第百四十五話『寝ぼすけ、って誰にゃん』
第百四十五話『寝ぼすけ、って誰にゃん』
ぱたぱたぱた。
「んもう、ミアンったらぁっ。一体どこに行ったのわぁん」
きょろきょろ。
「いっつも寝ぼすけの癖にさ。
こっちがたまぁにのんびりと起きたら、もう出かけちゃったなんて。
どうにも身勝手すぎるわん。気まますぎるのわん」
すたすたすた。
「それがネコってもんじゃないの? ミーナ君」
「あっ、ミクリん。お早う」
「うん。お早う」
ぱたぱたぱた。
「お早うございますでぇす」
すたすたすた。
「お早うございます」
「お早う……って、うわん。
呑気に朝のあいさつをしている場合じゃないわん。
朝っぱらからミムカんとミリアんが一緒なのわん。
なんで? どうして?
とぉっても気になるのわん。是非とも聴かせて欲しいのわぁん」
「実はいろいろとありましてですねぇ」
「そうなんですよ。いろいろありすぎまして。
とどのつまりが、綺麗さっぱりなんにも覚えていないという」
「摩訶不思議な体験をしたのでありまぁす」
「なにいってんのか、さっぱりのぱり、なのわん」
「当然でありまぁす。
話をしている当のミムカたちでさえ判りませんですのにぃ。
聴いている相手が判ったら、大変なのでありまぁす」
「ミーナさん。ファンタジーとは理解するものではありません。
感じるものなのです」
「んなこといったらぁ」
「のんのん。
ミリア。あえて忠告させて頂きますですがぁ、
『それをいったらおしまい発言』は慎んだほうが無難でありまぁす」
「ミムカん。そこ、アタシが喋るとこだから」
「ずいぶんと意味不明なお喋りをしているな」
「あれっ? いつの間にかいらっしゃいましたですねぇ」
「お早う、ミロネん」
「ああ。お早う、ミーナ殿」
「おや?」
きょろきょろ。
「うん? どうした?」
「ミストんは?」
「彼女なら、ここ『遊び場』には居ない。
ミアン殿と一緒に『幸せの苗木』を探索中だ」
「えっ。ミアンと?」
「なぁんだ。知らなかったのか?」
「ぜぇんぜぇん」
ぶんぶん。
「そうか。まだ日の出前のことだから、知らなくって当たり前か」
「一体なにがあったのわん?」
「オレも薬園に向かうところだ。
もし貴殿も来る気があるなら、道々、話したいが」
「――そうか。薬園に居たんだ――
うん。もちろん、なのわん」
「ええとぉ。
ミムカたちはダメでありますかぁ?」
「喜んで歓迎する」
「ミーにゃん!」
「ミアン!」
ぱたぱたぱた。
「やあっと逢えたのわん。
お早う、ミアン」
「お早うにゃん。
ごめんにゃ、ミーにゃん。直ぐに帰るつもりにゃったのにゃよ。
でもにゃ。つい手間取ってしまって」
「ううん。謝らなくたっていいわん。
それでそれで? 今なにをやっているのわん?」
「それがにゃ」
「わたしと出逢ったのが、身の不運、ってとこかしら。
『ちょうど良かったわ。村の平和のためにつき合ってくれない?』
まさか、このひとことでミアンの運命に転機が訪れようとは。
さしものわたしでさえ、気がつかなかったわ」
「ミストん。転機って、ミアンの身になにかあったのわん?」
「さぁ」
「さぁ、って、たった今」
「つき合ってくれたことを、意味深な言葉に置き換えただけよ。
他意はないから気にしなくても……うん?
――そういえば、なにかいわなきゃならないことがぁ。
……あっ、そうそう。朝のごあいさつがまだだったわ――
お早う、ミーナ」
「えっ。
ええとぉ、あのぉ、そのぉ、なんというかぁ。
とにかく、まぁお早う、ミストん」
「ふふっ。しどろもどろね。してやったりかしら」
《喋っている最中の『想い出し』はやめてにゃん、と、つづくのにゃん》