短編1
一応「ボーイズラブ」タグを…
あんまりBL要素入っていないかもです。
「ちょっとすみませーん」
○×駅のホームで電車を降り、歩き出そうとした僕に突然知らない声がかかる。
振り向くと、そこには執事の格好をした一人の男性がいた。
「○○駅まで行きたいのですが、恥ずかしながら道に迷ってしまい…よろしければ道をおしえてくださいませんか?」
格好に少し驚いたが、少し照れながら言う彼に自然と笑みがこぼれる。
「○○駅ですか?それなら、これから僕も行くのでご一緒しますよ。」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
満面の笑みを浮かべる彼。
ドキッ
……あれ?
僕、今、ドキッて。え……え!?
いや、きっと気のせいだ。そうだ。男にトキメクなんてそんなことは……
「…?どうされたのですか?顔が赤いですよ?」
そっと顔を覗かれた。
ちなみに、年齢でいえば相手のほうが年下のようだが、身長は僕のほうが低かった。地味にショック。
「い、いや、大丈夫です!なんともありませんよお!!さ、さぁ早く行きましょう!!」
「?…はい!」
まだ疑問がありそうな彼の手を強引に引っ張り、○○駅まで行く電車のホームへと向かう。
2番ホームはここの階段を上って…
「あ、あの!」
彼が突然話しかけてきたので、足を止める。ついでにつないでいた手も離した。
「あの…呼びづらいので、名前だけ教えてもらってもいいですか?初対面の人に教えるっていうのはアレだと思うのですが……。」
あぁ、それもそうだな。
○○まで電車乗り換えとかするし、結構時間ある。
その間ずっと話しをしないわけじゃないし、話すとき「君」と呼ぶのは失礼だろう。
「あぁ、そうですね。いいですよ。」
彼は安堵の表情を浮かべると、「こほん」とひとつ咳払いをする。
「私は園部 秋といいます。秋と書いてシュウです。気軽に秋って呼んでください。」
「ぼ、ぼくは!!」
……思いっきり声が裏返った。
うっわー。めっちゃ恥ずかしい。
秋…くんを見てみると優しい顔で笑っていた。
それが余計に恥ずかしくって。
顔が熱いほど赤くなった。
「えっと、僕は内村 恭介といいます。えっと…あの…はい……」
下を向いてもじもじ。
僕、キモすぎるだろ。最後なんて言っていいかわかってなかったし。
おそるおそる顔をあげてみると
彼はさっきと変らぬ顔で笑っていた。
「恭介さんですね。良い名前じゃないですか。」
「い、いや、良い名前なんてそんな…あ、ありがとうございます…///」
ぬぁあに照れてるんだよ。バカ。
僕のバカ!バカバカバカ!!
相手男っっ!バカ!照れんな!惚れんな!!
ほ…惚れてねえよ!!バカ!!!
照れ隠しのため、再び歩き始める。
秋くんをみたら、ひょこひょこと後をついてきてくれた。
……かわいい…。
秋くんは僕の少し後ろを歩いていたので、歩幅を合わせるために少しゆっくり歩いていると、
「恭介さんは、普段なにされているのですか?」
と、いきなり話しかけられてドキッとする。いろいろな意味で。
だって僕実は無職で家に閉じこもりパソコンをいじる日々なんだよね。
今日はたまたまイベントがあって家を出てたけど。
昔はちゃんとした生活を送っていたから初対面の人でも緊張せずはなせるけどね。
でも、さすがに家でごろごろしてるだなんていえないし・・・
よ…よーし。
「普段は大学に行っています。僕、医者になりたいんです。」
なんともまぁ、派手な嘘をついてしまった。
僕の返答を聞いた秋くんは、少しポカンとした表情を見せてからクスッと笑った。
「いえ…そういうことを聞きたかったのではないのですが……」
「…え?」
「私が聞きたかったのは…まぁ、いいですか。」
…あれ、僕、間違えた?
…恥ずかしいごめんなさいなんだよ。こんな嘘言わなくてもよかったんじゃないか。
バカだ。やっぱり僕は大バカ者だっっ!!
「というか。お医者様になりたいのですか。良い夢じゃないですか。夢があっていいですね。」
「あ…はい。まぁ、あはは……」
うぅ…変な汗が出てきてしまった。くそ。
あぁ、まぁ、いいや。大丈夫。もうすぐ着くし。
「あ、つきました。ここで来る電車に乗れば大丈夫ですよ。」
僕はもう秋くんから離れる気満々だったので、背を向ける。
だって逃げないとなんかおかしくなりそうだし!!
「あ、ありがとうございました!…えっと、あの……○○駅まで、一緒に行ってくれるんですよね…?」
「……。」
…忘れてた。
そういえばさっき「ご一緒します」とかなんとかいってたよな?自分……。
やっぱりバカだ!僕は…!!
うわああああああ!!
「だめ…ですか…?」
絶対に無意識だよな。あの、上目づかいやめてください。
秋さん。あなたのほうが身長高いんだよ?
なんで…なんでわざわざかがむの?!ねぇ!!
……断れねぇだろうが…(照)
「ま、まぁいいですよ。どうせ暇だったし。」
暇じゃないんだけどな!
今日はネトゲ界で有名なあのサリナたんと一緒にパーティー組むことになっているんだよ!
本当は早く帰りたくて仕方がないんだよ!!
「ありがとうございます!」
あぁもうこんな笑顔みせんじゃねぇよ。押し倒すぞ。
…ほ、ほ、ほほ惚れてねえよ!!バーカ!バーカ!!
僕が自問自答のようなものを繰り返していると、僕たちの乗るべき電車がやってきた。
「あっ!この電車、来たときに乗っていたものとおなじです!すごいです、恭介さん!」
…おい?この黄色い電車はどこでもみれますよ…。なんだこいつ。もしかして、天然なのか…?
「さぁ、早く乗りましょー!!」
「お、おう…。」
どうしよう。くそかわいい。かわいいかわいい。顔がにやけてしまうぜ……。
秋くんの手にひかれ、二人で電車の中へ。
車内はとても空いていて、余裕で座れた。
なぜか秋くんは座ろうとしないんだけどね。
「座らないの?」
「あ、はい。普段立っていることが多いので、座るのになれていないのです。」
「へぇ。そうなんだー。」
言いながら立ち、秋くんの隣へ。
「…え?」
「なら、僕も立ってる。一人だけ座ってるとなんか嫌だし。」
「…そう、ですか…ありがとうございます。」
ぐへっ…下なんか向いちゃって…かわいいぜ…グフフフフ/////
…って、僕は変態かあああああ!!!
しばらく無言。約二十分間。秋くんはずっと下を向いているし、僕はと言えば自問自答を繰り返していたし。
電車内にいる時間はとても長く感じた。
電車から降りてからも二人ともずっと無言で、僕はまた秋くんが迷子にならないか心配しながら改札口に向かった。
そして、改札口を出たところまではよかったんだけどな……
「お、兄ちゃん。金もってそうだなあ…フヒヒww」
変なチンピラが絡んできた!どうする?▼
にげる
にげる←
にげる
あっれー…逃げるしか選択ないじゃまいか…!
ヤバいぞ……。
どうするっ!?
「あの」
あたふたしている僕の背後から声がした。
「ちょっとすみませんが…。そこ、どいてくれますか?」
振り返ると、笑顔の秋くんがいた。
先生!ここに怖いもの知らずがいます!
「そうだなぁー。財布を出してくれればどいてやってもいいけどなぁー?」
チンピラも笑顔で答える。
「財布を出す……ですか?いいですよ。」
といい、秋くんはポケットから財布を取り出した。
「ちょ、秋くんっ!」
焦る僕。
なんとか止めようとするが、「大丈夫ですから」といい止めようとしない。
「はい。財布をポケットから¨出しました¨よ。これで通してくれるのですよね?」
チンピラのほうをおそるおそる見てみると、当然先ほどの笑顔が消えていた。
「兄ちゃんよぉ。違うだろ?普通『財布出せ』っつうのは、『金よこせ』っつう意味だろ?面白くねぇボケは止めろ?」
若干キレ気味のチンピラさん。
怖いっす……
「おや、そうだったのですか?ですが私は財布を出せと言われただけなので、もう言われたことはやりました。ので、そこをどいていただけると嬉しいのですが。」
秋くん!
勇気があるのはいいことだと思うけど、少しは考えなさい!
そんなこと言ったら殴りかかってくるかもしれないでしょうが!
僕もう怖くてチンピラの顔見れないよ!声もでないよ!
怖すぎて今にもちびりそうだよ!!
「あ゛ぁ゛!?兄ちゃんよぉ。あんまり俺を怒らせないほうがいいぜぇー?」
ひ、ひぃ!
チンピラが今にも殴りかかってきそうな勢いだよ!!
早く秋くん謝ってぇぇ!!
僕があたふたしていると、秋くんが一歩前にでる。
「それは」
そしてチンピラさんの腕をつかむ。
「こっちのセリフですよ…?(ニコッ」
そして、腕をつかみながらそのままクルッとチンピラを地面に叩きつけた。
……え?
もしかして、秋くんってめちゃくちゃ強かったりするのかな…?gkbr gkbr……ブルブルブルブルアイアi(ry
チンピラは、呆然とした様子で目を見開いていた。
かと思うと、次第に目に涙を溜めボロボロと涙を零した。
そして、
「く…くそ……覚えてろよおおおお!!!」
と、よくある捨て台詞(?)を言いながら、チンピラもどきは去っていった。
っ…と。
「あ…ありがとう。おかげで助かった…。」
そう言うと、秋くんはクスッと笑いを零した。
「いえいえ。……人を守るのは私の使命ですから。」
少し儚げに笑う秋くん。
……「使命」という言葉が気になったが、聞いてはいけない気がして何も言えなかった。
だって、その言葉を言った秋くんの顔が、少しだけ……辛そうに見えたから。
僕が無言なのに気づいてか、秋くんは少し焦りながら
「あ、いや、気にしないでください!ちょっとかっこいいと思って使ってみただけですから!」
って。
僕は「そっか」と聞こえるか聞こえないかくらいの大きさで呟き、ホームに向かう。
もちろん秋くんは隣にいる。
会話がないし、気まずい。
だけれど、話しかけずらくてそのまま歩いていった。
――――
「ほら、ここだ。」
○○駅についた。
電車内から雪崩のように人が下りていく。
それにつられて僕たちもホームへと下りていった。
あのあと――
二人で無言のまま乗車口に行き、ちょうどきた電車に乗った。
電車内はさっきとは真逆でとっても混雑していて、秋くんと会話なんて出来やしなかった。
密室の電車の中、おそらく秋くんのことを見てるであろう女子高生のキャアキャアという声がやけにうるさく聞こえ、苛立ちがおさまらなかった。
くどいようだが、もう一度言う。
別に僕は秋くんに惚れているわけではない。……はずなんだ。
「わぁ!ありがとうございます!本当に○○だ!!!」
子供みたいにはしゃぐ秋くんに思わず口元が緩んでしまう。
「ここまでで大丈夫です。道案内、本当にありがとうございました!」
腰を90度に曲げる勢いでお辞儀をしながらお礼を言われてしまう。
僕は「いやいや」と手をひらひらさせる。そんなに深くお辞儀しなくても。
…これで秋くんともさよなら。
「ばいばい」と言おうとしたら、なぜか
「家ってどの辺なの?」
なんてことを口ばしっていた。
「へ?」
「いや、もし家が近かったら一緒に行こうかな…なんて。」
少々考え込む秋くん。
やはり、初対面の人に住所までは教えられないよな……。
「…私の家…まぁ、私を雇ってくださっている家なのですが…家は5丁目の隅のあたりですよ。」
!?
僕は、秋くんが住所を教えてくれたことではなく『5丁目の隅』という言葉に反応してしまった。
5丁目ってまさか……
「まさか、柿本家に仕える執事さんだったりします?」
「あ、はい。そうですよ。」
……なんてこった。
柿本家といえば、年収10億稼いでいるといわれている凄いところなんだぞ…!?
秋くんがそこの執事だったなんて…
まぁ、僕には柿本家とかどうでもいいのだけれども。
「5丁目か…僕4丁目だから、途中までしか一緒に行けないけどいいでしょうか?」
「え…?」
秋くんがなにやら驚いたような顔をしている。
僕なにか変なこと言ったかな?
「え、あ、お、お願いしますっっ!!」
「よし、じゃあ行きますか。」
「はい!」
そして、歩き出したそのときだった。
「お、いたいた。おい、園部。遅いぞ。」
こういうのをデジャヴというのか。
またしらない人が話しかけてきた。
…だけど、今度は一つだけさっきとは違うことがあった。
「坊ちゃん…!!」
その人は秋くんの知り合いなようだ。
呼び方を聞いたところ、秋くんが使える人なのだろう。
その人をみた瞬間、秋くんは目を輝かせ、僕に見せていたものではない笑顔を見せる。
そう。”僕に見せていたのとは違う”ね。
「なにやっているんだ。園部、お前何時に家を出た?『昼飯の足りなかった材料買ってくる』って11時くらいに行ったんだよ?今何時だと思っている!18時だぞ。18時!!俺に昼飯も食わせないで何をやっている!!」
「申し訳ありません、坊ちゃん。道に迷ってしまい…」
「またか!お前はどれだけ道に迷えば気が済むのだ!それに、買い物袋はどうした!?」
「あ、忘れてしまいました…!すみません!!」
僕は、目の前の二人の言い合いをぼーっと見ていた。
割り込む気力さえ起きない。
さっきから秋くんの些細なしぐさで、その人が秋くんの大切な人だとわかったから。
「ったく…っと、園部。この人は誰だ?」
ずっと近くにいたのに気付いていなかったのか……
僕の存在感が薄いだけか、もしくは秋くんしか見えていなかったのか。
「このお方は、道に迷っていた私を道案内してくださったお方です!」
「あぁ、そうだったのか。それはどうもありがとう。もしよかったら、家に来て食事でもどうだ?礼をしたい。」
「それはいいですね!どうです?恭介さん!」
秋くんが僕の名前を呼んだ時、ピクリとやつの眉が動いた気がした。
さっきよりも少し目がキツイ気もする。
まるで「俺のもんに手ェだすな」みたいな感じに。
あぁ、そうか。わかったよ。
「いや、いいよ。礼をされるほどのことをしたわけではないからね。家の人も迎えに来てくれたみたいだし、僕は普通に帰るよ。」
そういったとき、秋くんが悲しい表情を見せた。
「そう…ですか。それは残念です…。」
僕は出来るだけ笑顔で言う。
「それじゃ、ばいばい。もう道に迷うんじゃないよ。」
「あ、はい!今日は本当にありがとうございました!!」
「うん。じゃあね
……園部くん。」
顔を見るのが怖くてすぐに背を向けた。
もうきっと秋くんと会うことはないだろう。
でも、僕はあの顔がずっと忘れられないんだ。
あの、儚そうな顔を。
そうだ。今日はこれからなにをしようかな。
セリナたんとの約束の時間はとっくに過ぎているしなぁ……
もういっそネトゲはやめてしまおう。
そして、家に閉じこもるのもやめよう。
僕はきっとこれから先、君のことを忘れることなどできないだろう。
でも、欲張りだから君にも僕のことを忘れてほしくはないんだ。
でも、君に忘れられないようにするのはどうしたらいいのだろう……。
あぁそうだ。
なにをすればいいのかわからなかったら、アレになってしまえばいいんだ。
君が「良い夢」って言ってくれた。
医者に、ね。
どうもはじめまして。糸目といいます。
今回、友達と「同じテーマでどれだけ違うものが出来上がるか」みたいな感じで小説を書くことになり、書いてみました。
一応駅名は「○○駅」としました。
アドバイスとかいただけたらとてもうれしいです。
いろいろとおかしいところとかもあるので、いつか編集したりします…
題名は決まらなかったので、今のところ「短編1」です。