表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウチとミーにゃんのお喋り話  作者: にゃん丸
11/1000

第十一話『干物に愛を込めてにゃん』

「ツルを使っての木渡りは楽しいわん。

 ここら辺は特にね。一本の木から何本ものツルが伸びていて、しかも細いものから太いものまで揃っていると、まさに選りどりみどりの状態。

 アタシに合う太さのツルもちゃんとあるのが嬉しいわん。

 さてと、それじゃあ今日は……うん。これにしよう、っと」

 ぎゅうっ。

「ええと、それでミアンは……」

「ミーにゃあぁん! こっちにゃよぉっ!」

「うふっ。居た居た、って……、んもう、ミアンったらぁ。

 ちょぉっと目を放した隙に、まぁた変な真似をおっ始めているのわん」

「ミーにゃあぁん! 早くぅっ!」

「はいはい。判っているわん。

 あれこれ考えるより、直に聴いたほうが早いのわん……ってことで。

 ミアァン! 行っくわぁん! それぇっ!」

 びゅうぅん…………ぱたっ。

「ふぅ。なんか切れそうだったけどぉ。とにかく無事に辿り着いたわん」

「危にゃかったにゃあ、ミーにゃん」

「まっ。結果良ければ全て良しなのわん。

 もっともぉ、たとえ落ちたとしても、密林状態のここなら地面には落ち葉がわんさか積もっているから、実体波を纏っている今でも全然痛くないけどね」

「痛くにゃいけど、格好悪いにゃん」

「そうなのよねぇ。ついこの間もさ。ミーにゃん同盟のみんなで木渡りしていたら」

「そういやあミーにゃんったら、一番高く上がったところで、ものの見事にツルをぶっちぎったんにゃって?」

「情けなくもね。で、そのまま、どさっ! なのわん。

 みんな、『ねぇ、大丈夫なの?』って声をかけてはくるものの……、顔がね。『こういうのを見るのもたまにはいいわね。面白くて』といわんばかりに半分笑っているのわん。

 んもう。恥ずかしいったらありゃしない。今想い出しても顔が赤らんできちゃうわん」

「それってミストにゃん?」

「みんなよ。ミアンも……あれっ? そういえば、ミアンは居なかったっけ。

 ねぇ。あん時、どこに行っていたの?」

「ちとお腹がすいたもんでにゃ。近くを流れる小川で魚を釣っていたのにゃん」

「ミアンの魚釣りってアレでしょ?

 水面に尻尾の先をつけてお魚さんを誘うっていう」

「うんにゃ。尻尾を上下させるとにゃ。恐らく餌と勘違いしているのにゃろうにゃあ。

 我こそはと、争って食いついてくるのにゃん。

 でもって口にくわえてくれたら……ぶふっ。ここまで来たらしめたもん。

 すぐさま尻尾を振り上げるとにゃ。その勢いでお魚にゃんは尻尾から外れて宙を舞う。

 でもって落ちてきたところを……、ジャンプして、すかさず、ぱくっ、とにゃん」

「美味しかった?」

「うんにゃ。にゃかにゃかの味わいにゃった。

 と、ここで、ふと気がついたのにゃん」

「なにをわん?」

「生魚はもちろん美味しいのにゃ。しかしにゃがらウチの記憶が正しければ……、

 味つけした干物を焼いた奴も、これまた違った美味しさがあったはず、ってにゃ」

「そうかもね。反論はしないわん」

「ウチの全身に震えが起きたのはその時にゃん」

「てんかん?」

「あのにゃあ……。

 真実に辿り着いた際、誰もが経験するという武者震いにゃん」

「どぉっちでもいいわん。で? どんな真実に辿り着いたのわん?」

「焼いたから美味いんじゃにゃい。いや、美味しいのにゃよ。美味しいのにゃけれどもぉ。

『干物』を焼いたからこそ、ウチはまた格別にゃる美味しさと出逢えたのにゃん。

 つまりにゃ。ごっほん。

 陽の光を思いっ切り浴びたことで、お魚にゃんの『うまみ』が更に増した。

『焼く』という行為がその『うまみ』を半端にゃく引き出した。

 とまぁこういうわけにゃん」

「ふぅぅん。でもぉ。それが判ったからどうだっていうのわん?」

「ネコもおんにゃじかも、と思ってにゃ」

「ネコも? はて? どういうことわん?」

「干物ににゃれば、おのれのうまみを、持ち味を半端にゃく引き出せるんじゃにゃいの?

 ミアンから、パーフェクト・ミアンににゃれるんじゃにゃいの?

 そう思ってにゃ。こんにゃ格好をしてみたのにゃん」

「……やぁっと判ったのわん。

『なぁんで木と木の間にツルが張られているのわん?』

『どうして逆さまになってツルにぶら下がっているのわん?』

 とまぁいろいろ腑に落ちなかったんだけどぉ。これって干物のつもりだったのわん」

「うんにゃ。でもにゃ。ウチは思い違いをしていたのにゃん」

「そりゃそうよ。いくら干物の格好をしてもそれだけで自分を高められるわけが」

「その通りにゃ。格好だけじゃダメにゃん。本物の干物ににゃらにゃければ」

「本物? それって一体」

「毛皮をはいで生肌をさらすのにゃん。それしかにゃい。それしかにゃいのにゃん」

「ちょ、ちょっと待つのわん」

 がばっ。

「ねぇミアン。お願いだから、後生だから、土下座して謝るから、

 それだけはやらないで欲しいのわん。

 姿も能力も今のミアンでいいわん。今のミアンが最高なのわん」

「今のウチが最高? 

 はて? 干物の格好だけでも効果があったと、そういいたいのにゃん?」

「んもう! 干物はこの際、忘れるのわん!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ