第百二十八話『ピザの末路は、ぺろり、にゃん』
第百二十八話『ピザの末路は、ぺろり、にゃん』
「数ある壁を越えたら、そこはにゃんと」
「巨大なピザが鎮座していたのわん」
「ウチらを待っていてくれてありがとうにゃん。
にゃら早速」
「待て待て待て待てぇい!」
ぴたぴたぴた……ぴたぴたぴたっ。
「にゃあるほろう。
ぐにゃぐにゃ歩いていたら、時間がかかってしょうがにゃい。
間に合わにゃい。にゃもんで」
「身体をばらばらにして飛んできたのわん。
なかなか考えているじゃない。ミアンも見習いなさいね」
「うっ……ミーにゃんもにゃ」
「うっ」
「ふぅ。なんとか間に合ったのじゃん。
やい! アホウども」
「ねぇ、ミアン。アホウどもだってさ」
「こっちもばれてしまっていたのにゃん」
「なんで判っちゃうのわん?」
「ひょっとしたら……、
自然放出される霊波とは別に、それとにゃくそんにゃ感じのオーラが、
ウチらから発生しているのかもしれにゃいのにゃあ」
「ふぅ。やっぱダメかぁ。生まれながらのこういうもんって、
隠そうとしても、隠し切れないのわん」
「いいんじゃにゃいの。隠さにゃくたって。
ありのままの自分をさらけ出して見つめ直して。
そこから始まるのにゃもん。新しい自分への第一歩が」
「うん。今はアホでも、
心がけや努力次第でどうにでも変わっていくのわん。
なにしろ、アタシたち幼児の『若さ』には、
神にも匹敵する力が秘められているんだから」
「ミーにゃん。今のセリフ、イオラにゃんの前ではご法度にゃよ」
「重々承知なのわん。『歳』に関する話題は『×』だって」
「おい。小声でなにを喋り合っているのか知らんが、
今度こそ、お前らの霊力を根こそぎ奪ってやるのじゃん」
「どうやってにゃん?」
「いわば物量作戦じゃん。
お前らが『丸っこいもん』と呼んでいた、あっしの仲間、
『ねばねばチーズつきのサラミ』どもを総動員するのじゃん。
奴らを一斉に飛びかからせれば、けっけっけ、
ひとたまりもあるまいのじゃん」
「そうかなぁ。だってミアンみたいに食べちゃえば」
「むろん、噛み切られでもしたら、ただのサラミとなってしまうが、
それでもかなりの数が引っつき、霊力を吸い上げるはず。
お前たちにとどめを刺すのじゃん。
けっけっけっ。どうだ、参ったか。
あっしらの勝利が揺らぐことなど、あり得ようはずもないのじゃん」
「じゃんにゃん。長々とご説明ありがとうにゃん。
おかげでこちらの準備も整ったのにゃん」
「準備だと? 一体なにをいっているのじゃん」
「じゃん。後ろを、ピザを見れば、直ぐに判るのわん」
「後ろ?」
くるっ。
「ああああああぁぁぁぁぁ!
な、なんだ、こいつらは!」
「こいつらは、ごあいさつだねぇ。
ボクはミクリ。地中ネコだよ。仲間もほら、こんなに連れてきたんだ」
ぞろぞろぞろ。ぞろぞろぞろ。
「ど、どうしてここに……」
「ボクの友だちに霊覚交信でお呼ばれさ。
『お食事会を催すもんで、
仲間ともどもご招待するのにゃん』ってね」
「ま、まさかぁ」
くるっ。
「ウチにゃん。やっぱ大勢で食べるほうが美味しいのにゃもん」
「アタシも、一も二もなく頷くのわん」
「おぉい、ミクリにゃあん。
丸っこいもんが引っついてくるとは思うのにゃけれどもぉ、
心配しにゃくてもいいにゃあん。
噛み切るにゃけでにゃあ、おとにゃしく食べられてくれるのにゃあん」
「へぇ。なんか面白そうだねぇ。
美味しそうな匂いも漂ってくるしさぁ。ねぇ、もういいだろぉう?
早く食べさせてくれよぉ」
「なら、ごっほん。
長らくお待たせしましたのわん。
さぁ。ミクリんたちぃ。
遠慮はいらないからやっておしまいなのわぁん!」
おうっ!
ぱくぱく。もぐもぐ。
「待て、待つんだ! 早まるなぁ!」
ぱぱぱぱぱっ!
「見てよ、ミアン。じゃんがまた分離してピザに向かっていったのわん」
「仲間と協力して最後の最後まであがこうとしているのにゃん」
「敵ながらあっぱれな心がけなのわん。
だったらアタシたちもさ。ミクリんに協力して」
「お食事といこうにゃん!」
「うん!」
たったったったったっ!
ぱたぱたぱたぱたぱた!
ぱくぱく。もぐもぐ。
「美味いのにゃ、美味いのにゃん」
「本当本当。やたらと大きいこともあって、
味についてはそれほど期待していなかったんだけどね。
結構イケる味じゃない。これならいいわん。
丸っこいもんも、本体も、なかなかの出来栄えなのわん。
ついでに飲み物を、とオーダーしたいところだけどぉ、
まぁこれはガマンするしかないのわん」
「ダメじゃん! ダメじゃん! 食べたらダメじゃん!」
「おや? 声の感じがにゃんかおかしいのにゃん」
「そういえば……。
勢いはそのままなんだけどぉ。次第にかすれてきているみたいなぁ。
でもどうして?
丸っこいもんは、まだまだ残っているのわん」
「本体が半分以上、食べられちゃっているせいじゃにゃい?
ほら。確か、『切りたくても切れない間柄』とかいってたにゃろ?」
「そうそう。いってたのわん」
「それって、
『片っ方が滅びれば、もう片っ方も滅びる』って意味かもにゃ。
本体のピザ生地が滅びを迎えようとしているもんで、
トッピングのじゃんにゃんも。
そういう運命にゃんじゃにゃいの?」
「かぁもね」
「おのれぇ、よくもよくもぉ……ってことで、
最後の記念にいってみようじゃん!
じゃんじゃかじゃあぁん!
じゃんじゃんじゃんじゃんじゃかじゃあぁん!」
「……なんかすっごいわん。断末魔の際まで口演奏だなんて」
「あれぞプロにゃ。プロの職にん芸にゃん」
「もう一発ぅっ!
じゃんじゃかじゃあぁん!
じゃんじゃんじゃん…………」
「あっ、途切れたのわん」
「ミーにゃん、合掌にゃ。
じゃんにゃん。お疲れさまでしたのにゃん」
「ふぅ。綺麗さっぱりと平らげたのにゃん。
にゃら、ミーにゃん」
「うん。みなまでいわなくても判っているのわん」
『お食事会、これにて終了なのわあぁん!』