第百四十三話『あれこれ話パート23にゃん』
第百四十三話『あれこれ話パート23にゃん』
《今回は長めの2話のみ。ガマンしてにゃ》
「ミーにゃんミーにゃん」
「なにわんなにわん」
「ミーにゃんって、イオラの森のお姫さまにゃろ?」
「まぁ恥ずかしながら、そうなのわん」
「一般に、『お姫さま』と聴くとにゃ。
『にゃに不自由のにゃい気楽にゃご身分のお方』
にゃあんてイメージが強いのにゃけれども」
「そうなの。偏見に満ちているのわん」
「でもにゃ。本当は誰も知らにゃいところで、
いろいろとまぁご苦労にゃさっているのにゃん」
「そうなの。さっすがはミアン。なんでもお見通しなのわん。
アタシの親友だけのことはあるのわん」
「そこでにゃ。今こそ世間に吹聴されるどうしようもにゃい偏見を、
すぱぁっ! と一刀両断の元に正したいと思うのにゃよ。
にゃもんで、ここは一つ、ミーにゃんに語ってもらいたいのにゃん」
「語る? はて? なにを喋ればいいというのわん?」
「にゃから、誰も知らにゃいミーにゃんの苦労話にゃ」
「えっ、アタシの?」
「にゃんでもいいのにゃ。
すらすらぁっ、と頭に浮かぶもんで十分にゃのにゃん」
「と急にいわれてもねぇ。
――ふぅぅむ。苦労かぁ――」
「考え込まにゃくてもいいのにゃよ。
今もいった通り、
本当に本当、すらすらぁっ、と頭に浮かぶもんにゃけで」
「こらぁっ。静かにするのわん。
――んなもんしたことあったっけぇ?
ふぅぅむ。コレじゃないしぃ。かといって、アレでもぉ――」
「ミーにゃん? あにょぉ、ミーにゃん?」
「――難問なのわぁん。果たして答えが見つかるかどうかぁ――
はっ!」
「どうしたのにゃ? 目を大きく見開いたりにゃんかして」
「あったわん。アタシにもあったのわん」
「おおっ。想い出してくれたのにゃん。
それでそれで? どんにゃ苦労にゃん?」
「今よ、今。
こうやってさ。
無理な質問にも答えを返さなきゃならない自分が苦痛なのわん」
《あのにゃあ》
『にゃおおぉぉん!』
うわぁい! うわぁい!
「こらこら。
地中ネコ同士でケンカするのは……」
「どうしたのでちゅかぁ? ミクリちゃん。
急に黙りこんでしまわれて」
「ミアン君だ! ミアン君に間違いない!」
たったったっ……びゅうぅぅん!
「だからですね。
おとなしく『がんばれ同好会』に入ってくださればそれで」
「だからですねぇ。
イヤだっていうのでありまぁす!」
「ふぅ。やれやれ。
ミムカさんったら、まるで駄々っ子みたいに」
「イヤなものをイヤといって、なにが悪いのでありますかぁ」
「世の中にはイヤなことであっても、
やらなきゃならないことがあるんじゃないでしょうか?」
「そういう問題では……うぉっ!」
「ミムカさん。困難から逃げちゃダメ……あっ!」
「今のはミアンでありますよねぇ」
「そうです。ミアンさんです」
「なら、急ぐでありまぁす」
「はい。急ぎましょう」
ぱたぱたぱた……びゅうぅぅん!
たったったっ……びゅうぅぅん!
「ふぅ。これでやっと半分かぁ」
「ドナ。泣き言はいわないの。
ほとんどが建物の創作品なんだから、どうしたって手間取るわ」
「判ってはいるのよ。いるんだけどねぇ」
「あらあら。しょうがないわね。
じゃあ、ここらへんに散らばっている『ぷよぷよ』がれきを撤去したら、
ひと休みでもしてみる?」
「賛成。これ以上続けたら、心も身体も持たないもの」
「気をつけなさい。それってリーダーのセリフじゃ……あら」
「どうしたの? ミスト」
「ミアンが呼んでいるの。ワタシを」
「とかなんとかいっちゃってぇ。
ここから逃げ出そうたって、そうは……んぐっ!」
「おだまり。
――とかなんとかって、手で口を塞いだのはいいとして。
あれはまさしくミアン。
となれば、こうしちゃいられないわ――
ドナ、ちょっと外の世界に出かけてくるから」
「ちょっと待ってよ。
ここはどうするの? わたくしはどうなるのよぉ」
「決まっているじゃない」
「なに?」
ぱたぱたぱた。
「あとは任せたわ」
ぱたぱたぱた……びゅうぅぅん!
「ちょ、ちょっとぉっ! ミストったらぁ!」
「もしもし。
ミロネ、起きてください。たった今ミアン殿が」
ぱちくり。
「……呼んでいる。ならば、オレも行かねば」
すくっ。しゃきっ。
「レミロ、じゃあな」
「ミアン殿によろしく」
「ああ。判っているさ」
つかつかつか……たったったっ……びゅうぅぅん!
「ねぇ、イオラ。ミアンったらね。
またこりもせずに、
湖『彩花』の主に闘いを挑んだのわん」
「ふふっ。大魚バロンちゃんね。
もうこうなると、日常茶飯事といってもいいんじゃないかしら」
「負けちゃうのもね。向こうもあきれちゃったみたいで、
『もう二度と、そのアホネコをよこすな』って注意されたわん」
「あらあら」
「でもぉ、ちょぉっと不思議なのわん」
「不思議?」
「あきれていることはあきれているんだけどね。
顔も言葉も、なぁんか楽しそうなのわん」
「へぇ。
ひょっとしたら、バロンちゃんも嬉しいんじゃないかしら。
ミアンちゃんみたいに、
積極的に近づいてくる相手なんて今まで誰も居なかったから」
「楽しんでいるのはミアンも一緒かもしれないのわん。
だってさ。下手すりゃ食われちゃうっていうのに、
いっつも真正面から向かっていくの。
『ウチの力で押し返してやるのにゃん!』って意気盛んによ。
まっ全戦全敗なんだけどね。
今のミアンを見て、つくづく思うわん。
もう最初の頃みたいに、食べる気まんまん、じゃなくなっているって」
「ミアンちゃんもすっかりこの森に溶け込んできたってことかしら。
……あら?」
「かもしれな……はっ!
イオラ、ミアンの言霊なのわん!」
「呼んでいるわ。ワタシたちを。
どうするの? ミーナちゃん」
「んなの、聴くまでもないわん」
「そうね。だったら、急いで駆けつけましょうか」
「うん!」
ぱたぱたぱた……びゅうぅぅん!
ぱたぱたぱた……びゅうぅぅん!
《呼べば応えてくれる。みんにゃ、やさしいのにゃん》