第百十四話『ミーにゃんに看破されてしまったのにゃん』
第百十四話『ミーにゃんに看破されてしまったのにゃん』
ちらりっ。
「どぉ? ミーナちゃん。判ってくれた?
自分とミアンちゃんとの違いを。
今のあなたには越えたくても越えられない壁があるのを」
「ぜぇんぜぇん。さっぱりのぱり、なのわん」
「ふぅ。やれやれ」
「ふぅ。やれやれにゃん」
「むぅっ。ミアンまでいわなくてもいいわん」
「そういえば……。
ねぇ、ミアンちゃん。修行のほうはどぉ?
はかどっているのかしらぁ?」
「はかどっているかどうか、にゃんて、
ウチにも、ちと判りかねるのにゃん。にゃんせ『修行』にゃもん。
まっ。それはそれとしてにゃ。
イオラにゃん。ここはにゃ。
岩がごろごろある合間合間に、
小っちゃにゃ生き物とか、まばらに生えている草とか、
そんにゃもんしかにゃい静寂に満ちた空間にゃのにゃ。
入口から射し込む光にゃけが、唯一の助け、にも思えてくる。
しかしにゃがら、もちっと奥のほうは光すら届かにゃい。
闇が拡がっているのみにゃん。
前を向けば光。後ろを振り返れば闇。
要するにウチが居るのは、光と闇の狭間にゃん。
どちらからもにゃ。
『こっちのみぃずはあぁまいにゃん』
「こっちのみずこそあぁまいにゃん』
との誘いをかけてくる。せめぎ合っている。
でもにゃ。それは裏を返せば、
互いに相手をけん制しているに他にゃらにゃい。
にゃもんで、どちらもウチには手を出せずじまいにゃん。
光にも闇にも囚われることにゃく、静寂にゃけが支配する世界。
まさに現実とは隔離された世界にゃ。
にゃもんでウチは、
誰にも邪魔されずに虚無の世界へと身を置くことが出来るのにゃん」
「そう。良かったじゃない。
ところでミアンちゃん。
こんなことを聴いていいものかどうか迷うのだけれど」
「にゃんにゃの?」
「一体なにが望みで修業を始めたの?」
「にゃから虚無の世界へと身を投じるためにゃん」
「だから、身を投じてどうするの?
それでなにか得られるものはあるの?」
「にゃから虚無の世界へと身を投じるためにゃん」
「だから……」
「にゃから……」
「判ったのわん!」
「ふわっ! びっくりぃっ!
ミーナちゃん。交信中に大声を上げるのはご法度よ」
「てへっ、と頭をかきつつ、ごめんごめん。
でもイオラ。やっぱ判ってしまったのわん」
「ええと……自分のアホが?」
「あのね。
同じセリフの繰り返しだって、ご法度なのわん。
そうじゃなくって。
イオラ、アタシに交信の続きをまっかせなさいのわぁん!」
「はぁい。お元気わぁぁん、ミアァァァン」
「その声はミーにゃん。
うんにゃ。ずいぶんと元気にゃよぉ」
「修行のほうはどぉ? はかどっているのわぁぁん?
……なぁんてやってられないのわん!
こらぁっ!
ミアンがそこに居るのは誰にも邪魔されずにおネムしたいからでしょ?
精霊の間じゃあ、
アタシやイオラが意味もなく、うるさくさえずり回るから。
違うのわん?」
「…………」
ぷちっ。
「うわん!
あんにゃろうめぇ。
こともあろうに親友の交信を無言で切りやがったのわん。
んもう、どうしてくれよう。
ねぇ、イオラ。ミアンのこの態度ってどう思う?」
「ミーナちゃん。あなた、ちょっとばかし柄が悪くなっていない?」
「だって、ミアンが」
「態度がどうのこうのよりも、
もっと考えなくちゃならない問題があるんじゃない?」
「というと?」
「人のふり見て我がふり直せ、じゃないのだけれど……、
振り返ってみるに、思い当たることばかり。
確かにワタシたちって、うるさくしすぎたかもしれなくてよ。
ふぅ。なんてことかしら。
ミアンちゃんには可哀そうなことをしたわ。
ネコはおネムがお務めだっていうのにぃ」
「とぉんでもない。同情は無用なのわん。
アタシたちのどこがうるさいっていうの? あきれちゃうのわん」
「あらぁ。たった今、交信の中で、
『うるさくさえずり回るから』とかのたまっていたのはどこの誰かしら?」
「うっ」
「自覚があるからいえるのよね? あの言葉は。そうでしょ?」
「……だからって、どうにもガマンならないのわん。
よぉし、こうなったら」
《どうするつもりにゃん? と首を傾げにゃがら、つづくのにゃん》