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絶希  作者: 自来也
第一章 謎多き始まり
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第八話 3つの謎

風呂から上がった刀羅はバスタオルで濡れた髪を拭いてある程度水気が取れたら自然乾燥に任せる。

洗面所の扉を昼食を期待して開けるが、まだ昼食は来ていなかった。

さらに、最後の望みとばかりに廊下に通じる扉を開けるが、やはりない。

時刻は「1:30」いい加減来てもいい頃だ。

しかし、現状それはないのでまた空腹に耐える羽目になった。


「じゃあ謎解きの続きでもするか...」

微妙に気が乗らない。

限定的な情報をいくら思い出して吟味してみても意味がないように思えたからだ。

例え限られた情報でも吟味することが全く意味がないわけではない。

しかし、結局は魔法使いと戦わなければならないのだからと投げやりに

なってしまう。

それでもジッと空腹に耐えているよりはマシだ。


それに、ジムや風呂で考えたこと思い出したこと気づいたことも改めて付け加える必要もある。

考えないために他のことをしていてもふとした時にどうしても考えてしまう。

それで考えたのは大きく3つのことについてだ。


1つ目、敵の正体について。と言うよりは、敵の出処でどころについてというべきかもしれない。

これは、敵が異世界人であるということを前提にした仮説だ。

まず、敵が異世界人であれば当然ながら、その異世界とこちらの世界を繋ぐゲートのようなものが存在するわけだ。

例え、召喚や口寄せといった類の魔法かなんかを使って呼びたす役回りをしている者がいたとしてもそいつがこちらの世界に来るにはゲートが必要になるということ。

仮にこちらの世界から呼び出す者が元々存在していたとしてもゲートの存在する確率は高いと言える。


そして、この仮説が成り立つということはそのゲートが閉ざされているか通れる者が限定されているという可能性が上がると言える。

その場合呼びたし役を叩けば、今こちらの世界に呼びたされたやつだけをどうにかすればいいことになる。

それが、どれだけの数なのか強さなのかは皆目検討がつかない。


そして、この予想は刀羅の希望的観測によるものが大きい。

一番最悪なゲートが開いていて、なおかつ呼びたし役がいるという場合から最も遠いと言える仮説だ。

一番最悪な場合、もう刀羅の手に負えるものではない。

それに、相手が魔法使いだけとも限らない。

魔物使いなる者や、亜人、種類を挙げればきりがない。

そして、こんな多種多様なサーカスみたいな集団に対する策をいちいち考えねばならない面倒さ。

それに伴って、いつ何時なんどき敵に明陽がどのように襲われるのかという問題の複雑化するという懸念。

ここで、この問題に対しての推測は終わる。


2つ目、刀羅の力について。

まず、リスクだ。

この力を使っている時のリスク、使い終えた後のリスク。

大きく分ければこの2つだ。

前者は、体験しているという言い方もおかしいが刀羅の自我が制御でぎず、暴走してしまうということ。

これは、無関係な人や味方すらも攻撃してしまいかねない。

最悪、明陽を刀羅が殺すことだって有り得る。


後者は、まさに今の状況である。と、断言は出来ないが、少なからず影響を受けているだろう。

4日間眠り続けたことについては、2か月前の1件よりはマシだったと言える。

2ヵ月前にあの力を使った記憶は刀羅にはない。

ということは、敵の攻撃によって刀羅は1ヵ月もの間眠り続けていたわけだ。

だから、一概にこの4日間眠り続けていたことを力のせいしてしまうことは出来ない。

ただ、全くその可能性がないとも言いきれない。


今回ここまで眠り続けていたことに対して明確な答えを出せないのは、刀羅が意識をなくしてしまったせいでどれほどの傷を負ったのかが分からないことにある。

この部分のことは、医者の口ぶりから察するに相当の怪我であったということになる。

それならば、4日眠り続けていたのは怪我の影響が大半なのかもしれない...。


「あー!じれったい!」

そこまで考え、箇条書きに書き留めていたページをめくろうとしたとき、「コンコン」という硬質な音が病室に響いた。

次に「失礼します。」という女性の声がして、ドアが開く。

入ってきたのはナース姿で台車を押してきた深野ではない女。


「昼食をお持ちいたしました。」

女は台車に乗せられていた皿を次々にテーブルに並べていく。

「こちら食べ終わりましたらあちらにあるインターホンでお呼び下さい。」

女に扉近くにあるインターホンを指して言われて初めて刀羅はインターホンがあることを知った。

「あ、はい。分かりました。」

「それでは、失礼します。」

礼をして女は出ていった。


また1人になった刀羅はノートをバックにしまい、皿を順に開けていく。

相変わらず料理は豪華で病院より高級ホテルに思えてしまうのは仕方ないと割り切って食べていく。

まずはパプリカとトマトのマリネ、次に刺身の盛り合わせ、餃子、何だかよく分からないスープに、ポテトサラダ、味噌汁とここまでは大した量のものではない。問題は、デザート以外に残ったドデカイ皿だ。

「マジで何でこんな豪華なん。名前変なのに...」

ドデカイ皿の中身は2度目の食事にしてお馴染みになりつつある七面鳥のチキンだ。

「夜もあんのかな...」

毎度毎度七面鳥のチキンは楽しみな反面憂鬱になってくる。

美味いのだが、脂っこい、食うのに時間かかる、手が汚れるその他もろもろ問題がある。

結局美味いほうが勝ってしまうのだから良いのだが...。

「ふぅ...食った...」

刀羅は七面鳥のチキンを平らげ、デザートに移るのを少しだけ後回しにする。

動いたとはいえ少しの時間だけでこれだけの量の料理を食べるには少々苦しい。

戻ってきてから、飯を待ちわびいてたのが嘘のようだ。


「ふぅ...さて..」

いよいよ最後のデザートに取り掛かる。

今回のデザートは朝食時より大きめだ。

デザートはチョコケーキだった。

「チョコかぁ...」

刀羅は板チョコなんかは好きではあるが、チョコケーキのチョコはあまり好みのチョコではない。

勿論、食えないほど嫌いではない。しかし、一瞬手が止まってしまう。


苦手意識があるのはやはり、刀羅のイメージするチョコではないということだろう。

板チョコは刀羅のチョコのイメージそのものだ。

しかし、チョコクッキーやチョコケーキはチョコメインではなく、あくまでクッキーとケーキメインのチョコであるというのが刀羅のイメージするものとは当てはまらない。

要は、味ではなく食感の問題なのだ。

「しかし流石だな。うん。」

食感の問題があるとはいえ味のレベルは高いのだから絶品なのに変わりない。


昼食を十分に堪能した刀羅は何も乗っていない皿をまとめて台車に乗せ、食事を運んできた女が言った通りインターホンで片付けを呼び出した。

普段こんなことをしない刀羅は気が引けたが、指示されたこと以外のことをやって迷惑をかけるよりはと思ってのことだ。

インターホンに出たのは男だった。

『こちら、フロントです。どうなされましたか?』

”フロント”という単語は状況というか場に合っていて合っていないという何とも不思議な感覚に刀羅は陥る。

「あ、はい。食事が済んだので... それで...」

『そうでしたか。では、すぐに係の者を向かわせますのでお待ち下さい。』

「はい。ありがとうございます。」

『あ、あのもし係の者と会うのが嫌でしたら台車を廊下にお出しになって下さい。』

「はい。分かりました。」

『では、失礼いたします。』

それを最後にインターホンは切れた。


「出しときますか。」

台車を扉の前まで押して一度止まる。

「よっ..っと...よし」

扉を開けて台車を廊下に出す作業を終えて刀羅はベットに戻る。

係の人と会うというのが嫌だったら出しとけと言われて出しておくあたりコミュ障ぽくっ思われるだろう。

あながち間違ってないから否定はできない。

これが、外国人や異世界人なら逆に吹っ切れてどうにでもなるのだが、これが日本人となるとどうしても気後れするのだ。

当然、全員が全員というわけではない。

しかし、初対面の相手にはそうなってしまうわけだ。


「それはどうでもいいや。謎解きの続きやりますか...」

ノートと筆箱をバックから取り出しテーブルに乗せる。

その時、「コンコン」という音がする。

ーデジャヴ?

という疑問が沸いてくる。

食器を片付けに来た人ではない。

ということは探野だろうか。

「入るよ。」

待っているとドアの向こうからやや高めの声がした。

刀羅はそのやや高めの声に覚えがあった。

だが、探野ではない。

「意識戻ったんだね。刀羅君。」

それは刀羅の予想打にしなかった人物だった。

「荒井さん?」

そう、荒井だ。

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