第十四話『パラレルにゃウチにゃん』
第十四話『パラレルにゃウチにゃん』
「ううっ…………ふわああぁぁんにゃ」
「ふぅ。ミアンがやっと目を覚ましたのわん」
「うん?」
くるっ。
「ミーにゃん…………。
ふわああぁぁんにゃ。ミーにゃん、お早うにゃん」
「ミアン。もう今は昼半……じゃないか。ちょい手前ぐらいの時刻なのわん」
「昼半といえば昼と夜の間……おっ。
そうにゃそうにゃ。ウチはお昼寝をしていたのにゃん」
「たっぷりとね。おかげで大変だったのわん」
「にゃにかあったのにゃん?」
「ついて来れば判るわん」
「ここわん」
「ここって……。にゃんにゃの? アレ?
精霊の間に、こんにゃ壁にゃんてあったっけ?」
「ないわん。緊急的に空間隔離を行なったのわん」
「隔離? でもどうしてにゃん?」
「ほら、ここに覗き窓を造ってあるから。
自分の目で確認するといいわん」
「まぁミーにゃんがそういうにゃら。
どれどれぇ」
「一体ミーにゃんはどこに行ったのにゃん!」
「ウチをこんにゃところに押し込めてぇ。一体にゃにを考えているのにゃん!」
「にゃんにも考えていにゃいんじゃにゃいの。
っていうか、あんたは誰にゃん!」
「あんたこそ、誰にゃん?」
「お話中大変申しわけにゃい。ウチはミアンと申す者にゃん。
つかにゅことを尋ねるのにゃけれども、ミーにゃんはどこに居るのにゃん?」
「こらあっ。無理矢理身体を押しつけるにゃあ!」
「しょうがにゃいじゃにゃい。ここって狭いのにゃもん」
「にゃんか食べたくにゃったにゃあ」
「イオラにゃんの戸棚にケーキが一つ残っていた気がするのにゃん」
「にゃら、ウチが頂くのにゃん」
「残念でしたにゃ。とおぉっくにウチが有り難く頂戴しましたのにゃん」
「美味かったのにゃん?」
「大変微妙にゃ。美味しかったことは美味しかったのにゃけれども……。
早く食べればよいものをいつまでも残してあるから硬さが出てきてしまったのにゃん」
「それは残念。ついでにミーにゃんが居にゃいのも残念にゃん」「
「ミーにゃんを探しに行きたいのにゃけれども……。
ここって出口らしきものが一つもにゃいのにゃん」
「困ったにゃあ。にゃあ。一体どうすればいいのにゃん?」
「ウチに聴かれてもにゃ。
期待はごもっともにゃれど、所詮ウチはミアンでしかにゃいのにゃ」
「にゃんていうことを。ミアンはウチにゃん」
「いやいやウチこそミアンにゃ」
「にゃにを隠そう、本物はウチにゃ。ウチがミアンにゃ」
「ウチにゃって」「ウチにゃって」「ウチにゃって」……………………。
「ミーにゃん。にゃにこれ?
ウチが一杯にゃんよ」
「それがねぇ……ふぅ。
イオラがまたやらかしたのわん」
「にゃにを?」
「天外魔境のフィーネ先生のところへ行ってね」
「またあそこに行ったのにゃん?
イオラにゃんてフィーネ先生にゃんのことがよっぼど好きにゃのにゃあ」
「ことあるごとに自分の妹分だって吹聴しまくっているしね。
大大大だあぁい好きなのは間違いないと思うわん。
でもねぇ……だからといって迷惑をかけちゃいけないんじゃないかなぁ」
「一体にゃにをやったのにゃん?」
「それがすっごいの。こともあろうによ。
天外魔境のコントロールシステム機能を狂わせてしまったらしいのわん」
「ふにゃ。マイコにゃんを?」
「そういやあ、そんな名前で呼ばれてたっけ。
だったらアタシも、マイコん、と呼ぶことにする……って、
それどころじゃないわん!
イオラのおかげでね。マイコんが暴走しちゃったわのん」
「また先生にゃんの許可を得ずにいろいろといじくったのにゃん?」
「えっ。またってことは……」
「しょっちゅうにゃもん」
「そうなの? 知らなかったわん。
アタシ、あんまり天外魔境の分岐点には行ったことがないから」
「イオラにゃんにいわせるとにゃ。もっともぉっと連れて行きたいのにゃて。
でもにゃ」
「説明無用なのわん。行ったことがあるから骨身に沁みて判っているのわん。
……骨身じゃないけどね。まぁそれくらいに、ってこと。
今のアタシの身体と力じゃ、とてもじゃないけど、あそこには長く居られないもの」
「ミーにゃん。いつかまた三にんで行こうにゃん。
でもって、ちょくちょくお邪魔出来るようにもにゃろうにゃん」
「うん」
「ところで、と。
ミーにゃん。ウチが増えた理由にゃのにゃけれども」
「あっ。それそれ。
イオラったら、こともあろうにね。パラレルワールドに手を出しちゃったみたいなの」
「パラってアレにゃん。雨が降った時、差す奴にゃん」
「それはパラソル。……ああでも一字しか違っていないわん。すっごいわん」
「そんにゃことに感激されてもにゃ。
強引に上げるにゃら、
あられる。居られる。売られる。得られる。おられる。
ほら、頭一字を変えても一杯あるじゃにゃいの」
「本当ね。なんかすっごくなくなってきたのわん」
「と、がっかりさせたところで、話を戻したいのにゃけれども」
「えっ。……ああ、パラレルワールドのことね」
「それってウチらの解釈では、選択のたんびに世界が増えていくっていう奴にゃろう?」
「うん。でもって自分も増えていくのわん。……増えた世界の分だけね。
たとえば三つの選択肢A、B、Cに直面したとするわん。
で、自分はAを選択したとする。当然、自分はAの方向へと生きていくことになる。
ところがよ。それと同時に、
Bを選択した自分の世界、
Cを選択した自分の世界、なんかも列行する形で生まれちゃうの。
つまり、三にんの自分がそれぞれ別な方向へと生きていくってことになるんだけどぉ。
なぁんか考えれば考えるほど、ややっこしくなっちゃうのよねぇ。これって。
頭がこんがらがっちゃうのわん」
「ウチもお手上げにゃん。
にゃあ、ミーにゃん。あんまり突き詰めて考えるのはやめにしにゃい?
イオラにゃんがマイコにゃんを下手にいじくって暴走させた。
結果、パラレルワールドに異常が発生した。
にゃもんで、それぞれの世界に居るウチがここに集まってしまった。
それでいいじゃにゃい。それ以上考える必要がどこにあるというのにゃん?」
「そうね。ミアンのいう通りなのわん」
「……にしてもにゃ。
ミーにゃん。ウチが一杯いるこの状況ってにゃんとかにゃらにゃいのにゃん?」
「イオラの話に依ればね。マイコんの自動修復が完了次第、自然と消えるって」
「ほっ。それを聴いて安心」
どがどがどがどがどがっ! どがどがどがどがどがっ!
「ミ、ミーにゃん! 空間隔離がぁ!」
「ゆ、揺れているのわん。すっごく揺れているのわん」
「どういうことにゃん?
これってイオラにゃんが造ったのにゃろう?」
「違うわん。イオラが居なかったから、アタシが造ったのわん」
「にゃんと! ミーにゃんが!
にゃったら大変じゃにゃいの。
ウチもミーにゃんも、イオラにゃんの命の欠片をもらっているのにゃよぉ。
にゃから行く着くところまで行けば、ウチらの力は互角にゃん。
ということはにゃ。
あれにゃけたくさんのウチが集まったのにゃら…………ふにゃん!」
ばっがああぁぁん!
「こ、壊れてしまったのわん…………きゃああぁぁっ!」
どがどがどがどがどがっ! どがどがどがどがどがっ!
「一斉にやってきたのにゃああぁぁん!」
『ミーにゃああぁぁん! 逢いたかったのにゃよぉっ!』
「きゃああぁぁっ!」
「ふぅ。なんとか修復出来たみたいね」
「今回はかろうじて無事に済みましたが……。
イオラお姉様」
「みなまでいわなくてもちゃんと判っています。
これからは極力マイコちゃんの迷惑とならないように努めることを誓います」
「お姉様。
『これからはいかなることがあっても、
マイコちゃんを絶対にいじらない、迷惑をかけない、と誓います』
ぐらいには断言して頂かないと」
「はいはい。仰せの通りに努力します」
「不適正な返事です。『努力します』ではなく、『致します』として下さい。
努力では結果を問えません。
やってもやらなくてもいい、ということになってしまいますから」
「やれやれ。相変わらず厳しいのね、フィーネちゃんは。
それじゃあ、あらためて」
『仰せの通りに努力します』
「はい。大変良いご返事です。
……済みません、お姉様。つい調子に乗ってしまって」
「うふっ。いいのいいの。ワタシもそれ聴きたかったから。
さてと。ミーナちゃんとミアンちゃんは仲良くお留守番をしているのかしら。
そういえば、さっき、ミアンちゃんがわんさかと居たような……」
ぽちっ。
「お姉様。また勝手にマイコさんを」
「野暮はいいっこなし。自宅の安全を確認するだけよ。
……あら。ふたりとも口から泡を吹いて気絶しているわ」
「当たり前です。あれだけの数に襲いかかられたのですから」
「でも、襲われる寸前に、どのミアンちゃんも綺麗さっぱりと消せたじゃない。
ぎりぎりセーフよ」
「もっとマナコを大きく開いて、霊視を強めて、あのふたりの憐れなる姿をごらん下さい。
どこをどう見てもアウトです。お姉様」