第百十九話『あれこれ話パート18にゃん』
第百十九話『あれこれ話パート18にゃん』
《多少の元気があるのにゃら、おつき合いくださいましにゃん》
「ミーにゃん!
明日は明るく! ……でもにゃ。今日は暗くにゃん」
とぼとぼとぼ。
「なにかあったなぁ。
しょうがない。慰めがてら、すっぱ抜いてあげるのわん」
ぱたぱたぱた。
《ミーにゃんて、やさしいんにゃか、意地悪にゃのか。……はあぁ》
がつがつがつがつがつ。
「なぁんでそんなに夢中で木の実にかじりついているのわん?」
「美味しいからにゃん」
「まぁそりゃあね」
「にゃんにしてもにゃ。
『天は二物を与えず』とは、よくぞいったものにゃん。
あともう少し来るのが遅かったらにゃ。
この一個すら食べられにゃかったんよ」
「あれっ? 『天はなんたら』って、そういう意味だっけ?」
「知んにゃい。
今のウチの思いにぴったしにゃったもんで口走ったにゃけにゃん」
「やっぱりね。
そうじゃないかなぁ、って思ったのわん。
でもさぁ、ミアン。
この木だったら、あそこにも何本か生えているのわん。
木の実だってほら、
粒ぞろいの美味しそうなのがたんと生っているのわん」
「にゃんと!」
《ふにゃ! ことわざにまんまと目を曇らせられてしまったのにゃん》
「ふわああぁぁんにゃ。
……思わず、大あくびしてしまったのにゃん。
こうやって『遊び場』の草むらで仰向けに寝るのは、
にゃんとも気持ちがいいのにゃん。
草の香りもにゃかにゃのもんにゃし。それに」
『アホ、アホ、アホォッ! アホ、アホ、アホォッ!』
「アホ鳥が飛んでいる青い空。
にゃんともまぁ透き通るようにゃ青さにゃ。
はっ、と息を呑むようにゃ美しさに身も心も奪われ、
でもって、あの青の中に溶け込んで、
さにゃがら、自分が空の一部にでもにゃったようにゃ、
そんにゃ摩訶不思議にゃ思いを抱かせる眺め…………んぐっ!」
「うわん!
ミアンったら、『息』じゃなくって、『鳥のフン』を呑み込んだのわん!」
《油断大敵にゃん》
「にゃんにゃろう? 今日はおかしいのにゃあ」
ふらふらふら。ふらふらふら。
「にゃあんか目まいが。それに頭も、くらくらっ……」
ばたっ!
「ミ、ミアァン!」
ぱたぱたぱた。
「あら、大変!」
ぴょおぉん。ぴょおぉん。ぴょおぉん。
「ミアン! しっかりするのわん!」
「……ふにゃ?
ううんとぉ。大丈夫にゃよ、ミーにゃん」
「なんなら身体を診てあげましょうか? ミアンちゃん」
「それには及ばにゃい、とは思うのにゃけれども……ふにゃっ。
ミーにゃんがふたり、じゃにゃい、三にんに見えるのにゃん」
「んもう、ぜぇんぜぇん大丈夫じゃないのわん。
一刻も早くあったかいお布団にくるまって寝たほうが」
「でもってミーにゃんがにゃ」
「アタシが?」
「とびぃっきりの美少女に見えるのにゃん」
「えっ!
……なぁんだ。そうなの。
どうやら、治ったみたいね。
もうお布団になんて入らなくてもいいのわん。
やれやれ。ほっ、と」
「するなんてもっての外だわ!
――んもう、ミーナちゃんったらぁ。
一体なにを考えているのかしらぁ? ――
選りにも選ってミーナちゃんが美少女だなんて。
信じられない、を飛び越えて、あり得ない話よ。
かなりの重症とみて間違いないわ。
ひょっとしたら、もう手遅れ。お先真っ暗なのかもしれなくてよ。
ささっ。早くお布団の中に」
「ちょ、ちょっとイオラ。
あり得ない、って、どういう意味なのわん?」
「そのままの意味よ。
……なぁんてお喋りしている暇はないわね。
ミアンちゃん、今直ぐ身体を診てあげるから」
「んぐっ。ダメにゃん。
くらくらっ、が一層、激しくにゃって……」
「ミアンちゃん!」
「にゃ、にゃあ、イオラにゃん」
「なに? ミアンちゃん」
「イオラにゃんもにゃ」
「ワタシも?」
「絶世の美女に見えるのにゃん」
「えっ、そうなの?
ということは……。
良かったわぁ。峠は越したみたいね」
ぴょおぉん。ぴょおぉん。
「ふぅ。これでもう安心」
「じゃないのわん!
イオラったら、なにいってのんわん?
今の聞こえなかったの?
あきらかにおかしいじゃない。
イオラのどこが絶世の美女だっていうの?
やっぱ重症なのよ。
早くお布団に横になってもらわなきゃいけないのわん」
「ミーナちゃんったらぁ そんなにあたふたしてどうしたの?
ミアンちゃんの言葉を聴いたからこそ、
こうして安心な気持ちになれたっていうのにぃ。
ワタシが絶世の美女だって判るのだもの。たいしたことはなさそうよ」
ぴょおぉん。ぴょおぉん。
「だから、おかしい、っていっているのわん」
「どこがおかしいのかしら。至ってまともな意見だと思うのだけれど」
ぴょおぉん。ぴょおぉん。
「じゃあ聴くけどさぁ。
一体全体その格好のどこが美しいっていうのわん?」
「格好?
そうねぇ。やっぱり、この綺麗な素足かしら?」
ぴょおぉん。ぴょおぉん。
「素足って……。そりゃあ確かに素足はあるのわん。
だけどね。それだけで美しいっていうのは合点がいかないのわん。
大体さぁ。なぁんで今日にかぎって、
ぴょおぉん、ぴょおぉん、なのわん?
『から傘お化け』なのわん?」
「そういう気分だったから、としかいえないわ。
複雑なのよ。女心って」
「へぇ。女心かぁ。
そういうのって、幼児のアタシにはイマイチなのわん」
「大丈夫よ。ミーナちゃんにもいずれ判る時がくるから」
「そういえばさぁ。この間のことなんだけどね。ミムカんが」
「ふむふむ」
「ミーにゃん……イオラにゃん……もうウチはダメ……」
ばたっ!
《喋り出したらもうアウト。見向きもされにゃくにゃるのにゃん》