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絶希  作者: 自来也
第二章 高校生影月刀羅
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第二話 昼休みの相談

4時間の授業(半分は自習)を経て昼休みとなった。

昼休みになって、すぐ刀羅は瀧本の指示通り第1会議室へと向かった。

場所は2時間目終了後に確認し、3時間目終了後の小休憩で早弁を済ませた。その点において抜かりはない。

幸いテスト前ということでクラスメイトからの質問も多くはなかった。

それでもされた質問には最大限愛想よく、疑われないよう、答える相手によって矛盾が起こらないよう答えた。


安いプラスチック製のプレートに第1会議室と書かれた部屋のドアの前で足を止める。

向かいには生物準備室、瀧本の言った通りの場所であることを再確認し、ドアをノックする。

「失礼します。」

刀羅の呼びかけに応じる声はしない。そのまま数秒が立つ。

無音の教室ということはまだ、瀧本は来ていないということなのだろう。

諦めて、ドアを引く。教室のドアは全てこの引き戸式だ。


広さは教室と同じぐらいで大部分は長方形になるよう置かれた黒いキャスター付きの机が占領している。奥の壁にはパイプ椅子が30脚近くまとめて置かれている。

その一つを取って広げて座る。


瀧本はさらに5分遅れて来た。手にはプリントやらその他諸々を入れた白いプラスチックの籠を持っている。

「来てたか。」

それだけ言ってパイプ椅子を取り刀羅の正面に座る。そして、籠からプリントを取り出して、

「えーっと、とりあえず今回一週間の休みは公欠とかにはならないか ら。」


いかにもやる気がないといった様子で独り言のような口調だ。明らかに話の内容とは合わない態度に刀羅が困惑していると瀧本が話し出す。


「君がここに来る前までの2ヶ月間にについては必要な出席日数としてはカウントしてない。ただ、これ以降インフルエンザとかの感染病とか親族の葬式とか公欠に扱えるもの以外は必要な出席日数から引いてくから気をつけて。」

「はい。」

「ただ、特例的に君はどうにか出来るかもしれないけどあんま期待しないでくれよ。まあ、テストでずっと上位10位以内とかなら手の打ちようもあるから頑張ってね。」

やる気のない声は変わらないがその中に含まれた威圧感を刀羅は感じた。

中野や浦波に吐いた弱音のことを言っているのだろうか。


「それはそれとして休んだ理由を詳しく聞かせてもらおうか。」

唐突な本題突入に刀羅が口ごもる。

瀧本は声のやる気のなさは相変わらずだが、その態度からは真剣さが伺える。

「...と、その前に一応他の奴らには君が外国から帰ってきてまだ体が慣れてなくて体壊したってことにしてるから。それでいいよね?」

この男これで意外と出来るのだから侮れない。

「あ、はい。」

「それじゃどうぞ。」

瀧本は問いの答えを話すよう促し黙る。


ーどうすればいい。

言い訳は一応考えていた。考えていたが、ここまで真剣に聞かれるとは思っていなかった。

適当に頭でも打ったというとこで納得してもらおうなんて甘かったのだ。

いや、しかしどうにかなる。瀧本には超常現象を使う輩が相手だとは言ってない。

ただ、明陽が狙われているということだけを言ったに過ぎない。

ならば、その設定から矛盾が生まれないように話を変えるだけだ。


相手の正体の何者かに襲われ、死闘を繰り広げた末に呼んでおいた増援が来たことに安堵のとそれまでのダメージと疲労の蓄積により気絶して目覚めたのは木曜であったという説明をした。

この中で偽りの部分は気絶する前に増援が来たという部分だけであとはほとんど事実だ。ただ、相手が超常の力を持っているということは言わなかっただけで。


刀羅が説明している間終始口を挟まなかった聞き終えてもなお、黙ったまま腕を組んで俯き瀧本は内容を理解し自身の中で消化して形にする作業に没頭する。

瀧本は顔を上げ組んだ腕を解く。

「なんか、ドラマの世界だな。将来はノンフィクションで小説家にもなれるんじゃないか?」

「そんな事したら殺されますから。」

「適当に書いて出版社持ってってそのまま出せば大丈夫だって。」

「いや、あのそれ出版社に裏切られて殺されるか、出版社の人間諸共殺されますから。それに僕は小説家になんてなりませんよ。」


どこまでもネカティブな刀羅の答えに残念そうに笑って瀧本は白い籠から何枚かプリントを取り出し刀羅の前に置く。

「提出期限があるものは直接渡した方がいいと思ってね。」

渡されたのは体育振興会の振込み用紙、学校のホームページに掲載される写真等に顔を載せられると困るのなら出すもの、健康の記録という健康診断時に使用するカードのようなものとあとは模試の参加不参加を問うものだ。


「体育振興会のやつは明日、ホームページのやつは今週中、保健のも...今週でいいか。まあ、じゃあそんな感じかな。あとは特に伝えなきゃいけないことは..ないはずだから...」

瀧本は目をつぶり額に人差し指を押し当てて数秒悩む。

「ない。君、聞きたいことは?」

「今の話他の誰かに言ったりはしませんよね?」

「それなら、大丈夫だ。お偉いさんに口止めされてるから。それこそ漏らしたら殺されるか囚われるだろ?」


苦笑いを浮かべて答え刀羅に瀧本問いかける。

「他に聞きたいことは?」

「ありません。」

「じゃあ戻っていいよ。」

「はい。」

瀧本が立ち上がってパイプ椅子を畳んで戻しドアに手をかけて立ち止まる。

「出ないのか?」

「戻る前にプリントの内容だけ確認しときたくて。」

「戻ってやれ。ここ鍵かけないと駄目だから。」


瀧本の言葉に渋々立ち上がりパイプ椅子を戻して机にあるプリントを取って瀧本の立つドアまで行き、止まる。

「忘れ物は?」

「ありません。」

「じゃいいよ出て。」

素直に従って部屋を出る。何となく滝本のほうを向くと出てきて鍵を占めているところだった。

鍵は金属製のリングに10本ほど通されている。その内の長い1本で鍵を占めている。


そんな様子をぼーっと見ていた刀羅に鍵を占め終え振り向いた瀧本が声を険しくして問う。

「まだいたのか。戻らないのか?」

「あ、いえ戻ります。」

答えて戻りかけた足を止め振り返って瀧本を見る。

「あの、一つ聞いていいですか?」

「なんだ?」

「あのクラスはーーー1ーDはどういうクラスですか?」

「どういうクラス....どういうクラスって....」

白い籠を右手に持ち脇腹に押し付け左手の人差し指を額に押し当てて目をつぶる。

数秒の間を置いて目を開き人差し指を額から離す。

「まあ、普通。団結して行事に取り組むし、授業崩壊はしてない。やらなきゃいけないことはやるクラスって感じだな。」

「そうですか。ありがとうございます。」


刀羅は目礼し、教室に戻るため反転する。

そんな刀羅を見て瀧本が口を開く。

「なぜ、そんなことを聞く?」

瀧本の呼びかけに振り向いて応じる。

「なぜ...?ただ単純にどういうクラスなのかを知りたかっただけです。僕はまだここに来て日が浅いので」

「なら、一つ俺からも聞きたい。」

「なんですか?」

「君はあのクラスをどんなクラスだと見る?」

意趣返しの質問でありながら、問う瀧本は真剣だ。

刀羅は俯いて目をつぶり短い間で得た情報を統合して結論を出す。

「男子にも女子にもまとめる役割を持った奴がいる。そして、同調して反応し物事を進められる奴もいる。先生の言う通りちゃんと団結できるクラスだと思います。」

「よく観察してるな」

瀧本は意地悪く笑う。

「必要な事です。輪から外れれば目立つだけなので」

「最もだな。けど、もうちょい気楽に付き合いをした方がいい。見ているだけじゃ分からないこともある。」

瀧本は自嘲して語る。

刀羅はその様子に違和感を覚えつつもそこまでは追及しない。

「戻りなーーー教室に」

「はい」

刀羅は反転して今度こそ教室に戻る。

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