表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絶希  作者: 自来也
第一章 謎多き始まり
17/32

第十六話 仕向けられた刺客

「行ったか...」

雪が女と明陽の元へ行ったのを確認して刀羅は男達ーーーー背の高い男の方に向き直る。

歩み寄る刀羅に気づいて男は立ち上がり、汚れた服をほろう。

男は刀羅を見て怒りと恐れの表情を浮かべる。

男は痩せ細っていて背が高いためとても貧相で弱そうに見える。年齢も痩せすぎのせいで頬はこけ目も落窪んでいて、実際よりも年をとっているように見える。

刀羅の総合的な判断では20代前半、ただ見ているだけなら30半ばにも見える。

「まだ....」

男が何かを言おうとするのを遮って刀羅は相手の胸ぐらをつかむ。

「単刀直入に聞く。アンタらは敵か?味方か?」

刀羅の問に男はそれまでの怒りと恐れの表情を消し男から感じられた貧相でも今は感じられない。真剣な眼差しで刀羅を見定める男の顔は相変わらず体調の悪そうだが、目の鋭さはどんどん増していく。

「味方...だよ。一応。」

「一応って言うことは敵になる可能性があると?」

「場合によるさ。僕は“あの人”の部下だから。」

意味深に答えて男は怪しげに笑う。

「“あの人”ってのは荒井優希のことか?」

「そう。」

「なら、今回のこれは荒井さんの命令か?」

「違うな」

「違う?」

男の発言に困惑をする刀羅をよそに男はドロドロの背中を気に預け、続ける。

「今回のことは僕の独断。“あの人”の指示はこの後のことになる。」

「この後?」

続く男の発言にさらに困惑する刀羅。

「この後、僕は君の護衛兼、監視兼、教官だ。」

「護衛に監視それに、教官って何でそんな...でも、教官ってことなら...」

刀羅の中で質問に答えが出たのと同時に新たな疑問が浮かぶ。

「護衛、監視については君が無茶しないようにってこと。」

「それは矛盾だろ?護衛と監視が俺に無茶させない為なのに教官つけるってことは無茶しろって言ってるようなもんだろ。」

ーそれに監視には...

「“あの人”は君を気に入って入るが、同時に不安にも危険にも思っている。」

「どういう意味だ?」

さらに、複雑になっていく答えに刀羅の理解は決壊寸前だ。

「つまりだね、君は確かになかなか強いし頭もいい。だが、その反面その状況に応じて最善の選択を選ぶ時君は真っ先に君を犠牲にすると考えているんだよ。“あの人”は。」

男の答えは要約されてもいないし、足らない部分もいくつかあるがなんとか刀羅は理解することが出来た。


男が言いたいのはつまりこういうことだ。

刀羅は明陽を守るためなら自分を犠牲にして守る。なんなら、他のもの全てを蔑ろにする。

それは、刀羅が自分の命をあっさりと捨ててしまえるということを意味する。

だから、それを避けるために護衛兼監視のこの男がそういう行為に走らないように見張りストッパーになる。

だが、いくらストッパーの役目を果たそうにも今回のことで敵は明陽を狙って確実にやってくる。

その時に対抗する力がなければ、刀羅はもちろん明陽すらも死んでしまうことになる。

故に立ち向かう力を身につければ多少なりとも生き残る確率が上がるということだ。

だから、教官をつけ特訓してその力を身につけさせようというのだ。

矛盾が生じても最善を選ぶ。なんと、荒井らしいのだろう。


「それで、俺はこのテスト合格か?不合格か?」

「テストねぇ。いかにも学生らしい発想だ。まあ、及第点かな。」

「アンタ厳しいな。」

率直な感想を洩らした刀羅に男はまた真剣になる。

「理由は君の残虐性と判断ミスだ。」

刀羅は黙って男に先を促し男は刀羅に聞く態度あることを見て続ける。

「残虐性については、そんなに言う必要もないだろう。1番の問題であるだけに君も理由は分かるだろうしな。敢えて僕から言うとしたら、やりすぎるなってこどたな。」

男が続きを語ろうとして、不意に呼びかける声に男の開きかけた口がが閉まる。

「刀羅ー!」

名前を呼び探すのは服を持っていった雪である。

それは、時間切れを意味する呼びかけでもあった。

「どうやら、時間切れのうようだね。」

男はそう言って木に背を預けたまま地面に座る。

「僕はこのまま彼らと行く。君は戻った方がいい。どうせ会う機会はある。」

男は目を閉じ、また『倒された強姦魔』に戻る。

「君は間違ってる。」

男が呟くように言った言葉は刀羅には聞こえない。


刀羅は仕方なく刀羅を呼び続ける雪の元へ歩く。

刀羅を見つけた雪は駆け寄ってきて、

「あの女の人着替え終わったから、アンタに礼をいいたいんだって。」

「礼か。」

刀羅が独り言のように呟くのを見て雪は不思議そうな顔をする。

その女があの男の協力者であり、助ける過程での刀羅の行いと感情を考えるにつけ、自分が礼を言われることが変なことに思えて自嘲する。

「どうかしたの?」

「いや、何でもない。ただ、飯でも奢ってくんねぇかなって思っただけだ。」

「ひどっ!そんなこと考えてたのかよ。見損なったわ。」

「冗談だ。さっさと行こうぜ。」

「本当に?」

刀羅の冗談を本気にしたのか雪が怪しいといわんばかりに目を細めて刀羅を見る。

「本当だわ。つか、その目やめろ。開いてんだか閉じてんだか分かんねぇから。」

「酷いな!気にしてんだから目ちっちゃいの。」

雪の顔をのぞき込んで目の大きさを見る。

確かに、切れ長なつり目は見ようによってはかなり目が小さいように見える。

「いや、ちっちゃいじゃんなくてただ細いだけだろ。」

「そのせいで目ちっちゃくて見えるんだから結局ちっちゃいってことだろ!」

刀羅のフォローはフォローにならず雪がさらに憤慨する。

「...とりあえず明陽も待ってるし案内してくれ。」

これ以上の憤慨を避けるためであり、明陽を心配する気持ちの両方から刀羅はズレた話を本題へと戻す。

「うー...納得いかないけど.....こっち」

雪は癇癪かんしゃくを抑えて案内してくれるようで刀羅は内心一安心する。

これ以上キレられても売り言葉に買い言葉で雪の怒りが頂点に達するのも時間の問題で収拾がつくどころの騒ぎではない。


雪は刀羅を先導して明陽と刀羅が助けた女の本へと案内する。

そこは、刀羅が一方的な戦いを制した所からあまり離れてはいなかった。

ただ、密集する木の中で気をつけて見ていないと見逃してしまうようなところだ。

「やっと戻ってきた。」

雪と刀羅を見つけた明陽が声を上げる。

その隣には刀羅が雪に持たせた服を来て座り込んでいる女がいる。

女は立ち上がる。

立ち上がるとその華奢な体はスラッとしている。背は刀羅と同じくらいか少し低いぐらい。顔立ちは

「助けてくれてありがとうございました。」

と、まだどこか弱々しい声で刀羅に礼を言う。

刀羅はその様子を注意深くする。

なにせ、相手はあの男のーーー荒井の部下の仲間だということになるのだから。

つまり、それは彼女も荒井の部下であるということになるわけで、この事件も刀羅を試す為に仕組まれたものであるのだから。

「いえ、当然のことをしたまでです。」

刀羅も相手に合わせて強姦魔たちから助け出した“救世主”を演じる。

「それで、どうしてここに?」

この程度の質問には答えを用意していると分かっていても聞かずにはいられなかった。

「ここの近くの病院に知り合い入院してて....それで、バスとか乗ってきたんですけど.....病院までは歩かなきゃ行けないらしくて.....」

女はどこまでも弱々しく、怯えていて発する言葉には遠慮がちで記憶を探るに探れないといったようだ。

「それで迷っててあれに遭遇してしまったということですか?」

「はい...」

女は俯きがちに答え、また震え出す。

それを見て明陽は女を抱くようにして刀羅をにらむ。

「刀羅!何でそんなこと?」

「確認のためだ。」

「確認って、この人は今怖い人から逃げてきたばっかりなの。わざわざそんな辛いこと思い出させることないでしょ!」

「そうかもな。」

明陽とこれ以上議論をしても明かりがが折れはしないのだから、意味がないと悟って刀羅が折れる。

「辛いこと思い出させてしまってすいませんでした。」

刀羅が素直に謝るのを見て明陽も気をしずめる。

「いえ、大丈夫です。...謝らないでください。私が弱いからいけないんです...。」

依然弱々しい調子で答える女はどんどん表情が暗くなる。頭を横に振り顔を上げる。

「あの...病院はどこに?」

「私達が案内しますよ。」

女の問いに答えたのは明陽であった。

「いいんですか?」

「ええ、全然大丈夫です!いいよね?ね?」

明陽は自信満々に言ってのけて刀羅にめ同意を求める。ただ、これは遠回しに刀羅に道案内をたのんでいるのである。

刀羅だからこそ通じるこの遠回しな頼みに刀羅は断れない。

「ああ。」


雪が刀羅を半歩後から小突く。

「いいの?あれで?」

「まあ、しゃあないでしょ。アイツ1人じゃ心配だろ?」

「そうだけど...」

「まあ、飯は病院のやつでも食えばいいだろ。」

小声の議論は刀羅の勝利に終わり、明陽の目論見通り刀羅も雪も女を助けることになる。

だが、実際は刀羅からすれば願ったり叶ったりであった。

それは、この女があの男の仲間だということならば何か情報が得られるかもしれないと思ったからである。

ただ、今のとこ怪しい言動も見受けられない。それどころかただの被害者にしか見えないのだ。

「そろそろ夜になっちゃうから行こ。」

「そうだな。」

明陽の催促刀羅が答え、一同は刀羅を先頭に病院に向かう。

「夜になるには早いけどな。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ