第百五十四話『太陽もキレるのにゃん』
第百五十四話『太陽もキレるのにゃん』
「もしもし。お邪魔してもいいのにゃん?」
「はい、どうぞ、って……あっ! ネコが!」
「ごめんにゃ。驚かしてしまって。
ウチはミアン。化けネコにゃん」
「ふぅぅん。近年まれに見る珍客だねぇ。
……にしても化けネコとはねぇ。道理で霊覚交信が使えるわけだ」
「こっちも、へぇ、といいたくにゃるのにゃん。
にゃって、どこもかしくも真っ黄っ黄にゃもん」
「そりゃあ黄色くもなるさ。
三連太陽の一つを担っている『第三精霊黄色オメ』っていうのが、
なにを隠そう、あたしさまなんだから。
まっそれはそれとしてさ。
ねぇねぇ。化けネコになるとみんな、
そうやって太陽の中にまで入れるのかい?」
「みんにゃではにゃい。
ウチにゃって特使として任せられたから来れたのにゃんよ」
「特使ってどこの?」
「ほら。あそこにゃん」
「あぁあ。地霊の、ええと、なんていったけ?」
「ひょっとして、ガムラにゃん?」
「そうそう。それよ、それ。
ふぅぅん。
じゃあ、おたく、ガムラが支配する島のネコなんだ」
「うんにゃ。孤島の名前は天空の村。
ウチはそん中の『イオラの森』に棲んでいるのにゃん」
「ふふっ。ここも天空だけどねぇ」
「あの島に居るのかぁ。じゃあ、大変だねぇ。
はるか上空とはいえ、あれだけ、バジバジ、やってんだ。
被害に遭わずにはいられないよねぇ」
「そうにゃんよ。にゃもんでにゃんとかにゃらにゃいかと思ってにゃ」
「なぁるほどね。だけど、どうにもならないんじゃないかなぁ」
「んにゃ簡単に結論づけられても困るのにゃけれども」
「だろうねぇ。ふふっ」
「にゃあ、オメにゃん」
「あっ。あたしさまの名前を知ってんだ。なんか嬉しいなぁ」
「アルにゃんも、ラムにゃんもにゃ。
にゃあ。あのふたりのケンカって、
どうしたら、やめさせられるのにゃん?」
「仲直りさせるのが一番。
でもね。残念ながら、
『あたしさまのために争わないでぇ』
のケンカじゃないのさ。
でもって、いっくら口をすっぱくいっても、ぜぇんぜぇんなんだ。
もうあきらめちゃった。あとは野となれ山となれ、だね」
「ずいぶんと投げやり気味じゃにゃいの。
そもそもにゃ。にゃんでケンカにゃんぞおっ始めたのにゃん?」
「理由は簡単だよ。
あたしさまたち、三連太陽っていうのはね。
霊力を循環させることで光を放ち続けているのさ。
あたしさまはラムに、
ラムはアルに、
アルはあたしさまに、って具合にね。
それぞれの星で消費と増幅が絶えず繰り返されているもんで、
均等バランスがとれた霊力配分となるってわけ。
放たれる光も同じ輝きを保てるって寸法さ」
「にゃあるほろ」
「ところがね。どういうわけか、ここ最近ラムの様子が変なんだよ」
「変というと、どんにゃ?」
「アルがいうにはね。力を出し惜しみしているんだって」
「ねぇ。アル。こんなことをいうのはなんなのだけどさぁ。
、最近、くれる力が足りないんじゃない?
判っているとは思うけど、
三連太陽を成しているあたしさまたち三つの星は一蓮托生。
それぞれが支え合わなければ生きてはいけないんだ。
おたくからいつも通りの力をもらえなければ、
あたしさまは自分の蓄えを消費しなければならず、
それが続けば、やがては滅びを迎えるしかない。
あたしさまからの供給が途絶えれば、ラムも滅び、
ラムが滅びれば、とどのつまりはおたくも滅びる。違うかい?」
「そんなこと、あらためていわれなくったって百も承知だ」
「なら、どうしてさ?」
「文句があるなら、ラムの奴にいってくれ。自分の消費は変わらん癖に、
こっちに回す分は明らかに減らしている。
もちろん、いざという時のために蓄えが必要なのは誰しも同じだ。
しかし、だからといってここまで減らされちゃあな。
オレさまだってたまらない。
足りない分を自分の蓄えを削って補うのはこっちも同じなんだ」
「そうだったのかい……。
許しておくれよ、アル。
てっきり、出し惜しみしているのは、おたくとばかり思っていたんだ。
――まさかラムがねぇ――
ねぇ、ラム。どうして」
「うるさい!」
「うるさいって……」
「やめな。こいつ意固地になっていやがるんだ」
「あれまぁ」
「こいつにいわせると、いつも通りなんだそうだ。
消費と増幅を行なって、余った力はほとんどこっちに回しているんだと」
「でもそれだったら」
「力が足りなくなるはずがない。
そう思って問いつめて問いつめて問いつめたところが……、
こんな風に無口になっちまいやがった。もう手がつけられやしない」
「とまぁそんなこんなで話し合いもなにもありゃしない。
業を煮やしたアルは、とうとうキレちゃってね。
あとは、ほら、ご覧の通りだよ。
勝手に三連のリンクをぶっちぎってさ。
ラムと仲良くケンカごっこをおっ始めたんだ」
「アルにゃんって短気にゃお方にゃの?」
「そうでもないね」
「にゃってキレたのにゃろ?」
「キレるように、けしかけられたからさ」
「誰ににゃん?」
「おたくがお邪魔している太陽だよ」
「あんたが? にゃんでそんにゃことを?」
「決まっているじゃない。あたしさまがキレたからだよ」
「どうしようもにゃあ」
《開いた口が塞がらにゃい、とばかりに、つづくのにゃん》