃろ?
でもって、
どんどん自分の理解を超える行動へと進んでいったのにゃろ?」
「ま、まぁそういえないことも……」
「まさしくその通りね。
ワタシをマシンの一つに入らせて、
でもって自分はもう一つのマシンに入って」
「ふたり一緒にスイッチオン!
どちらのマシンにも内部に緑色のボタンが一つあってね。
ふたりとも押せば、マシンは作動する仕組みなのわん」
「にゃからといって本当にやらんでもにゃあ。
まぁミーにゃんらしいといえば、らしいのにゃけれども。
でもにゃあ。これは勇気というよりかは無謀にゃよ」
「今思えばアタシも、良くやったなぁ、とつくづく自分を褒め」
「てどうするのにゃん?
まぁやっちゃったもんを今更どうのこうのいうのもにゃあ。
詮にゃきことにゃん。
それよりも話の続きにゃ。押したらどうにゃったのにゃん?」
「ぶぅぅん、と音が鳴り響いてね。周囲が真っ白な光に覆われたのわん。
そしてそれが終わって元に戻った時には」
「ワタシとミーナちゃんは入れ換わってしまっていたの」
「イオラにゃん。
ちぃとばかしお尋ねしたき儀があるのにゃけれども」
「なぁにぃ?」
「霊体って要するに心が具現化したものにゃろ?
実体の身体を持つわけでもにゃいのに入れ換わるって、
どういうことにゃん?」
「ごっほん。
天空の村の定義に依ればね」
『霊体とは、意志ある一つの力を、
たくさんの意志なき力がまとわりつくことで生み出される生命体』
「もちろん、ここでいう力とは『霊力』に他ならないわ。
意志ある力は『核』と呼ばれ、意志なき力の集まりは『ガワ』と呼ばれる。
このガワ、つまり、心を容れる器を『身体』と解釈して欲しいの」
「にゃら今、イオラにゃんとミーにゃんの核は無事ってわけにゃん」
「そうだけれど?」
「にゃら、問題も困ることもにゃいのにゃん。
イオラにゃんは若返りたかったみたいにゃしぃ、
ミーにゃんはおとにゃの『綺麗』にあこがれていたのにゃもん。
双方、望みが叶ったじゃにゃい。
めでたしめでたし。一件落着にゃん。
――ふわああぁぁんにゃ。
大騒ぎするほどのことでもにゃかったにゃあ。
さてと。そろそろウチはおネムでもぉ――」
「させてたまるかなのわん!」
「どこが、めでたしめでたし、なのよ!
いぃい? ミアンちゃん。ガワが違うってことはね。
核が不安定な場所に位置しているってことなの。
いつ何時滅びを迎えてもおかしくないってことよ」
「ふぅぅん。そうにゃん」
「そうにゃんって……」
「イオラにゃん。
生まれいずる者はいつしか滅びを迎えるのにゃん。
じたばた騒ぐにゃって。
にゃるようににゃるもんにゃ。
にゃるようににゃらにゃいのにゃら、
にゃるようにあれこれと、もがいてみたらいいのにゃん。
それにゃけのことにゃ。
にゃら、お休みにゃあさい」
すうぅっ。すうぅっ。
《寝子を起こすにゃかれ、にゃもんで、つづくのにゃん》