第十話『会話はスムーズにいこうにゃん』
第十話『会話はスムーズにいこうにゃん』
「ミーにゃん。おはようにゃん」
「ミアン、おはよう」
「ふぅ。朝のあいさつもつつがにゃく終わったことにゃし。
にゃら、ミーにゃん。お休みにゃさぁい」
「うん。お休みなさいわん」
すうっ。すぅっ。
「とまぁこんにゃ風にゃ、スムーズにゃる会話を楽しみたい昨今にゃのにゃん」
いらいらいら。
「スムーズな会話? これが? ふん。冗談じゃない。
ミアン。自分がなにいってんのか判ってんの?
一日という貴重な時間をこれで終わらせていいのわん?
アタシに対してもよ。寝て過ごせ、なんて勧めているとしか思えないのわん。
全くもって、どうしょうもないわん。腹が立ってしょうがないのわん」
「そんにゃにムキににゃらにゃくたって。
今のは、たとえ話にゃ。
起きがけ早々、『なにやっているのわん!』にゃあんて怒鳴るのにゃもん。
もちっとお互いが笑顔で語れる会話で一日を始めようにゃん」
「あのね……。
昨夜、『明日は朝早く出かけようにゃん』っていったのは誰だったっけ?
でもって朝半の今の今まで、ずぅっとおネムしていたのは誰だったっけ?
挙句の果てに寝ぼけまなこで、
『お早う、ミーにゃん。いつもにゃがら早いにゃあ。んにゃはははっ』
アタシに笑いかけてきたのは誰だったっけ?
自分の行動を想い返してから、そういうことをいって欲しいわん」
「やれやれ。つまんにゃいことを覚えているのにゃ」
「つまんないことじゃないわん!
おかげでこっちは朝早くから待たされっ放しなの。
不満爆発寸前の抗議なのわん!」
「まぁまぁ。落ち着きにゃさい。
いつかいおうと思っていたのにゃけれども……。
ミーにゃん。ミーにゃんは怒りっぽすぎるのにゃ。
もぉっと寛容ににゃったほうがいいと思うのにゃ」
「ふん。寛容になれ? 幼児のアタシに? 余計なお世話なのわん。
喜ぶ時には懸命に喜び、怒りたい時には懸命に怒る。
それのどこがいけないっていうのわん?」
「いけにゃい、とまではいってにゃいにゃよ。
たにゃにゃ……」
「ただ、なんなの?」
「誰かがいいましたのにゃん。
『右のほおをぶたれたらにゃ。左のほおも差し出しにゃさい』ってにゃ。
まぁそこまでは無理としてもにゃ。もちっとは」
「へぇ。そうなの。だったら」
ばしっ!
「ミーにゃん……」
「どうしたのわん? ぼけぇっ、とした顔で」
「……ぐすん。あんた今、にゃにをしたのにゃん」
「えっ。だって」
「ぐすん。うぅぅ……うわんにゃ! うわんにゃ! うわんにゃ!
イオラにゃああぁぁん!
ミーにゃんが、ミーにゃんが、ウチをぶったのにゃああぁぁん!」
「ちょ、ちょっとぉ」
「どうしたの、ミアンちゃん。
あらあら。顔中涙だらけじゃない」
「イオラにゃああぁぁん!
ぐすんぐすん。ミーにゃんが、ミーにゃんがぁ!」
「おお、よしよし。いい子だから泣かないの。
ミーナちゃん。ミアンちゃんを泣かせちゃダメじゃない」
【だってミアンが」
「泣かせなきゃいけないような悪いことをしたの?
どうなの? ミーナちゃん」」
「……どうしてこうなるのわん? わけが判らないわん。
アタシだって、アタシだってぇ……うええぇぇん! うえぇぇん!」
「あらあら、ミーナちゃんまで。
そんなに泣かれたらワタシだって……うわああぁぁっ!」
ざざああぁぁん! ざざああぁぁん!
「ぐすん……ミーにゃん……ぐすん」
「ぐすん……ミアン……ぐすん」
「ぐすん……にしても驚いたのにゃん」
「ぐすん。本当本当。
あぁっとい間にイオラの森全体が水没してしまったのわん」
ざざああぁぁん! ざざああぁぁん!
「ミーにゃん。仲直りしようにゃん」
「うん。仲直りするわん」
「じゃにゃいと」
「被害はもっともっと大っきくなるのわん」
「うんにゃ。ウチとミーにゃんが強力し合わないかぎり」
「イオラの涙も、
イオラの涙がもたらしたこの洪水も、
ぜえぇったいに、とめられないのわん」
「ミーにゃん!」
「ミアン!」
がしっ。
ざざああぁぁん! ざざああぁぁん!
「おお、よしよし。イオラにゃん。いい子だから泣かにゃいの。泣かにゃいのにゃん」
「おお、よしよし。イオラ。いい子だから泣かないの。泣かないのわん」
「うわ……ぐすん……ぐすん…………泣かなくてもいいの?
泣かなくっても……また元通りに楽しく暮らせるの? ぐすん」
「うんにゃ。ウチはイオラにゃんの名にかけて誓うのにゃん」
「うん。アタシも創造主イオラの名にかけて誓うわん」
「…………………………………………………………………………………………そう。
だったら、ワタシもワタシ自身に誓わなきゃいけないわね。
イオラの森を、ワタシの森を元に戻さなきゃ。
ミーナちゃんもミアンちゃんも手伝ってね」
「うん!」
「うんにゃ!」
「まず手始めに……そうね。口にするまでもないわね」
ざざああぁぁん! ざざああぁぁん!