第百二十一話『じゃんじゃん、うるさいのにゃん』
第百二十一話『じゃんじゃん、うるさいのにゃん』
「ふっふっふっふっ。はっはっはっはっ。あぁっはっはっはっはっ」
「だ、誰にゃん!」
『誰わん! おとなしく姿を見せるのわん!」
「ふっふっふっ。うろたえてるうろたえてる。
やったじゃん。思った通りじゃん。最高じゃうわっ!」
ひゅうぅっ……べちっ。
「うぉ! あそこの茂みに、なんかが滑り落ちたみたいわん」
「ミーにゃん、行ってみようにゃん」
「いうに及ばずなのわん」
たったったっ。
ぱたぱたぱた。
「痛いのじゃあん!
死にそうじゃないけど、それでもやっぱ痛いのじゃあん!」
「ミアン、あの木の根元辺りから聞こえてくるのわん」
「あんにゃけ喚いているところをみると、
てっぺんの枝から落ちたのかもしれにゃいにゃ。
たったったっ。
ぱたぱたぱた。
「痛たたたあっ!」
「ミーにゃん、ひょっとしてアレじゃにゃいの?
ほら、
濃い赤の平べったい真ん丸が幾つもくっついている、
にゃんとも奇妙奇天烈にゃ身体の」
「みたいね。でもなんなの? アレって。
ネコ型? まさかね。
翅人型? 形はそれっぽいけどぉ。翅がないのよねぇ。
背中に仕舞っているとも思えないしぃ……ふぅぅむ。
しょうがない。今のところなんともいえないから、
『人型を模どっている』ということで落ち着くのわん」
「ミーにゃん。
ここであれこれ喋っても考えても想像してもにゃ。
正解にゃんて導けっこにゃいのにゃ。時間のムダにゃんよ。
……ってことでにゃ。
ウチ、ちょいと声をかけてみるのにゃん」
がさがさがさ。ごそごそごそ。
「アタシも行くわん」
ぱたぱたぱた。
「どうにも痛い……あっ、お前らは」
「アタシはミーナ。見ての通り、イオラの森のお姫さまなのわん」
「ウチはミアン。見ての通りの化けネコにゃん」
「見ての通り、って、見たって、さっぱり判らんのじゃん!」
「ミアン、今の聴いたわん?」
「もちにゃ。ネコを見る目がにゃい奴にゃん。
ミーにゃん。こんにゃの、ほっとこうにゃん」
「うん。一も二もなく賛成なのわん」
くるっ。くるっ。
がさがさがさ。ごそごそごそ。
ぱたぱたぱた。
「ま、待って。待ってくれのじゃん」
ぴたっ。にやり。
ぴたっ。にやり。
「あっしは『サラミの「じゃん」』っていうケチな野郎なのじゃん」
「これはこれは。わざわざのご紹介、痛み入るのにゃん。
ところでにゃ。直球でお伺いするのにゃけれども、
あんたはどういう素姓の者にゃん?」
「どこからやってきたのわん?
あらいざらいぶちまけないと、痛い目に遭わせるのわん」
「もう遭っているのじゃん」
「えっ。……ああ、そうね。そうだったのわん」
「ぶふっ。ミーにゃんともあろうお方が情けにゃい。
新参者に一本とられるにゃんて」
「うっ、うっさいわん!
弘法も筆の誤り。
イオラのお姫さまだって間違いの一つや二つはあるのわん」
「一つや二つで済むのにゃん?」
「うぅぅんとぉ。なら三つや四つ」
「そんにゃんで本当に済むのにゃん?
ここは思い切って、『生まれてからずうぅっ、と、なのわん』って、
告ったほうがリアルでいいんじゃにゃいの?
『あん時、あんなことをいわなきゃ良かったわぁん』
なぁんて後悔せずに済むんじゃにゃいの?」
「そう甘い言葉でささやかれちゃったら、
アタシとしても頷かないわけには……はっ!
こらあっ!
なぁんでアタシが追いつめられなければならないのわぁん!」
「常日頃の素行が素行にゃにゃけに」
「冷静な目で即答しないで欲しいのわん!」
《ネコって大概こんにゃ目にゃん、と反論しつつも、つづくのにゃん》