第百五十七話『治療するのにゃん』
第百五十七話『治療するのにゃん』
「早速、治療に取りかからないといけないわね。
じゃあ、ミアンちゃん。
あの邪心に半分の光刃を突き刺してちょうだい。
それだけあればなんとかなると思うの。
本当は全部を、といいたいところなのだけれど、
目標を見失っては元も子もないものね」
「半分の数とはいっても光刃にゃろ?
んにゃことをしたら邪心が粉々に吹っ飛んで、
霊体自体にも被害をもたらすんじゃにゃあい?」
「ミアンちゃん。霊力というものはね。
使う者の心次第でどうにでもなるの。
相手を傷つけるのにも、力を与えるのにも使える。
ミアンちゃんが『治してあげたいにゃあ』と望んで使えば」
「本当の本当に治せるのにゃん?」
「そうよ。
さぁお喋りはここまで。ミアンちゃん、やってみて」
「うんにゃ。にゃらいくにゃよぉ!」
ぷすっ。ぷすっ。ぷすっ。ぷすっ。…………。
「突き刺すことは突き刺したのにゃけれどもぉ。
にゃあ、イオラにゃん。このあとはどうするのにゃん?」
「そうね。浄化呪法でも使おうかしら。
汚染されたものだけではなく、
邪霊の念すらも浄化する力のあるものを。
とすると……、やっぱりアレかしら」
「にゃんにしてもにゃ。効果がにゃければ意味がにゃいんよ」
「その点は大丈夫。
ワタシの目からしても、この手の呪の中では上位に位置する部類。
『呪術師』なぁんて呼ばれる人間からすれば、
最上級と目される強力な浄化呪法なの。
邪心が、たとえ核まで造られていたとしても、『はい、ご愁傷さま』
あっという間に消えちゃうわ」
「どうやって使うのにゃん?」
「方法は簡単。ミアンちゃんが呪の名前を叫べばいいのよ」
「ふにゃっ。たったそれにゃけ?」
「ええ。それだけで発動するわ。
知っての通り、今のミアンちゃんの命にはね。
ワタシがあげたワタシ自身の命の欠片も含まれているの。
それは取りも直さず、ワタシの力が使えるってこと。
普段はリミット、
――気取らなくてもいっか――
あっはん。
制限をかけているから、
たいした力は使えないのだけれど。
でも今回は別。既に解除してあるわ。
さぁミアンちゃん。
女は度胸。男は愛嬌」
「それって逆じゃにゃい?」
「逆もまた真なり、ってことで、
張り切っていってみよう!」
「ノリノリにゃん。
まっ、張り切るのはいいのにゃけれども、
その前に、呪の名前を教えて欲しいのにゃん」
「あら? いわなかったかしら?」
「うんにゃ。聴いていにゃいにゃよ」
「そぉ。やっぱりあれかしら。更年期だから……はっ!
ううん。そんなことなんてない!
あろうはずがないわっ!」
「あのにゃあ。
あってもにゃくてもどっちでもいいから、早く教えてにゃん」
「とまぁそんにゃこんにゃでにゃあ、オメにゃん。
邪心の核は、めでたく消滅したのにゃん」
「へぇ。そんな理由があったんだぁ。
しかも治っているだなんてぇ。ちょぉっと信じがたいようなぁ……」
「まぁまぁ。百の言葉よりも一つの行動にゃん。
ここは一つダマされたと思ってにゃ。
三連太陽の姿に戻ってみたらどうにゃん?
「そぉ? ならやってみようかなぁ。
アル。ラム。おたくらも協力してよね」
「まぁやれというなら」
「やってもかまわないけど」
「じゃあ、早速」
「んなことがあったんだ。
それでそれで? 太陽は本当に治ったのわん?」
「結果は上々にゃん。
やっぱアレを取り除いたのが効いたのにゃろうにゃあ。
三にんも仲良しに戻ったみたいにゃ。
揃って『ありがとうございました』と、
お礼をいってくれたのにゃもん」
「なもんでミアンは、
『困った時はお互いさまにゃよ』って返事したのわん?」
「にゃ、にゃんと!
どうしてそんにゃことが判るのにゃん?」
「だってミアンの口癖だもん」
「にゃったっけ?」
「ふふっ。そっかぁ。自分では気がつかないものなのかもねぇ。
まぁいいわん。めでたし、めでたし、で終わったんだから。
と、そういえば……」
きょろきょろ。
「どうしたのにゃん?」
「お喋り好きなイオラはどうしたのわん?
一向に姿が見えないんだけどぉ」
「多分、フィーネにゃんのとこにゃ。
お茶を飲んで長居するにはにゃ。
どうしても話ネタがいろいろと必要にゃんにゃと。
にゃもんで今回の件は、願ったりかにゃたり、にゃったようにゃ。
大喜びで大はしゃぎの挙句が、『じゃあまたあとで』の言葉を残して、
ウチの心からさっさと消えてしまったのにゃもん」
「ふふっ。それって、いかにもイオラらしいのわん」
《お話を終える前に、ここでちょいとひと休みにゃん》
「ねぇ、ミアン。ここだけの話なんだけどぉ」
「にゃに?」
「コノお話で使った呪って、ひょっとしたら」
「そうにゃ。アノお話でも使われた呪にゃん」
「やっぱり。
だったら、今ここで唱えてみない?
『ありとあらゆる命が浄化されますように』との願いを込めて」
「うんにゃ。それもいいにゃん。
にゃら、ミーにゃん」
「うん。それじゃあ、いっくよぉ!
せぇのぉっ!」
『「滅羅」ぁっ!』
《ちょいとひと休みも今回のお話もこれで幕。ありがとうにゃん》