第百十三話『ウチは出かけているのにゃん』
第百十三話『ウチは出かけているのにゃん』
「あれっ? ミアンがどっこにも居ないわん」
「ミーナちゃん。ミアンちゃんなら、夜遅く出かけたわよ」
「そうなの? ぜぇんぜぇん知らなかったのわぁん」
「ふふっ。当然よ。ぐっすり、とおネムしていたもの」
「まぁね。確かに今朝は気持ちがいい目覚めだったのわん。
だけど、……今はがっかり。まさか出かけていたなんて。
ねぇ、イオラ。アタシのアホネコはどこに行ったのわん?」
「ミーナちゃんが『遊び場』って呼んでいる場所があるでしょ?
あそこの近くにある小山の頂きよ」
「小山の頂きっていうと……、小さな洞穴のある?」
「正解。その洞穴の中で夢想無念の修行をするんだって」
「修行? 化けネコが修行? なんでまた?」
「さぁ。そこまでは」
「で、いつ帰ってくるのわん?」
「さぁ。そこまでは」
「イオラ、ダメじゃない。
家族なら、ちゃあんと聴いてあげるべきなのわん」
「というか……。
ミーナちゃんは心配だから、聴くけど、
ミアンちゃんは安心だから、聴かない。
ただそれだけのことよ」
「それってどういう意味わん?
まさかアタシを、
『目を離したら危ない子』とでも思っているのわん?」
「あぁぁら。エラいわぁ、ミーナちゃん。
自分で自分が良ぉく判っているじゃない。おっとなぁぁ」
「…………」
「判ったのわん!」
「自分のアホが?」
「イオラぁっ!
それが、創造主が造り子にかけてあげる言葉なのわん!」
「ふふっ。まるで怒っているみたい」
「まるで、じゃなくって、怒っているのわん!」
「あらあらあら。困った子ねぇ。
その怒りっぽさ。
歴代のミーナちゃんの中でも断トツじゃないかしら。
ミアンちゃんの苦労が偲ばれるわぁ」
「冗談じゃないわん!
アタシがいつミアンに苦労させたっていうのわん!」
「そのうえ自覚なしか……。
ミーナちゃん、良ぉく聴いてね。
ほら、『子は親の鏡』とかいうでしょ?」
「えっ。……まぁ知ってはいるのわん」
「ここまでいっても判らない?」
「判らない? 一体なんなのわん?」
「ミーナちゃん……ふぅ。
やっぱり、あなたって今一つ考えの足らないところがあるのね」
「うん? どういうことわん?」
「ワタシがいうより、ミアンちゃんに聴いてみましょうよ」
「ミアンに?」
「そうよ。霊覚を使ってのリアル交信」
「はぁい。お元気かしらぁ、ミアンちゃあん」
「その声はイオラにゃん。
うんにゃ。ずいぶんと元気にゃよぉ」
「それは良かったわ。
と、ここで突然の質問をしたいのだけれど。大丈夫かしら?」
「にゃんにゃりと」
「まっ、嬉しい。
なら、お言葉に甘えちゃおうかしら。
ワタシね。実は、これこれこういうわけで、
ミーナちゃんに、『自分のアホが?』って聴いたの。
ワタシとしてはやんわりと聴いたつもり、なのだけれど……、
なぁんか怒っちゃったみたいなのよ。
それでまぁ続けて、
『子は親の鏡』ってヒントをあげたのだけれど、
これが不発。ぜぇんぜぇん判ってくれなくって。
ねぇ。ミアンちゃんだったら楽勝よね?」
「もちろんにゃよ。要するにアレにゃろ?
ミーにゃん(という子)がアホにゃのは、
イオラにゃん(という親)がアホにゃせい。
全ては自分がいけにゃい、との反省の弁を述べようとしたのにゃん」
「さっすがはミアンちゃん」
『にゃはっ。褒められてしまったのにゃん。でもって、つづくのにゃん》