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国内で問題を起こした結果、ガルーは修行という名目で外の世界へと送られることになった。
その送られる先には様々な候補があがったが、最終的にはガルーをこの土地に預けた張本人であるエドガーの元へ送ることになった。
数年前にはガルーをやむを得ずにこの土地に預けたエドガーであったが、今は騎士を引退し、何のしがらみもなくなったのでガルーの身元を引き取ることに今のところは問題ないということであった。
もちろん『今後』の事ははわからないが、いつか問題が起きた時には遠く離れた獣人の国にいるよりも自分の手元に置いていた方が幾らか対処がしやすいと考えたらしい。
預けた日からガルーの事は常に気にかけていたエドガーとしは今回の話はむしろ望むところであった。
そうして双方合意の元、ガルーは元鷲獅子騎士隊隊長エドガー・イブリードに預けられる事になった。
……クティノス王としては今回の事件が風化する程度の時間を外の世界で過ごさせようと考えていたのだが、少々問題が発生した。
まずエドガーはガルーの素性が何処かに漏れる事を心配し、クティノスでも自国でもない異国の地でガルーの修行を始めた。
異国の土地でエドガーはガルーに対し、剣術や礼儀作法などの様々な英才教育を施す。
だが問題はその修行先の異国で内乱が起き、エドガーとガルーの二人はその内乱に巻き込まれてしまった事だ。
その結果、内乱が落ち着くまで二人は異国の地を離れる事が出来ず、およそ八年の時間が流れてしまった。
八年後――青年となったガルーがクティノスの地に戻るのだが、その傍にエドガーの姿はなく小さな壺だけがガルーの手の中にあった。
――異国で罹った病が原因だった。
クティノス王は友の死を嘆き、ガルーの養い親たちは子の無事を喜び、彼と馴染みのある兎人の少女は涙を流した。
修行を終えたガルーは王との謁見の際、修行の締めくくりとしてエドガーの遺灰を彼の故郷に届けるために今一度クティノスの地を離れる許可をクティノス王に願い出た。
王はこれを許可し、ガルーは再び故郷を離れる事になった。
青年となったガルーが向かう先は人間たちの国――ミッドガル。
奇しくもその場所はガルーの本来の生まれ故郷であった。