第百四十二話『これって、とばっちりにゃん』
第百四十二話『これって、とばっちりにゃん』
「始まりがあるものには終わりもありますですよぉ」
「まぁにゃ」
「でもって、出逢いがあるからこそ別れもあるわけでしてぇ」
「アタシもそれは否定しないわん。
けどぉ。
アタシはミアンと、ずぅっ、と一緒に居たいわん。
ううん。ずぅっ、と一緒に居るのわん。
だからね。『別れはない』としたいのわん」
「でもそれではミムカが困るのでありますよぉ」
「ミムカにゃんが？」
「どうしてなのわん？」
「それが……」
「ミムカさぁぁん！」
「ミリアにゃんにゃ」
「本当……って、あれっ？
ミムカん、どうしたのわん？
顔を両手で隠したりして」
「運命がきてしまったのでありまぁす」
「なぁんだ。こちらへいらしていたんですね。
んもう、あんまりじゃないですか。
今日は一日、私たちの将来について話し合おうって、
昨日ちゃんとふたりで決めたのにぃ」
「にゃんと！
ミムカにゃん。あんた、まさか」
「そこまで仲良しだったなんて。
さすがにアタシも見抜けなかったのわん」
「ち、違いますです。とんだ濡れ衣なのでありますよ」
「濡れ衣？
なにをいってるんです、ミムカさん。
私とちゃんと約束したじゃありませんかぁ」
「確かに約束はしました。しましたですがぁ……。
やむを得ずに、なのでしてぇ。いわば苦渋の決断なのですよぉ。
しつっこく追っ駆けてくるあなたを追っ払うには、
それしか手がなかったのでありまぁす」
「追っ払う？ 私を？
うそですよね？ ミムカさん。冗談ですよね？」
「ミリア、後生であります。
ミムカにつきまとうのは、もう金輪際おやめくださいませですぅっ」
「…………うふっ。そうかぁ。やっと判りましたよ」
「おぉ。判ってくれましたですかぁ？」
「はい。
照れていらっしゃるのですね？ ミムカさんは。
だから、それを隠そうとして、
心にもないことをお喋りになられている」
「ちょ、ちょっとお待ちくださいませです。なにわけの判らないことを」
「ああでも、心配なさらずとも大丈夫ですよ。
ミムカさんの真意を見抜けないほど、私はおろかではないつもりです。
どんな言葉を耳にしようとも、
あなたへの信頼が揺らぐことなど決してありません。
こうしていつでもおそばにおります。はい」
「うおぉっ！
なんという悲劇でありましょうかぁ。
コレコレ、コレでありますよぉ、ミアン。
終わりでも別れでも、どちらでも構いませんので、
この引っつき虫ををどうにかしてくれませんですかぁ？」
「と泣きつかれてもにゃあ」
「世の中には出来ることと出来ないことがあるのわん。
でもってこれは出来ないこと……っていいたいところだけど」
「えっ」
「でも一つだけ出来ることがあるのわん」
「な、な、な、なんでありますかぁ？」
「あきらめるのわん。
今、自分でもいったように、
『これも運命』とあきらめてしまえば、自ずと道も開けるのわん。
なぁにぃ。慣れてしまえばどうってこと」
「ありますですよぉ！
ネコごとだと思っているから、そんなことがいえるのでありまぁす」
「ネコごとだもん」
「ムカぁっ！
もう頭にきました。
だったら、ミリアを差し上げますですから、
代わりにミアンをミムカにくださいませです。
お互いの立場を入れ換えることで、
相手の気持ちが、ひしひし、と伝わってくるはずでありまぁす」
「ア、アタシのミアンを！
な、なにいってんのわん？ 頭でもおかしくなったのわん？
ミアンは誰にも渡さないのわん。渡してたまるかぁ、なのわん！」
「いいえ。渡してもらいますです。
今日からミアンはミムカのものとなるのでありまぁす！」
「なにをぉ！
ミムカん、
アタシを怒らせたいのわん！
アタシとやる気なのわぁん！」
「望むところでありまぁす。
ミーナ、受けて立ちますですよぉ！」
ばじばじばじっ！ ばじばじばじっ！
はらはらはら。はらはらはら。
「（なんてことでしょう。どちらも目から火花まで散らして……）
やめてぇ！
お願いです。仲の良いふたりが私のために争わないでぇ！」
「――両手を絡めて哀願とはにゃあ――
にゃあ、ミリアにゃん。
あんた、いつの間に、『ヒロイン』とにゃったのにゃん？」
「それが宿命なのです。私の」
「まっネコにはどうでもいいことにゃん。
ふわああぁぁんにゃああぁぁ。
にゃあんかそろそろまぶたが重くぅ……」
『どさくさ紛れに、おネムるなぁ！』
《終わりそうもにゃいもんで、これにて『終わり』とするのにゃん》
