第百三十三話『迫りくるモノはあきらめにゃいのにゃん』
第百三十三話『迫りくるモノはあきらめにゃいのにゃん』
「と、ここまでいえば判るよね?
強硬派が、全体から見ればどんなにわずかであっても、
膨大な数に昇る。仲間が多ければ、強気も増してくる。
自分たちだけでも、と考えるようになる。
行動へと発展していく、ってわけさ」
「頷かざるを得ないわね」
「おっ、ミストにゃん」
「水の精霊と懇意にしている手前、
水の妖精たちとも多かれ少なかれ、接触があるの。
地霊じゃないから、支配者なんて考えは持たないのだけど、
困りものは困りものなの。
『今の自分は本当の自分じゃない!』
なぁんてひとりでも気炎を上げたら、さぁ大変。
あちらこちらから賛同する連中が集まってきて、
途方もない群れを造り出すの。
それだけだって、こっちをびくつかせるっていうのに……ふぅ。
なにやらこそこそと、
あちらこちらで密談をおっ始まるのよねぇ。これが。
そりゃあもう、悪だくみをたくらんでいそうな気配がぷんぷん。
揃ってこっちを見つめながら、にやり、とされた時なんか、
ぞっ、としちゃった。
『触らぬ神に祟りなし』『君子危うきに近寄らず』
なぁんてことわざが次々と頭の中を駆け巡ってね。
『あっ、やば!』って思わず逃げ出しちゃていたくらい。
数は暴力、っていう言葉をしみじみと感じたわ」
「あのぉ、よろしいでしょうか?」
「おや? にゃんか声がするのにゃん。
ええと、どこからぁ……」
きょろきょろ。きょろきょろ。
「――にゃあんにゃ。穴の上から顔を出しているのにゃん――
どうしたのにゃ? ミリアにゃん。
にゃあんか、いつににゃく、おしとやかにゃのにゃけれども」
「済みません。妄想の力を借りないと、いっつも、こうでして。
ご不満もありましょうが、何卒、お許しくださいますよう」
「いんにゃ。ご不満にゃんて、これっぽっちもにゃいにゃよ。
いや、それどころか、
出来ることにゃら、いつまでもそのままで居て欲しいくらいにゃん」
「なんとも喜ばしい物言い。ご冗談とは判っていても嬉しいです」
「違うのにゃん。本気にゃのにゃん」
「またまたぁ…………おや?」
「どうしたのにゃん?」
「あのですね。
大変申しわけありませんが、本気で喋ってもよろしいでしょうか?」
「にゃにを?」
「来たみたいですよ。
じゃなくって、来ました。アレが」
「にゃ、にゃんと!」
どっがあぁん! ごろごろごろおぉっ!
どっがあぁん! ごろごろごろおぉっ!
「ミリア殿! 早く中へ!」
「は、はいっ!」
ひゅうっ……すたっ。
がばっ。
「大丈夫とは思うが、念のためだ。
みんなもミリア殿のように頭を抑えてしゃがんでくれぇっ!」
『はいっ!』
がばっ! がばっ! がばっ! がばっ! …………。
どっがあぁん! ごろごろごろおぉっ!
どっがあぁん! ごろごろごろおぉっ!
どっがあぁん! ごろごろごろおぉっ!
…………。
「立て続けにゃあぁん!」
「ミアン君、黙って。
声で気配を悟られちゃうかもしれないよ」
「にゃんぐっ」
しぃぃん。
「静かになりましたですねぇ」
「なら、早く出ませんか?
穴の中で縮こまっているのはどうにも好きになれません」
「ボクもだよ」
「わたしも。ちょっと悔しいけど、ミリアに賛成するわ」
「アタシだって。ミアンは?」
すうぅっ。すうぅっ。
「住めば都、してどうするのわん!」
「ミーナ。もうひとり居るみたい」
「えっ。……ミロネんも!」
すうぅっ。すうぅっ。
「しょうがない。ボクもつき合おうかな、と」
「だったら、アタシもひと休み……うわん!」
どっがあぁん! ごろごろごろおぉっ!
どっがあぁん! ごろごろごろおぉっ!
どっがあぁん! ごろごろごろおぉっ!
…………。
たったったったったっ!
「ダマされたのにゃああぁぁん!」
《にゃんで追い駆けてくるのにゃ、と愚痴りにゃがら、つづくのにゃん》