第百二十話『ミーにゃんの反乱にゃん』
第百二十話『ミーにゃんの反乱にゃん』
「ミーにゃんミーにゃん」
「どうしたの? ミアン」
「ここって、さっきも通ったのにゃん」
「気のせいよ。そうに決まっているのわん」
「気のせい……いや、違うにゃ。確かに通っているのにゃん。
しかもにゃ。一回にゃけじゃにゃくって、何度も何度も」
「んなアホなぁ」
「ううん。これはさすがに『アホ』じゃ済まされにゃい。
ミーにゃんも記憶をトレースしてみるのにゃん」
「トレース? 記憶を辿れ、っていうのわん?」
「そしたら、判るはずにゃ。
ウチらって、ずぅっ、と、
おんにゃじところばっか、ぐるぐる、と歩いているのにゃん」
「記憶を……待って、確か……はっ!
本当。アタシも通った覚えがあるのわん」
「にゃろ?」
「そういえば、おかしいのわん。『遊び場』へ向かっているにしては、
なんぼなんでも時間がかかりすぎなのわん」
「まさか、とは思うのにゃけれども」
じろりっ。
「なにわん?
薄焼きせんべいよりも、もぉっ、と薄い目で、
アタシを見つめたりして」
「ミーにゃん。
ひょっとして結界でも張ったんじゃにゃいの?
にゃら前に進めにゃいのも、
進んでいるって錯覚を起こしたのも納得にゃん」
「なんてことをいうのわん。
そもそも、
どうしてアタシがそんなことをしなければならないのわん?」
「そう。にゃにをするにしても理由があるもんにゃ。
身体を綺麗綺麗にしたいから、毛繕いをするのにゃん。
お腹が空いたから、食べるのにゃん。
用足しをしたいから、おトイレに行くのにゃん。
ウチが親友にゃもんで、ミーにゃんもアホにゃのにゃん」
「ちょっと待つわん。最後のがどうにも引っかかるのわん」
「もちろん、逆もまた真にゃりにゃ。
『ミーにゃんがアホにゃもんで、ウチもまたアホにゃのにゃん』
これまた十分成り立つのにゃん」
「ますますもって引っかかるのわん。
そこんとこ、たっぷりと議論し合いたいのわん」
「ささいにゃことにゃん。気にしにゃいで」
「うわっ。軽くいなされてしまったのわん」
「でにゃ。
『遊び場』に行くのにゃって、友にゃちと遊びたいからにゃん。
『にゃらば、ミーにゃんはどうして結界を張ったのにゃん?』
この問いに対する答えとして、まず最初に頭に浮かぶのが」
すくっ。
「なにネコ人型モードで立ったのわん?
しかも、
『左手を右肩の脇に挟んで、
右手の短い指のマタにあごを無理矢理挟んで』の格好で。
まるで考え込んでいるみたい。
顔だってほら、いつにない厳かな表情を浮かべているのわん」
「ふぅぅむ。やっぱアレにゃん。アレしかにゃいのにゃん」
「アレって?」
「ミーにゃんの反乱にゃ」
「はぁっ?」
「ウチらは毎日、足しげく『遊び場』に通っているのにゃん。
いわば、いつもの日常茶飯事的行動。
ミーにゃんはこれに『飽き』がきたのにゃん。
日々の生活に変化を求めたくにゃったのにゃん。
『にゃんと!』『信じられにゃい!』『そんにゃアホにゃあ!』
にゃあんて叫び声を上げずにはいられにゃいシーンに、
恋焦がれているのにゃん。出くわしたいのにゃん。
でもにゃ。残念にゃがら現実はそうそう甘くはにゃい。
ミーにゃんがどんにゃに望もうが、現実は現実でしかにゃいのにゃん」
『おのれぇっ。こんなことがあっていいのわん!
アタシはイオラのお姫さまなのわん!
なのに思い通りにいかないことがあっていいのわん!』
「恐らくミーにゃんは慟哭の涙とともに、
天に向かって……じゃにゃいにゃ。
にゃって神霊ガムラにゃんは地の底に居るのにゃもん。
にゃらばここは地に向かって訴えたのに違いにゃい」
『……いや、あってはならないのわん。
だったら、どうするのわん?
どうしたら、この無念の思いが晴れるというのわん?
一体どうしたら……はっ!』
「でもってそうこうするうちに、ぴぃぃん、と閃いてしまったのにゃん」
『きゃはははは。なんでこんな簡単なことに気がつかなかったのわん?
サプライズが欲しいのなら、起きないのなら、
こちらで起こせばいいのわん!
ただそれだけの話なのわん。きゃはははは』
「にゃもんで、このようにゃ愚をおっ始めたのにゃん。
ウチの慌てふためくさまを眺めることで、
『どっきり、大成功なのわん!』と狂喜して、
溜飲を下げるつもりにゃったのにゃん」
「…………」
「どうにゃん? ウチの洞察眼は?
にゃかにゃかにゃもんにゃろ? ミーにゃん」
「あのね……。
開いた口が塞がらなかったのわん。
いろいろとアタシの小っ恥ずかしい描写をしてくれたけどさぁ。
本気でそう思っているのわん?」
「さっきもいったじゃにゃい。
これはあくまでも最初、頭に浮かんにゃ考えにゃん」
「どれくらいの確率でそう思っているのわん?」
「うぅぅんとぉ。たいしたことにゃんかにゃいにゃよぉ。
せいぜい、そうにゃにゃあ、八割どまりぐらいにゃもん」
「ほとんど本気なのわん!」
《やっぱ違ったみたいにゃん、とがっかりしても、つづくのにゃん》