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絶希  作者: 自来也
第一章 謎多き始まり
22/32

章間 報告

高級マンションの立つその1つそれも最上階で彼には少し大きすぎる仕立てのいい革張りの黒い椅子の背もたれに深く身を沈め煙草の煙を吐き出す。

この高級マンションは彼がことしになって話し合いの場として用立てたものだ。実際は彼が考えに詰まったときに来る場所になっている。

ガラス張りの窓からは夜だというのに街は光に満ちている。

見下ろせばすぐそこで車や手を繋いで歩くカップルが見える。

それとは対照的に部屋は明かりも付けずに暗いままこの日何本目になるのか分からない煙草を灰にする。

新しい煙草を箱から取り出してライターで火をつける。

灰皿は一杯で灰にした煙草で溢れかえっている。

それでも構わずに煙草をふかす。

煙草が体に悪いというのは分かっているというのにこうなってはやりようがない。

普段なら一切吸わないのだが、問題が重なると考えを整理し、新たな策を考えるため一晩中吸い続けることもあるし2本でやめることもある。

ただ、朝になったら何も考えが浮かばなくてもやめることにしていた。


ピーンポーン

「来たか...」

立ち上がって煙草の火を灰にした煙草で一杯になった灰皿に押しつけて消す。机に上に広げていた書類を上から2番目の引き出しにしまう。

玄関のドアを開ける。

開けたドアの前にいるのは彼と同じような体型をした男。

「こんばんは荒井さん。煙草ですか?」

「入れ。」

男の質問にはとりあわず、彼ーーーー荒井優希は男を中に入るよう促す。

男は人懐っこい笑みを浮かべる。ただ、それが愛想笑いだということに荒井は気づいている。

「失礼します。」

男は入るなりうっと呻く。

「空気清浄機はそこら辺にある臭いが嫌ならつけてくれ。」

荒井はドアを閉めついさっきまで座っていた場所におさまった。


男は空気清浄機の設定を強にしたらしく空気清浄機が唸るような音を立てている。ただ、男も部屋の明かりはつけなかった。

男は荒井の座る椅子と一体になって高級感を演出している黒いシックな机から1メートルほど離れたところに立っている。

「それで、用ってのは?」

「いきなり、本題ですか...」

男はおどけて見せるが、荒井にそんなことに構っているつもりはない。

「世間話に来たならささっと仕事に戻れ。」

荒井は冷たく言い放って最後の1本になった煙草を箱から取り出す。

箱を右手で潰してそのままゴミ箱に放り投げる。箱はそのままゴミ箱に入る。

「そういわけじゃないんですよ。ただ、報告しなきゃならないことと聞きたいことが2、3あるんですよ。」

男は荒井が吸う煙草が嫌いなのか荒井が煙草を火をつけると顔をしかめた。

荒井はそんなことお構い無しに煙草をに火をつけ「で?」て問う。

「まずはこの何日間分の報告から。彼女達に怪しいやつが近づいたりもしていません。」

荒井は煙を吐き、遠回しな男の態度に苛立ちを隠せない。

「そんなことをわざわざ伝えに来たというのか?」

「いえ、そうではありません。報告したいのは彼女らにまとわりつく輩の事ではなく、あなたが僕に監視を命じた彼についてです。」

荒井は煙を吐き出す。

「影月君のこと?」

「ええ。その彼です。」

相槌を打って答え、

「彼大分不安定なようですし...」

男はそこで1度言葉を区切り、わざとらしく間を開ける。

「なんと言ってもあの目はまずいですね。」

「目だと?なにかあったのか?兆候が?」

身を乗り出して聞いた荒井に男は違うと首を振る。

荒井は静かに椅子におさまって「じゃあなんだ?」と問う。

「あの子確実に人を殺すことになりますよ。」

「彼が人を殺すと?」

「ええ、間違いなく。今は彼女達の手前抑えているのでしょうが、いずれ抑えられなくなります。」

「....」

男は真剣そのもので荒井も茶化す気にはなれなかった。

荒井は煙を吐き出し、男の顔を見る。

荒井が口を開きかけたが、それよりも男のほうが早かった。

「だから、僕は彼の監視兼、護衛兼、教官になることにします。これは、もう決定事項です。」

言い切る男を見て荒井は溜息を漏らす。

ここまではっきり言い切るということは理由があるとふんで荒井は相手を見る目つきを鋭くする。

「ムラマサ、お前何をした?」

「僕は何も。ただ、彼にバレただけです。」

この答えには流石の荒井も心中穏やかではいられなかった。

だが、あえて落ち着いて問い返した。

「バレた?何が?」

「あなたの部下であることが。バレたのはこれだけです。だから、決定事項なんです」

荒井は男ーーームラマサの答えを聞いて納得がいった。

「それで、お前はついでに護衛と教官も付け足したと?」

「その通りです。」

ムラマサは荒井を正面から見据え堂々と答えた。

その様子に荒井は額にシワを寄せたが、

「まあいい。それなら、それで好都合かもな。お前をあの子の監視兼、護衛兼、教官に任命する。」

「はい。ありがとございます。」

ムラマサは立礼する。


「時間がない。聞きたいことがあるならさっさと聞け。」

荒井はいくらか険しい表情で言う。

「あなたは彼に何故そんなに期待していてるのですか?」

「期待ねぇ...」

荒井は煙草の煙を吐き出す。

「彼は力もあるしなかなか頭もキレる。」

「それだけではありませんよね?」

ムラマサの目が鋭さを増し荒井を射るようにな目つきで見る。

「彼なら何か出来るような気がしてな。」

「.....?」

ムラマサは怪訝な顔をして荒井を見る。

「いや、それがな俺にも分からんのさ。彼にこれほど期待を抱く理由が。でも、敢えて一つ理由を挙げるとすれば...」

荒井はここでわざと区切ってムラマサの反応を伺う。

ムラマサは黙っているだけで表情を変えない。

荒井は溜息をついて、

「精神力かな。」

「精神力?」


荒井は灰にした煙草を溢れかえっている灰皿に押しつけて火を消す。一番下の引き出しにいれてある煙草を取り出そうとしてやめた。

「彼には大きな目的が2つ出来てしまった。1つ生き残った彼女を守ること。2つそんな状況に追い込んだ犯人への復讐。」

これを聞いたムラマサの顔がどんどん険しくなって荒井の机を両手で思い切り叩いた。

「そんなこと言ってあんたはあの子を利用したいだけだろ!あの子はまだ子供だ!それに...」

荒井はムラマサに最後まで言葉を言わせない。

「利用してるのは彼もだ。彼は彼で俺らを彼女達を守る道具として使っている。」

「それでも...」

口を挟もうとするムラマサを遮り、

「お前こそ何故そこまで肩入れする?どうせ、関係の無い子供だろ?何故だ?」

「それは...」

ムラマサは目を伏せそのまま黙り込んだ。

荒井は鼻で笑って、ムラマサを見る。

「それだけなら、帰れ。俺は暇じゃない。」

冷たく言い放って一番下の引き出しに手をかける。

「あと一つだけ」

「....」

引き出しにかけた手を離し、ムラマサを正面から見据え無言で先を促す。

「あなたは彼にどこまで伝えているのですか?」

「何も」

荒井のこの答えにまたムラマサの顔が険しくなる。

「まだ、信用に足る相手じゃないそれだけだ。分かったら帰れ。」

ムラマサは悔しそうに顔を歪め荒井見たあと踵を返して玄関に向かった。

「肩入れしすぎるなよ。大事な局面で判断を誤ることになるぞ。」

荒井が投げかけた言葉が届いたかどうかは荒井には分からないがムラマサは黙って部屋を出ていった。


ムラマサが出ていってすぐ一番下の引き出しから新品の煙草を取り出して開け、1本煙草を取り出しライターで火をつける。

荒井は煙草の煙を吐き出す。立ち上がり窓に寄って夜空に浮かぶ月を見上げる。

月のあの怪しげな光に照らされていると自分飲み込まれそうで不安になる。

「そろそろ本格的に動かなければならないか」

荒井は溜息混じりに呟いて煙草の煙を吐き出す。

そんな荒井を月は窓越しに見下ろすように照らす。

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