第十三話『アホを超えてしまったアホにゃん』
第十三話『アホを超えてしまったアホにゃん』
「ふふふっ。来たか、愚かものどもめ」
「奇っ怪獣バンバン君。君はなぁんにも判っていないんだねぇ」
「どういうことか?」
「ボクたちは泣く子も黙るミーにゃん同盟だよ。
ボクたちの姿を見るどころか、名前を聴いただけでも逃げ出す連中が大勢居るのさ」
「にゃあ、ミストにゃん。ミクリにゃんったら、あんにゃことをいっているのにゃん」
「逃げ出すのは構わないのだけど、その理由がねぇ。ふぅ。困ったものね」
「ミストがなにをいわんとしているのか、ミムカには判りますですよ。
つい最近もですね。どこかのお母さんがこっちを指差しながら、『あんなアホたちに近づいてアホが伝染ったらどうするの?』って子供に説教を垂れていましたですからねぇ」
「にゃあ、ミロネにゃん。
このことについてミロネにゃんのところではにゃんか情報をお持ちにゃん?」
「はなはだ不本意だが……、どうやら、ミーにゃん同盟=アホの同盟、との考えが、
ありとあらゆる命に定着されてしまったようだ。
こちらの姿を見るか見ないうちに行動を起こしているのを確認している。
逃げ出す輩も居れば、隅に隠れてひそひそ話をする輩も。
中には石をぶつける輩まで出てくる始末だ。困ったものだな」
「まぁまぁ。そんなに悲観する必要はないんじゃありませんか?
誰かの評価なんて、なにか一つ違うものが出てくれば、がらっ、と変わってしまう。
そういうものですよ。いちいちうろたえなくても、そのうち、なんとかなりますよ」
「なら、いいのだが」
「大丈夫です。預言者宗教団体の教祖である私がいうのですから間違いありません」
「ふぅ。だから、余計心配なの」
「ミストさん。それはどういう意味でしょうか?」
「これこれ。ウチらの間で喧嘩してどうするのにゃん?
それと、ミーにゃん」
「うん? なにわん?」
「さっきからにゃにやら考え込んでいるみたいにゃのにゃけれども……、
一体どうしたのにゃん?」
「いやあ……どこをどう見たら、『アホ』の評価が下されるのかなぁって。
ぜぇんぜぇん、身に覚えがないのわん。
ねぇ、みんなぁ。
ひょっとして……、
アタシが居ないところでさ。想像を絶するようなアホをやってんじゃない?」
「にゃってミロネにゃん」
「面白い。実に興味深い意見だ」
「本当本当。爆弾娘が良くいうわ」
「そこまで堂々といえるなんてぇ。やっぱり、ミーナはエライでありますねぇ」
「私もそこまではいえませんねぇ」
「それって……、当然、褒めているのよね? 違うわん?」
「ミーにゃん、あんたにゃあ……」
どががぁぁん!
「ま、まさにアホ力……」
ばっががあぁぁん!
「残念だったね。バンバン君。魂を込めた拳の一撃に敵う者なんていないのさ」
くるっ。
「終わったよ、みんな」
「アホわん。けどぉ……」
「うんにゃ。アホにゃけど……」
「そうね。アホだけど……」
「アホではありますけどぉ……」
「アホには違いありません。ですが」
「格好いい……か。いや、格好良すぎだな。あれは。
断末魔の光芒を背にこちらへ向かってくるあの姿。
不敵な笑みを浮かべているあの顔。
もはやアホかどうかなどという次元を飛び越え、
ううん、なんといったらいいのか……そうだ。
猛々しくも、凛とした風格を備えた戦士と化してしまっているのだから」