第百二十ニ話『野望は大っきいのにゃん』
第百二十二話『野望は大っきいのにゃん』
「じゃんじゃかじゃあぁん!
じゃんじゃんじゃんじゃんじゃかじゃあぁん!」
「やかましいのわん!」
「まさか冒頭から口演奏のファンファーレを耳にするとはにゃあ」
「あっしはこうみえても奇っ怪獣。
『奇っ界』なる世界から参った来訪者なのじゃん。
別な世界のどこかに、
あっしだけのオアシスを、
あっしだけのパラダイスを、
造りたかった。ただそれだけの純心無垢な願いからここに来たのじゃん」
「なに勝手なことを。なに自分だけで決めているのわん」
「だったら、誰に相談せよ、というのじゃん?」
「イオラの森に関することなら、アタシに決まっているのわん」
「あのにゃあ」
「じゃあ、あんたに相談すれば、オアシスを造っても構わないと?」
「却下よ。却下。
それを聴いて、すごすご、と引き上げていくって寸法なのわん。
どぉ? ムダな苦労をしなくても済むんだから、
感謝感激雨あられ、とは思わないのわん?」
ぱりぼりぱりぼり。
「こらぁっ、そこぉ。タイミング良くあられを食べてどうするのわん?」
「ほら、ミーにゃんにも一枚」
「全くぅ。どうしようもないのわん」
ぱりぼりぱりぼり。
「ムダではないのじゃん。必ず成しとげるのじゃん」
「にゃあんか自信満々にゃのにゃけれども」
「あっしの野望は大きいのじゃん。
この浮遊島を皮切りに、
四方八方の宇宙へと侵略の手を拡げていくのじゃん」
「なぁんか話が、とりとめのないものになっていくのわぁん」
「ミーにゃん。そういうもんにかぎって成功した試しがにゃいんよ」
「とほほ。あっさりと見切られてしまったのじゃん」
「ウチとしては、もちっと現実に即した質問をしたいのにゃん。
にゃあ、じゃんにゃん。
そもそもあんたがここを選んにゃ理由はにゃんにゃの?」
「誰でもやりそうなことをやったまでじゃん」
「というと?」
「天外魔境にて、『どこがいいじゃん?』って尋ねてみたら、
ここがパネルに映し出されたから、『おっ、いいじゃん』と即決。
相棒とともに飛び込んだのじゃん」
「にゃんともお軽い理由にゃん」
「行動もね。軽すぎてあたしの身体が浮いてしまうくらいなのわん」
ふわんふわん。ぱたぱたぱた。ふわんふわん。ぱたぱたぱた。
「ミーにゃん。翅が動いているのにゃん」
「これはただの癖わん。
翅の力で浮かぼうとしているのではないから、
文句いわれる筋合いなんてこれっぽっちもないのわん」
「あのぉ……。お取り込み中になんなのだけどさぁ。
こっちのお話を続けても構わないのじゃん?」
「うんにゃ。ウチは寛大にゃもん」
「アタシだって。慈悲の心がいっぱいなのわん」
「なら話すのじゃん。
ここに来てはみたものの、実は困ってしまったのじゃん。
というのも、あっしの相棒がでかすぎて。
あと、形状が形状なだけに隠す場所がないのじゃん。
なもんで思案に明け暮れた末に出た結論が、
『どこかに虚無空間を造ってそこに置いておけばいい』
本来であれば探し回って、
誰も来そうにない場所を見つけ出すところなんだけどさぁ。
なぁんとなぁく面倒くさくなってきちゃったのじゃん。なもんで、
『ええい! ここに造っちゃえばいいのじゃん!』
とまぁなんの思慮もなく造ったのじゃん」
「にゃあるほどぉ。
にゃもんでウチらは進めにゃくにゃってしまったのにゃん」
「ひとのナワバリに手出しするとは、なんてふてぇ了見なのわん。
ここは一つ懲らしめてやりてぇのわん」
「ミーにゃん。柄が悪いのにゃよ」
「はっ!
ごっほん。
だからといってね。アタシたちの世界を我が物にしようなんて、
決して許されることじゃないわん。ここは反省を促すためにも、
やさしい心にムチ打って、お仕置きをしなければならないのわん」
「まぁそれにゃら」
「良かったわん。お許しをもらえて、ほっ、としたのわん」
「――あれっ? 誤解していたのじゃん? ――
なぁ。お二方って、どっちがエラいのじゃん?」
「もちろん、アタシ」
「もちろん、ミーにゃん」
「なぁんか……まぁいいじゃん」
「ちょっとお二方」
「にゃに?」
「なにわん?」
「こうしてあらいざらい話したのじゃん。
聴けば、慈悲の心でいっぱいとか。
木の枝から、あわわわ、と落ちた際に、
身体を強く打ってしまったのじゃん。
この痛み。なんとかならないのじゃん?」
「ぶふっ。ミーにゃんったらぁ、またまた一本とられたのにゃん」
「うっ、うっさいわん!」
「まっ、ここはウチに任せにゃさい」
「ミアンに? 痛みに効くようなお薬でも持っているのわん?」
「お薬ではにゃいのにゃけれども。
とりあえずはやってみるのにゃん」
「なにを?」
《それは次回までおあずけ、にゃもんで、つづくのにゃん》