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ShadowKnights  作者: 浦間 零四
影騎士と呼ばれる者達
3/3

#2 【忍び寄る影と或る噂(前編)】

だいぶ日が立ってしまいましたがページを開いてくださった方、感謝致します。

今回のように日が立ってしまうこともありますが、何卒、よろしくお願いいたします。

「すっかり忘れてたっけ…」

そう呟きながら、庭へと歩みを進めるブラックジャック。

外へ出ると、そそくさとガゼボ内の机からカップを取り、キッチンへ戻ろうとする。


キィイ…


扉の開く音がした。


「…?誰かいるのか?」

恐る恐る玄関へ赴く。

自分以外の物音は無い。

「…気のせい…か…」

くるり、と台所方面へ向き直り、再び歩き出そうとした時、硬いはずのタイルの床が泥濘んだ。全く足元に警戒していなかった分、余計にバランスを崩した。

「っあ、と、あぶっ…」

ティーカップを持っている為か、思うようにバランスが取れない。

なんとか体制を直そうとするうちに足は床へと引きずり込まれていた。

そのうち、とうとうバランスを取りきれずにカップを落としてしまった。

「っ…ー」

叫ぼうと口を開いた瞬間、何処からともなく現れた手に口を塞がれる。

くらり、と視界が揺れ、そのまま闇へと落ちていった。






カシャンッ

「…?」

何かの割れたような物音がした。

「…猫で目入って花瓶が割れたんじゃないか。」

ポーカーが(おもむ)ろに口を開き、ジョーカーを見据えた。

「…はぇ?何、何さぁ?俺が猫を招き入れたと?さてさて先の行動にそんな素振りはあったかなぁポーカー?」

僅かに不愉快そうな色を滲ませた笑顔で問うた。

「冗談だ。そうムキになるな。」

相変わらず無表情のまま、ひらひらと手を振り流すポーカー。

咄嗟に、黑莓が口を開いた。

「そういえばで、ブラックジャックは何処行ったアル?」

顔を見合わせるポーカーとジョーカー。

「まだ、戻って、来てない…ね…」

と、スペンディア。

「アイツのことだ。またオメェら双子の写真でも見に行ったんじゃねぇの?」

「おいおい勘弁してくれよヴィエラよぉ。」

引きつった笑顔をぬいぐるみへと向ける。

「いつものことじゃねぇか。帰った途端抱きついたりほっぺにキスしたりしてんだから。しっかしこんな似てねぇ双子見て何が面白いんだかねぇ?」

「「ウルサイ。」」

ポーカー、それにジョーカーの声がズレもなく重なった。

彼らは背も見た目も、全く異なるが、れっきとした双子なのだ。似てない、という所を指摘されるのは二人共慣れてはいるものの、嫌なのである。

「クカカッ、コイツラは…っとに面白え。」

カタカタと揺れ笑うぬいぐるみを余所目に、

「僕見てくるアルネ!」

と言って黑莓は玄関へと駆けて行った。

「…さて…スペンディアは先にキッチンへ行っておいで。済んだらすぐ行くからね。」

ぽふりと頭を一撫(ひとな)でし、言い聞かせるジョーカー。

「ん、わかっ、た。」

撫でられるとこくっと頷き、ヴィエラをぎゅっと抱き締める。

「ポーカーはスペンディアについててやって。」

「了解した。」

言葉を聞くなり、薄く微笑みを残して玄関へと向かっていった。




しんと静まり返った暗闇の中。

「ん…んん…ったたた…」

ゆっくりと体を起こしながら目頭を軽く抑える長髪の青年。

ふるふると頭を振り、周囲を見渡す。自分以外には誰も居らず、ただただ黒い空間が広がるばかりだった。

立ち上がり、パタパタと服を叩き、ウロウロと歩き回る。足音は暗闇に吸い込まれるように一瞬にして消え失せる。

今度は立ち止まり、足元を見下ろす。かろうじて、自分の胸元が見えるくらいの暗さだ。

いくら目を凝らしてもそこまでしか見えない。音もない。どうやって来たかという覚えもない。

「…何処だ、ここ。来たことがある気がするけど、違う気もする…」

メガネをかけ直しながら、ここに至った経緯、覚えのある場所を頭から捻り出す。

まず、ティーカップを取りに庭に戻った。すると扉音がして、気になり玄関へ行くと何も変化はなかった。戻ろうと歩き出すと、足元が湿地の泥のようにぬかるみ、バランスを取りきれずにカップを落とした。そして…そうだ、誰かに口を塞がれ…いや、薬品のついた布で塞がれて気を失って…

そこまで思い出したとき、

「おや、目を覚まされましたか。」

背後を振り返ると口元のまだ若さのあるシワがはっきり見えるほど(胸元までしか見えない中でそこまで見える程度)近くに、誰かいた。

「ひっ…!」

思わず後退り、咄嗟に口を塞ぐ。

「これはこれは驚かせてしまったようで、申し訳ありません。」

何も見えない中、声だけが聞こえる。

「えー…こんな事をしておいてつかぬ事をお聞きしますが…コチラ、『影騎士』のお宅で間違いありませんね?」




玄関へ向かい、ゆっくりと歩みを進める中、

「ジ、ジョーカー…!丁度よかったアル呼び行くとこだったアルヨ!!」

黑莓がこちらへと駆け足で寄ってきた。

「何かあったのか?」

「そ、それが、玄関行ったら、コレがあったネ…」

そう言って黑莓は長い裾にしまっていた、割 れたティーカップを差し出した。

ジョーカーは差し出されたそれを手に取り観察する。

「兄貴のだ…。本人は?」

その問いに答えず、ゆっくりと首を横に振る黑莓。

それを見てそうか、と視線を伏せるジョーカー。

暫くの沈黙の後、

「黑莓も、キッチンに行ってて。すぐ戻る。」

そう言って聞かせると、再び玄関へ向かい歩みだした。

今回の話はどうだったでしょうか?良ければ感想をお送りくださいませ。

では、次の更新をお楽しみに。

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